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桜と絵本と豆乳と

落語絵本はこの一冊から

2021年11月03日 | 絵本
 落語紙芝居シリーズは教員現職時代に揃えてあり、何度か子どもたちの前で披露した。『とまがしま』が一番お気に入りだ。絵本で落語は難しいと思っていたか、昨秋の研修で紹介されたのを機に、この絵本と『死神』を手に入れレパートリー化を目論んでいる。昨年度の後半に三度挑戦し、約一年ぶりに取り上げた。


『いちはちじゅうのもぉくもく』
 (桂文我・作 長野ヒデ子・え BL出版) 




 落語では『平林(ひらばやし)』として有名である。商家の「すぐに忘れてしまう」でっちを主人公とした滑稽噺。届け物をしにいくが、行き先の名を忘れ、宛名の漢字が読めず出会う人に聞くが、それぞれ異なる読み方をし、そこに「からかい」も混じって楽しい筋が繰り返される。「平林」の字の図解がわかりやすい。


 長野ヒデ子さんの絵のタッチが、中味の可愛らしさ、面白さにマッチしている。でっちのかめきちの素直さ、幼さと、登場して会話を交わす人々との口調の違いを意識する、つまり落語的語り口は当然ながら取り入れてみたいものだ。この噺の真骨頂は、最後のリズミカルな部分の盛り上げ方だ。そこが伝わるか否か。


 かめきちが教えられた読み方を繰り返すうちに「通り過ぎてしまう」ことがオチになるが、本物の噺ではまちまちだ。昨年、高学年を対象とした時はアレンジして「祭囃子かい」「いいえ、平林でございます」と落としたが、小学生にはまだ無理だったか。やはりこの種は、時代文化と語り口を楽しませると割り切ろう。