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人間が読むことを犬には内緒

2021年11月06日 | 絵本
 11月1日「犬の日」だったので、取り上げてみた一冊だ。教職当時よく実践した「変身作文」~自分以外の何かになって身の回りを綴る~に似ている。子どもたちも楽しんで取り組むし、応用も利く。しかしプロの作家の書く作品だ。当然ながら視野も広いし、ウェットも十分、かなり綿密な本ではないかと思われる。


『しあわせないぬになるには  にんげんにはないしょだよ』
 (ジョー・ウィリアムソン 木坂 涼・訳  徳間書店)




 犬の習性をよく観察していることはもちろん、その動きへの意味づけを人間の心性と照らし合わせて表現している。単なる擬人化だけでなく、人間の文明に対する皮肉や感情に左右されやすい人の習性なども描かれている。一読ではなんとなく読み流してしまいそうだが、一つ一つの文章を分析すると、見えてくる。


 表紙絵を見ればわかるが、ラフな線描に限定された色使いが効果的だ。改めて数えてみると、多少の濃淡はあるにせよ、使われているのは4色のみ。緑、赤、灰色そして少しの黄色。場面によってうまく使い分けされていて、そのページの雰囲気を醸し出すようだ。細かな部分の彩色を、読み手はどう感じるのだろう。


 「ぜんこくの いぬの みなさん ワンにちは!」から始まる楽しい語り。基本的にオス犬になりきって読む。形としてはいわゆる説明的文章だけれど、表情豊かに演じてもいい。しかしまた、坦々と進める方法も面白い。絵のトボケた味とのギャップを楽しむ手もある。自分の声質や適性を見極めて、選択したい。