「山怪 山人が語る不思議な話」田中康弘
山にまつわる不思議な話を集めてある。
山なのにヤマもオチも無く、淡々と語られる、それが心地よい。
知っている場所が複数出て来て、興味深く読んだ。
P26
「(前略)まあ狐の話はよう聞きましたよ。そいでも近江の商人だけは騙そうとした狐を逆に騙して、捕まえて襟巻きにしたそうですわね」
近江商人、恐るべし。
P46
揚げものは山行きには御法度らしいが、持参すると良いものもある。
「ニンニクだな。生ニンニクを一つポケットに入れておくんだ。そうすっとよ、変なもんは寄ってこねえのよ」
P81
あの時起こったことはこうだ。列の最後尾を歩いている人のリュックを何者かがぐっと掴んだのである。そんな時は絶対に振り向いてはならない。そして大声を出しても騒いでもいけない。静かに少し待つのである。そうすれば、かならずその何者かは去っていくらしい。
「山になれていない人ならパニックを起こすでしょうねえ。それが滑落事故なんかに繋がるんじゃないでしょうか」
天川村洞川地区の話。
P195
艶子さんの娘さんは、子供の頃に近所の人が急にいなくなったのを覚えていた。
(中略)
「あれは狐、狸にいらわれたんやろね」
艶子さんが言う“いらわれる”とは、触るの意味である。
(私なら、“いらわれる”とは、“もてあそぶ”の意味も追加する。著者は関西の方ではないので微妙なニュアンスが分からない…これはしかたないことだ)
P248
実はありふれた存在だった妖怪は、今や絶滅危惧種なのだ。それが未だに多く存在し得るのが山である。
【ネット上の紹介】
山で働き暮らす人々が実際に遭遇した奇妙な体験。現代版遠野物語。
1 阿仁マタギの山(狐火があふれる地
なぜか全裸で
楽しい夜店
生臭いものが好き
狐の復讐
見える人と見えない人
狸は音だけで満足する
消えた青い池
人魂、狐火、勝新太郎
親友の気配
辿り着かない道
蛇と山の不思議な関係
汚れた御札
マタギの臨死体験
叫ぶ者
白銀の怪物)
2 異界への扉(狐と神隠し
不死身の白鹿
来たのは誰だ
もう一人いる
道の向こうに
響き渡る絶叫
僕はここにいる
謎の山盛りご飯
山塊に蠢くもの
鶴岡市朝日地区
出羽三山
鷹匠の体験
奈良県山中・吉野町
ツチノコは跳び跳ねる
足の無い人
巨大すぎる狐火
山から出られない
行者の忠告)
3 タマシイとの邂逅(帰らない人
死者の微笑み
迎えに来る者
ナビの策略
椎葉村にて
テントの周りには
幻の白い山
なぜか左右が逆になる
不気味な訪問者
天川村の事件
帰ってくる人
固まる爺婆
お寺とタマシイ
飛ぶ女
帰ってくる大蛇
呼ぶ人、来る人
狐憑き
真夜中の石臼
狐火になった男)