「祖国とは国語」藤原正彦
なぜ読んだかと言うと、「満州再訪記」が収録されているから。
著者は新田次郎氏と藤原ていさんの次男。
自分の出生地を母と訪問する。
即ち、あの壮絶な引き揚げ「流れる星は生きている」の出発地点である。
これ以外にも、国語に関するエッセイも良かった。
P211
ソ連の侵攻が許されないのは、泥棒の中でももっとも卑劣な火事場泥棒だからである。ソ連の破廉恥は領土的野心ばかりではない。ソ連攻撃をしなかった国民に対し、虐殺、略奪を重ねた後、満州国の工場などにあった機械設備を片端からシベリアに運んだうえ、シベリア開拓の労働力として、民間人を含めた数十万の日本人を強制連行し、長期間にわたり抑留酷使したのである。永遠に許されることではなかろう。
P24
これらは道徳であり、日本人としての行動基準であるから、幼年期に徹底しないといけない。いじめなどは、卑怯を教えない限り、止むはずもない。
P34
一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数、あとは十以下なのである。
P87
冷戦が終焉を告げた直後の1990年、アメリカのジェームズ・ベーカー国務長官は「冷戦中の戦勝国は日本であった。冷戦後も戦勝国にさせてはならない」と語った。相前後してCIAは、「ジャパン2000」という名のプロジェクトを著名な学者たちに委託した。2000年までに日本を引きずり下ろす、の意であろう。その通りの結果となった。(アメリカ追従もほどほどにしないと。日本は永遠の片思い、アメリカは横暴陰険なDV男)
P185
妹が広い前庭で病院を見あげながら「ヒコはここで生まれたのよね」と私に言った。「そうだ、お前には少しもったいない所だな」と軽口をたたいたのがいけなかった。ひがみっぽい妹が母に「お母さん私はどうしてここで生まれなかったの」と聞いた。(妹とは、藤原咲子さんのこと。「母への詫び状」等の著作があるが、これにより、「ひがみ」が重要キーワードであることが分かる)
【ネット上の紹介】
国家の根幹は、国語教育にかかっている。国語は、論理を育み、情緒を培い、すべての知的活動・教養の支えとなる読書する力を生む。国際派の数学者だからこそ見えてくる国語の重要性。全身全霊で提出する血涙の国家論的教育論「国語教育絶対論」他、ユーモラスな藤原家の知的な風景を軽快に描く「いじわるにも程がある」、出生地満州への老母との感動的な旅を描く「満州再訪記」を収録。
[目次]
国語教育絶対論(国語教育絶対論
英語第二公用語論に
犯罪的な教科書
まずは我慢力を
産学協同の果ては ほか)
いじわるにも程がある(お茶の謎
ギーギー音
ダイハッケン
科学は無情
ネギよ来い ほか)
満州再訪記