津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

■横井也有のパロディ「鳥獣魚虫の掟」

2019-11-18 11:28:29 | 書籍・読書

 「江戸随想集35」にある、横井也有の「うずら衣」にある、パロディ風の「鳥獣魚虫の掟」が非常に面白い。
労を惜しまずご紹介してみようと思う。原文については「早稲田大学図書館」がアーカイブで公開しているのでご覧いただきたい。(最末参照)

 世の中がいま不景気で困っているから、今般鳥獣並に魚や虫どもに、みなみな節約倹約をするよう申し付ける。
 その行儀作法のわるい事は改めるよう申し付ける。左の個条/\はきつと相守らねばならぬ。
  一、蝉はすずしの羽織を着ていることは、身分不相応も甚だしい。今から後は、横麻一羽ぬきに仕替えること。
  一、松虫や鈴虫どもは、籠の中で砂糖水を好んでいるのは、贅沢のことである。今後は野山にいた時と同様に、露ばかり吸って精出して鳴くこと。
  一、蟻は塔を組むことは、自身のはたらきで建てることは差支えない。しかし他からの寄付や助力を頼むことは一切いたしてはならぬ。
    かつまた熊野へ参詣するために、大勢つれだすのは無駄な事である。これから後はニ三人づつひまがあつた時にお参りすること。
  一、蛍は一晩中火をともして飛びあるくことは、町々、家が立て込んでいる所は、火の元が心配だから、遠慮いたすがよい。
    池・川・田地などの水辺は差支ないこと。
  一、蜘蛛は御領地のうちで、むやみに綱をはり、諸虫を捕えるのは、不都合極まることである。
    以後は、その場所相応の税をお上に差し上げること。但し蠅取り蜘蛛は税をおさめるには及ばない。
  一、蜂蜜は、小便を高い値で売る事は、諸方の苦痛になるからよろしくない。今後は世間並みの値で、米六升ほどの計算で売りはらうこと。
  一、蟷螂は、自分が気の短かい強情で、斧をもつていろいろな虫を殺しているのは、甚だ不都合極まる事である。今後はむね打をも一切いたしてはならぬこと。

  一、金魚の仲間のものどもは、近年ことに派手になった。今後は金魚の飾りは一切してはならぬこと。ただし赤塗りに砂箔ぐらいまでは差支ないこと。
  一、蛤は春暖のころ、自分の気持ちがよいのに得意になって、楼閣を建てる事は、甚だ奢りのことに聞こえる。
    今後は、そのような普請は一切やめにすること。もし居宅の柱が損じても、其の時は根つぎをして使うこと。
  一、蝙蝠は、昼は、橋の下にかくれており、夜になると毎夜/\人里をあるきまわることは、そのわけがわからない。
    鳥獣の検査があるときは、どちらにも言いぬけをして、お上の役目を勤めないそうだが、不都合しだいである。
    今後は、立会人のさしずを受け、鳥の役も獣の役もきつとつとめること。
  一、いんこは、むやみ勝手に、五色の錦や、ぬいとりのある美しい着物を着ていることは、甚だ奢りである。
    今後は、何色でも一色に改め、勿論縫箔などは一切しない事。
  一、白鳥、白雀などこの間は見えたが、先年は頭ばかり白いのさえ稀であったのに、近来はむやみ勝手になったのは、甚だよろしくない。
    以後は決して変ったなりをしてはならないこと。
  一、鼠は、嫁入りの様子が仰々しいことである。廿日鼠に五升樽もたせることは身分に過ぎることである。以後は提錫ですますこと。
    馳走した上に、天井で躍りなど催してさわがしい。人々の妨げにならぬように、空二階や、縁の下などが盆の中に躍るのは差支ないこと。
  
  一、猩々は、常に大酒をのみ、乱舞の楽しみは贅沢である。持出し振舞など、今後は一切してはならないことである。
    まことにやむを得ないわけがあつて、会合などがあつても、一種類の料理で、酒は盃一杯だけにするがよい。もっとも酒はその付近のうけ酒屋で小買にすること。
  一、狸はふぐりを四畳半にのばしたり、茶をたてて人をま迷したり、諸道具に金銀を費せしめたることはよろしくない。
    右のような仕業はやめなければならぬ。自分の楽しみとして腹つづみを打つことは別に差支ないこと。
  一、馬の太鼓をうつことは、交通のはげしい道筋、または問屋の前を遠慮しないで無礼の至りである。
    つまるところこれも自分のおごりというものであるから、以後はやめること。
    ただし、厩ではさしつかえないが、火の見時の太鼓に当りさわりのないようつつしむこと。
  一、青鬼・赤鬼の仲間どもは、虎の皮の褌はしてはならぬ。今は病犬の皮があるから、早速仕替えるがよい。ただし、右は家持とか頭分の事である。
    借家住とか、召使の鬼どもは、古い桐油合羽の切れを腰に巻いて用いること。

 右の個条/\をかたく守らねばならぬ。ゆるがせにして心得ちがいの者共がある場合は、きつと罰を申しつけるであろう。
 その心得違いの種類によっては、蟻の町代や組頭まで、おちどとなるであろう。
    宝暦九卯七月

                                    

