AI(Artificial Intellgence)…、日本語では「人工知能」と称されているが、「AIは人間の知能を超えるのか?」とか「AIに人間が使われる」などの言辞を見かけるが、はたして真実は?そしてAIが世界を席巻する未来は?といったことについてAI研究の第一人者からお話を聞いた。
本日(3月15日)午前、ニューオータニイン札幌において札幌商工会議所が主催するMeCCS推進会議なるものに参加した。私がお門違いとも思えるこの会議に参加したのは、この会議の講演が「AI技術 × ポジティブヘルス増進~もみじ台団地で進める看護MaaSの取組と今後の課題~」と題して、AI研究の第一人者である札幌市立大学々長の中島秀之氏が講演することから、AIのことを少しは知りたいと思い参加を決めたのだった。
※ MeCCSとは、Medical Cluster City Sapporoの頭文字を取ったもので、札幌商工会議所が主唱して札幌が誇る最先端医療を核とした新たな産業集積を図ろうとする推進会議だという。
中島氏はMIT(マサチューセッツ工科大学)のAI研究所に留学したり、東大大学院で工学博士の称号を得たりした後、電総研で研究を続け、2004年からは公立はこだて未来大学の学長、そして2018年からは札幌市立大学の学長を務められている。その間、AIに関する著書、共著を多数著している方である。
※ 講演をする札幌市立大学々長の中島秀之氏です。
中島氏は最初に「人工知能の研究とは、①コンピュータを用いて人間の知能を研究すること、②知的な作業のできる機械を作る」ことだとした。その二つの中で現在注目を浴びているのが②の知的な作業のできる機械を作ることだとした。
そこで中島氏は大切な留意点を示した。それは「AIは賢い道具である」と指摘した点である。そしてAIを擬人化してはいけないとした。つまり「AIが○○する」のではなく、「AIで○○する」と考えることが大切であると強調された。
そして話はAIの可能性へと言及された。中島氏はさまざまな可能性について言及されたが、その中からサブテーマである「もみじ台団地で進める看護MaaSの取組と今後の課題」について言及した。その前に、MaaSについて説明しなければならない。MaaSとは、Mobility as a Serviceの頭文字を取った略語で、その趣旨は地域住民の一人一人が移動する要望に対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括して行うサービスを指すという。そして看護MaaSはそのサービスに医療関係者の移動も併せた形でのサービスの構築も目指すというものである。
※ もみじ台団地における看護MaaSの取組の概念図です。
つまり札幌市内において高齢化が顕著なもみじ台団地の住民の方たちの生活・医療のための移動を、AIを活用することによって2040年を目途にその仕組みを具体化しようと動いているプロジェクトだという。こうした複雑な仕組みを一挙に解決できるのはAIをおいて他にないということだ。
その他には中島氏はAI技術の可能性について2~3紹介してくれたが、その中で私が注目したのは、「健康脆弱化予知予防」にAIを活用するという考え方である。人間の健康度には「健康」、「未病」、「治療」の三段階があるが、「未病」領域に入る前の「予兆」を感知し、それを「予知」することがAIで可能となる、ということなのだ。それについて、中島氏は「アマゾンなどで本を購入すると、『この本を購入した人は、こちらの本にも興味を示しています』というメッセージを目にするが、同じように体のちょっとした変調(予兆)から、いろいろな可能性を示すことにより対応策を講じることができるのではないか」と話されたが、面白い話だなぁと興味を覚えた。
※ AIによつて、「予兆」の段階で「予知」し、対応策を講じることによって病気の発症を予防できるのではないか、という図示です。
中島氏のお話はAIの可能性について多岐にわたってお話されたが、私が理解できた範囲においてレポさせてもらった。もみじ台団地における取り組みについて、今後の動きを関心をもちながら見守っていきたいと思っている。