雑事紛冗解(p25)を読んでいたら、今では死語とも思える言葉が出て来た。熊本でもよく聞いた言葉だが、当時は肥後人は知らぬ「京言葉」らしく驚いてしまった。
カテゝクワエテト云事
京都ニテ通用ニ申候、カテゝか様ニ申な(ママ・と欠カ)ケ様ニも申候、両様共ニ通用ニ申候、一事之上重り申候事を申候言葉ニて御座候
「糅てて加えて」なのだが、「糅てる=加える」の意だから強調する言葉として使われたようだ。「糅」とは、かて飯というようにご飯の量を増やすために何かを加えることを言うのだそうで、かやく(加薬)ごはん等もそうだし、戦時中御飯にサトイモなどをいれたのもその類である。
例えばバナナのたたき売りなどで、最初の一房で売れぬと「カテゝクワエテ」と声をあげながら、今一房を追加するといった塩梅である。
京都から伝搬した言葉は遠い地方に定着し、本家の京都では使われなくなった言葉がたくさん見受けられるが、この言葉もその類であろうが、さすがに今日では熊本でも日常的に聞くことは無くなった。面白い発見であった。