百醜千拙草

何とかやっています

JoVEは科学出版を変える?

2008-09-12 | Weblog
アメリカ大統領選には触れないつもりだったのですが、オバマの「口紅を、豚に付けても、豚は豚」発言に対する、マッケーン側の冗談かと思う様な抗議反応に関して、言いたいことがいっぱいあるので、ちょっとだけ。共和党の党大会でマッケーンはワシントンを変えると言いいました。一方、民主党はマッケーンはブッシュ政権の継続であって、マッケーンになっても政治は変わらないと主張しています。マッケーンという大統領になっても共和党政権なら何も変わらないといういうことの例えとして、「豚に口紅」のことわざが使われました。そこで、これはオバマの、自称「口紅をつけた闘犬」ペイリンに対する、性差別的当てこすりであると、マッケーンキャンプが抗議したわけです。しかし、そもそも、この大統領選キャンペーンでは、マッケーン自身がクリントンのヘルスケアリフォームプランを指して、この例えを使っています。もちろん、クリントンを豚呼ばわりしたと騒ぎ立てるものは、誰もいませんでした。また、マッケーンの前相談役トーリークラークは「豚に口紅」という本まで書いてます。共和党のハカビーでさえ、オバマの発言をペイリンへの当てこすりととるのは、穿ち過ぎであろうとコメントしました。相手の足を引っ張ることしか考えていないようなマッケーンキャンペーンは本当に、見苦しい。マッケーン、その無能のキャンペーンチームを何とかしなさいよ、と言いいたくなります。おそらく、オバマはこの発言をただのものの例えとして使っただけで他意はなかったものと思いますが、聴衆は深読みしたようでした。オバマが「豚に口紅をぬっても、、、」と言って少し間を空けた時に、聴衆はどっとわきましたから、おそらく「闘犬に口紅」との偶然のアナロジーに気がついたのでしょう。それはオバマのせいではないですし、こんな瑣末時にいちいちいちゃもんをつけて、国民の注意をそらそうとするようなマッケーンキャンプのチンピラぶりは本当に情けない。そのチンピラに乗せられるアメリカ国民もそうとう情けないとも言えます。

さて、今日の本題、オンラインビデオジャーナル、JoVE (Journal of Visualized Experiments: www.Jove.com) がPubMed/Medlineにインデックスされることになりました。生物科学論文出版におけるインターネットとコンピュータ技術が及ぼした多大な影響を象徴するような画期的な出来事だと思います。
以前にも触れましたように、近代の生物学研究は、技術的進歩に先導されてきています。昔の野口英世のように顕微鏡をひたすら覗けば答えが見えてくるというような時代ではありません。電気生理、マウス遺伝学、分子構造解析などなど、思いつくだけでも、職人的技術が実験の遂行に不可欠で、極端な場合、その技術の希少さ故に、技術さえ持っていれば、論文が量産できる場合もあります。そうした実験技術は、論文を読んで試行錯誤で身につけるのと、実際に弟子入りして実地指導を受けるのでは、おそらくその技術伝達の効率に5倍程の差は容易におこりうると思います。かといって、技術を習うために遠方の研究室に弟子入りするのは多くの場合、容易なことではありません。JoVEはその隙間を埋めるものだと思います。手から手へ伝達される程には効率的ではないでしょうが、百聞は一見にしかず、ビデオ映像であっても、論文の行間に埋もれて見えない多くのことが、その作業の映像には自然と含まれています。また、これはエンタテイメントとして見ても楽しめます。にわか俳優となった研究者が、カメラに照れながらも、実験手技を解説するのを見るのは、微笑ましいです。一方、このままアナウンサーや政治家にでもなれるのではないかと思うほど、堂々としゃべる人もいます。また、その専門家でなければ、実際に目にすることがない実験の様子を見るのもなかなか楽しいものです。科学コミュニケーションがオープンになっていくことは、研究者間にも、あるいは一般の人への啓蒙効果という意味でも、喜ばしいことだと思います。
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