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「不屈の小枝 日系移民ヤスイ家三代記」ローレン・ケスラー

2018年01月08日 20時27分03秒 | 読書(英・米)


「不屈の小枝 日系移民ヤスイ家三代記」ローレン・ケスラー

アメリカに移民した三代の記録。
ヤスイ家をとおして戦前・戦中・戦後の歴史を辿る。
上下2巻で読みごたえがあった。

上P108
日本人はプロテスタント的な労働倫理とたぐいまれな集中力で、白人の隣人たちを圧倒していた。熱心に働き、こどもたちに労働の大切さをo教え、自分たちの満足はあとまわしにした。彼らはまさに、ピューリタンだった。「昔のピューリタン」たちは、「新しいピューリタン」が気に食わなかった。

上P138
フッドリバーの日本人キリスト教徒は、同じ信仰をもっていても、白人社会に受け入れられることはなかったのである。彼らは白人メソジスト教徒が構成する主流派には入れてもらえなかった。日系のメソジストたちは独自の牧師を探して後援し、白人の信徒たちとは別々に礼拝しなければならなかったのだ。

下P199
親の手で、強引なまでにアメリカ化させられるというのは、三世に共通する幼児体験である。「出る杭は打たれる」という日本のことわざがある。二世には、このことわざが同化を促す戒めに聞こえた。

下P206
60パーセントから70パーセントといいう高い割合で、日系アメリカ人が日系以外の相手と結婚しているという事実には(異人種との結婚は、中国系のアメリカ人の場合は13パーセント、メキシコ系移民では16パーセントである)、なにかほかの要素もからんでいるようである。つまり、人種の混合であるそうした異人種間の結婚こそが、アメリカの人種差別が生んだ皮肉な結果だったという側面だ。

【おまけ】
本作は、先日読んだ「星ちりばめたる旗」の元ネタのひとつ。
戦中の苦しい頃が、しっかり描かれている。
ノンフィクションとしてもレベルが高い。
参考→「星ちりばめたる旗」小手鞠るい


【ネット上の紹介】
二十世紀初頭、アメリカン・ドリームに魅せられて、岡山からオレゴンに移民したヤスイ・マスオ。“人種”の壁に屈せず、農園主として成功するが、1941年12月8日の日本軍による真珠湾攻撃の直後、FBIに逮捕され、強制収容所へ。ヤスイ家の歴史をとおして、日本とアメリカの戦前・戦中の歴史を辿る…。
第1部 一世の時代(広大な夢
楽園
深く根をおろして
黄禍
零細企業家、マット・ヤスイ
失われた楽園)
第2部 二世の時代
[カンバスを覆う影]
「がんばり屋の二世たち」
「大好きな東洋の囚人さんへ」
「毒ヘビは毒ヘビ」
鉄条網のなかで
帰郷
二百パーセント、アメリカ人)
第3部 三世の時代(ウィロー・フラット農場
過去はプロローグ)