すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

議論の余地から教えられる

2009年05月24日 | 読書
 『議論の余地しかない』(森博嗣著 講談社文庫)

 森博嗣という人の本は初めて手にした。
 フォトエッセイと記されているが、フォトはその通りにしても、文章はエッセイではなく箴言といおうか語録といおうか、今までの著書の中から切り取った短い文章を組み合わせている形である。そして説明、補足めいた一言もさらに添えられて一項が成り立っている。

 某大学工学部の先生らしいが「まさに哲学」とそんな感じのする本だ。小説の登場人物に語らせている様々な言葉、なかには理解できないものもある。おそらく物語の文脈の中では光放つのかもしれないが、唐突に提示されても、さあて?と飲み込めないものも確かにあった。
 しかし、それ以上にはっとさせられたり、深いところにすとんと落ちたりした部分も多い。

 だいたいにおいて、正念場の実体は、本当の正念場よりずっと前にある。

 仕事でも家庭生活でも、いろいろな場にあてはまる警句だと思った。

 形とは、動こうとする意志なのである。

 形と動きは、反対の概念ではなく同一の方向を持っているということだ。
 そして、これ。本当にその通り、その通り。

 Time is money なんて言葉があるが、それは時間を甘く見た言い方である。