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ナンバー2の筋は…

2016年06月26日 | 読書
 『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』(松田賢弥   講談社+α文庫)



 選挙が近づくさなかに手にしたこの文庫本。地元の有権者の何パーセントがこれを読んでいるんだろうか、などと考えてしまった。現存する(という言い方も変だが)湯沢雄勝出身者の中で、間違いなく一番有名であり、巨大な権力を手にしている人物である。政治への興味もあるけれど、人物伝に深い関心がある。


 惹きつけられたのは「満州で集団自決した開拓団」に触れている箇所。菅を生んだ家族、土壌、歴史等を探るなかで深い意味を持つと著者は判断したのだろう。地元にいてもわずかな知識しかなかったので、ある意味驚いてしまった。亡くなった祖母が、祖父の弟の一人を「マンシュウ」と呼んでいたことを思い出す。


 菅の世代であれば、出自に関して背負う風景は似ているかもしれない。抱えている運命のようなものを「宿命」と位置づけられる者は、何かに反発し、どこかで屈み込みつつ、飛躍する時を待ち、機を逃さず階段を昇っていく。内なる反発が故郷であり、父であることは想像できる。それが屈み込む熱になっていた。


 戦後史的な読み方もできる。もっと言えば、自民党内の影の権力者の系列が書かれている。「政治の師匠」の梶山静六、そして「目標」であった野中広務、どちらも一時期「剛腕」と形容された、印象深い政治家である。野中を書いた本やこの著から受けた印象を括ると、筋の通し方が他の政治家と違うことがわかった。


 いわゆる「ナンバー2論」の要諦は、そこにあるのではないか。きっとある面で拘りが強くあり、そのほかの面(これが一般的に守らなければならないこと)について、かなり柔軟になり得る。その言動はトップとの関係で決まってくる。そこには当然相性もあるのだろう。この辺りの微妙な加減が今の政権を支えている。