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「残酷な王と悲しみの王妃」(2)中野京子

2018年01月01日 20時48分47秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「残酷な王と悲しみの王妃」(2)中野京子

美術絵画に詳しい方は多い。
歴史に詳しい方も多い。
しかし、両者とも詳しくて、文章力、表現力がある方は少ない。
当時の状況とそこで生きた人びとが生き生きと再現される。

ルートヴィッヒを生んだヴィッテルスバッハ家について
P11
今で言うなら、力はあるのにコングロマリット化せず、格式ある暖簾を守り続けた老舗、といったところ。大きすぎれば政治的ストレスに押し潰され、小さすぎれば生き残りが大変なので、君主としてはこのくらいの規模が一番気楽なのかもしれない。(分かりやすい表現だ)

エリザベートとルートヴィッヒについて
P17
どちらも途轍もない浪費家だった。貧民を顧みない散財に腹立たしさを覚える者も少なくなかろうが、歴史の面白みというべきか、結果的にふたりは浪費額以上に国を潤した。今に至る彼らの世界的人気が、ウィーンやミュンヘンにどれほど観光客を運んでいるかを考えれば明らかであろう。

父が暗殺され、アレクサンドル三世が皇位継承する(妃はマリア)
P100-101
また暗殺者の中にユダヤ人がいたことから、キエフなどの南部で大々的なポグロム(ユダヤ人に対する集団迫害行為)が起こっても放置した。ちなみにこの時のポグロムを背景にしたのが、ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』である。


『カルロス4世の家族(スペイン語版)』(1800-1801年、プラド美術館所属)
P173
およそ半世紀後の作家ゴーティエは、「富籤にあたったパン屋の一家のようだ」と表現している。

ちなみに、前列左から2人目で目立っているのが、後のフェルナンド七世である。
P158-159
かつてこの王の妃は母親宛の手紙にこう書いていた、「鈍感で、何もせず、嘘つきで、卑しくて、腹黒く、(中略)読まず、書かず、考えず、要するに無です」。

【ネット上の紹介】
彼らには許されなかった。平穏な日々も、愛も、死も…。人気シリーズ『怖い絵』『名画の謎』の著者が、ルートヴィヒ二世ほか、王族たちの壮絶な人生を辿る好評歴史読み物第2弾。図版多数掲載!
第1章 ルートヴィヒ二世
第2章 アレクサンドル三世妃マリア
第3章 カルロス四世
第4章 カロリーネ・マティルデ