すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

参参参(二十四)俯瞰する余裕なし

2023年06月12日 | 読書
 読書に堪え性がなくなった(笑)と感じつつあるが、やはりいい本を読めばきちんと読むし、面白ければ続けて読みたくなると実感した時期。


 『未来の年表 業界大変化』(河合雅司  講談社現代新書)

 「瀬戸際の日本で起きること」という副題を読むまでもなく、どうしても悲観的にならざるを得ない。「人口減少日本のリアル」で取り上げられた28種の業種・職種で「起きること」は、地方の人口減少が進む我が県、我が町ではすでに「起きたこと」になっている事象も多い。そして深刻さは増すことは確かだろう。この本の構えは「『戦略的に縮む』という成長モデル」で、そのための経済成長をどう構築化するか提言がある。読みとれるほどの知識・判断力はないし、正直自分にとって肝心なことは、どんなふうに巻き込まれていくか、己の矜持をどう保つかに尽きるだろう。俯瞰しつつ、と考えてきた余裕はなくなっているのかもしれない。






 『本屋で待つ』(佐藤友則・島田潤一郎  夏葉社)

 いいドキュメンタリー番組を見たような印象が残った。今の書店業界の現状は誰しも知る通りだし、まして地方の山間部の町にある「本屋」がここまでやるとは…。そのキーワードは「待つ」に違いない。こう書いてみて、自分が教員として「授業」にいささかのこだわりを持っていた時のことを想起する。「待つ」行為の裏にある膨大な営みには、確実に共通項がある。それはきっと倒れ込むほど努力する期間が必要だし、現在進行形で姿勢を保っていなければ、簡単に口にできるものではないだろうこと…。「本」が「人」に渡ることの意味を作り出そうとしていることが、「ウィー東城店」で形を成している全てと結びつく。



『白鳥とコウモリ』(東野圭吾  幻冬舎)

 ある県の図書館を取り上げた番組があり、蔵書になったこの本の貸出予約が百三十数件あったというテロップに少し驚いた。確か我が館でも2年前の貸出回数は1位ではなかったか。500ページを超える長編ミステリ、小説誌で7回連載された作品を加筆してまとめたとあるから、通して読むと若干のくどさも正直感じた。途中である程度見えた結末だったが、人物造形の巧みさはさすがに最後まで読ませてくれる。映像化されて描くとすればこんなイメージかと浮かんできてしまうのは、パターン化された一種のマンネリではないかと大流行作家に注文をつけてしまいそうになった。