すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

読書の秋、息を吹きかける

2022年10月26日 | 読書
 霜が降りて、いよいよ秋も深まる。
 読みたい気持ちの、その熾火に一息吹きかけて過ごしたい。



『食堂つばめ③ 駄菓子屋の味』(矢崎存美 ハルキ文庫)

 3年前にシリーズ②を読んだ時はいろいろ考えさせられた。今回の設定は少しわかりにくい気がした。「食」がテーマなので手にとった文庫だったが、美味しさがあまり伝わってこなかったからかと思う。ただ、巻末のショートショート「もんじゃの神様」はなかなか小気味いいし、「人につく食事」の深さのような想いが浮かんだ。



『ぜんぶ、すてれば』(中野善壽 Discover)

 2年前に書名に惹かれて読んだ本の再読。何度読んでも「言うことはわかるけど、実際には…」と思っているようではいけない。肝心なことは「ぜんぶ」とは何か、である。この「ぜんぶ」の中身を自分が明確にできることだ。比喩としての「ぜんぶ」は、おそらく「常識」という語に重なるし、視点を柔軟に動かすことに通ずる。



『ふしぎとうれしい』(長野ヒデ子 石風社)

 先週、講師で招いた作家のエッセイ集。81歳の絵本作家に2日間接することができ、ずいぶんと刺激をうけた。この本に書かれてある様々なエピソードは、身体を動かし、心を動かし、日々を生きている一個の人間模様でもある。その原動力は「不思議」そして「嬉しい」という感情に素直でいることだろう。さらに、もう一つの書名の読み方を「不思議と(どういうわけかの意)嬉しい」と捉える。それは、生きていることを愛おしむ日常から発しているに違いない。