                      早稲田大学図書館所蔵の「鵜衣‐四/四」
                      この中の53~57コマが該当文になります。 
                      クローズアップしてご覧ください。


 
    

 

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■細川小倉藩(77)寛永元年・日帳

2019-11-18 08:52:38 | 細川小倉藩

                         (寛永元年八月)十八日

         |                          
         |     十八日   両人詰 晴天 
         | (香春村、田川郡)                                             (衍)
香春村ヨリノ大橋 |一、かわらゟ小倉へ出シ申大橋板三百枚有之ヲ、三拾枚ハ町中ゟ、残分ハ御家中ゟ出シ申申儀ニテ、
板ノ分担 夫積リ |  夫づもり河田八右衛門・林弥五右衛門仕、御奉行衆へ被申渡候事、右之夫づもり、板壱枚ニ付八
         |  人かゝり
数寄屋ノ松葉ノ借 |一、江戸へ積廻シ申松ば無御座故、御家中御すき屋持衆へ、御かし候やうニ御ろぢノ孫大夫へ被申
用        |  渡候事              〃
         |一、神西長五郎儀、泰勝院御給仕ニ罷出候へと被触候ハヽ、與右衛門中津へ御目見えニ参候跡ノ御番
         |               (小笠原長元)
         |  ノ名代ニ、長五郎罷出候へと、民ア殿へ與三右衛門申理之由候て、御給仕ニ罷出候儀不成候由候
         |  事
諸奉行ニツク者ハ |一、御無足衆、者奉行ニ被付候時ハ、御番無用之由か申渡之由候、今迄ハ諸奉行ニ被付候衆も、当番
当番無用     |      被                                                                                                                         (ママ)
         |  之時ハ罷出候儀不入事ニ候、拙者式は冣前ゟ左様ニ存候而、折々ハ此中も申而候事、
         | (朽木昭知、内匠)
幟竿下行ノ可否  |一、三渕與七郎殿ゟ、昇さほ拾本被下候ハヽ、きらせニ遣度由、田中猪兵衛ヲ以被申候、則切せられ
         |                       (栗)
         |  候へとのさしかミ、御奉行衆ゟ昨日被遣候処ニ、粟野伝介申候ハ、先年ゟ被遣たる例無之候間、
         |  いかゝと申候ニ付、進候儀ハ不成候間、御かい候へと被申候
         |               殿                    (削)
         |一、泰勝院〇廿日御吊ニ付、そうぢ奉行ニ後藤喜大夫・弓指勘十郎被申付候事
肥前刀荒押スルニ |一、竹屋喜兵衛登城、今度肥前ゟうたせ候て参候 御こしの物、荒おしを仕候へハ、きす出来候由候
瑕アリ      |  て、御奉行衆へ見せニ参候事
江戸詰銀奉行交替 |一、江戸へ替りニ参御銀奉行、浅井五左衛門相仕ニ宗田伝左衛門被申付候へ共、伝左衛門成かね可申
         |  と候て、此替を御小姓頭衆へ被見立候へと、被申渡候事
小倉城廻ノ売田ノ |一、小倉御城廻ノ売田ノ御年貢被召上候儀、此中数度談合候へ共、不相済候、福田善左衛門昨日御郡
年貢       |  ゟ罷帰候ニ付、昨夕も談合候へ共不済候
         |        (伊)
幟竿作製     |一、御昇さほ之儀、井藤文五郎・成田與平次御奉行にて、切せ候間、御昇衆之内奉行ニ遣候へ、此地
         |  へ取寄せ、徳右衛門奉行にてため候へと、徳右衛門ニ被申渡候事
豊後横目交替ニ付 |一、豊後御横目衆御替り候而、御上候様申候ニ付、何成とも御用等被仰付候へと、式ア殿・民ア殿ゟ
挨拶       |  被進之候御飛脚、今日九つ時ニ罷帰候事
         |         (有吉英貴)                                  (割)
新知取ノ不足米ノ |一、式ア殿・民ア殿・頼母殿ゟ御使、此中数度御談候新地取衆不足米之儀、 御家中判苻ニ成可申候
処置       |  間、御算用衆へ可被申渡之由候事
大坂城仕置普請  |一、同御両三人ゟ、去年大坂御仕置普請ニ、重而六百人御上せ候者之儀、御蔵納へも割符可有儀と被
         |    (野田幸長)
         |  申候、小左衛門中津へ参候而、罷帰次第、談合可仕之由返事候
江戸詰ノ物書ノ交 |一、江戸御供替ニ参候御物書衆ハ、重而 御諚有之迠ハ、上せ申間敷惣談究候事
替        |
諸郡へ催促人ノ書 |一、諸御郡へ催促ニ、御馬廻衆被出候書立相究候事
立        |
         |一、荒川與三殿先納之儀、重而 御諚次第ニ可仕之由、小惣庄やニハ両人ニ過■三石、惣庄やニハ弐
         |  石被申付候ニ相究候事
鋳銭ノ奉行    |一、新銭鋳申奉行ニ、野田喜兵衛被申付候事
         |            (甫)
馬具奉行     |一、御馬具奉行ニ道珎・慶浦被申付候、孫兵衛御供替ニ参候上野角左衛門罷帰候間之儀ニ候事
         |
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