百醜千拙草

何とかやっています

米大統領選前夜祭

2008-11-04 | Weblog
明日いよいよ4年に一度の大レース、アメリカ大統領選の投票が行われます。今回の大統領選では、社会情勢や経済が悪くなってきた中で、政治への国民の関心の高まりを反映したせいか、期日前投票にも記録的な列ができる程で既に多くの有権者が票を投じています。
最終ストレッチでのマッケーンのキャンペーンには、例の配管工、ジョーが参加している様子を見ました。サポーターも何を考えているのか、「ジョー」とかいたバッジを身につけてマッケーンの話を聞いています。なんだか溜め息がでます。ペイリンを担ぎ出した時と同様、ジョーの場合も、担ぎ出す方も担ぎ出すほうなら、それにのせられてのこのことマッケーンキャンペーンに出てくる方も出てくる方だと思います。このナイーブな正義感に基づいているのであろうと思われるアメリカ一般人の行動力というのは、笑って済ますことができないものがあります。アメリカは民主主義、即ち、衆愚政治の国です。つまり、圧倒的多数の余り賢くない人が、非常にナイーブな判断を自信を持って下すことによって政治を動かしてきた国です。その根拠は薄弱でありながら、自分の国は正しいという自信というか信仰が、国の動向を決め、イラクを侵略し、国防の名のもとに、世界の人々を殺し続けてきたのです。マッケーンがペイリンやジョーを使ってやろうとしていることは、判断力の乏しい人々に誤った自信の根拠を与えようとすることだと思います。配管工のジョーが将来ビジネスをもって、オバマのプランで増税となるレベルの年収(25万ドル)を稼ぐようになる確率は一体、どれくらいでしょうか。マッケーンはジョーを一般人の代表のように扱い、一般人の人ががんばって25万ドル以上の年収になった場合にオバマの政策では損をすると言います。しかし、平均収入5万ドル未満の一般アメリカ人の一体何パーセントが生涯の間に年収、25万ドルも稼ぐようになって、増税を心配しないといけなくなるというのでしょう。殆どの一般人には無関係な話です。しかし、アメリカ人の多くの人がそのうち自分たちは億万長者になると真面目に考えているらしいという話もあり、その根拠のない自信にマッケーンはつけ込んで、まず起こらないであろう輝く未来の幻想を、今はまだただの配管工のジョーを使って一般人に売り込もうとしているわけです。一般アメリカ人は、まず起こらないと思われる25万ドルを稼ぐようになった時のことを心配するよりも、万が一、明日、会社を首になって、収入が無くなった時に、マッケーンの縮小政策で随分と削られるであろう福祉の方を心配するべきでしょう。その方が年収25万ドルを稼ぐようになるより、はるかに高い確率でおこります。それにしても、アメリカ人の根拠のない正義感や自信にはしばしば辟易とさせるものがあります。8年前、どこの誰がみても、ブッシュ政権では悪くなるのがわかっていたのに、結局、皆がそのことを身にしみて感じるようになるためには、実際に8年やらせてみて、本当に悪くなったという事実をつきつけられる必要がありました。そのブッシュに追随して改革と叫びながら日本の社会を破壊していった人もいました。傷は深いですが、今ようやく立ち直るための機会が与えられようとしています。

ところで、先週末のSaturday Night Live (SNL)には、マッケーン本人が出演、ペイリン役のTina Feyと共演し、二人でテレフォンショッピングのホストをするというコントを演じました。先日ゴールデンタイムの30分のテレビ放送枠を大金をかけて買取ってキャンペーン番組を流したオバマに対して、テレフォンショッピングの放送枠しか買えなかったとの冗談で始まり、本人が選挙の直前にここまでやっていいのかと思うようなネタが満載でした。商品の一部として、ジョー人形三点セット、配管工ジョー人形、ビール飲みジョー人形(Joe 6-packs: 6缶パックの缶ビールを飲む労働者クラスのアメリカ人男性の象徴としてペイリンがスピーチの中でしばしば使っている喩え)、ジョーバイデン人形などが披露されました。マッケーンに隠れて、ペイリン役のTina Feyが「ペイリン2012」と書かれたTシャツをみせるのシーンもあって、共和党選挙対策本部もよく、このコントにOKを出したものだと思いました。つまり、ペイリンがなぜ、今回、のこのこと副大統領候補として出てきたのか、その本音は皆がすでに見抜いているということです。彼女が副大統領候補を受けたのは、アメリカの国民のために国をよくしたいという使命感からではなく、「有名になって権力を手にしたい」という自己中心的な権力欲からで、それが国民には丸々すけて見えているのですね。 仮に今回、マッケーンが大統領に選ばれたとしたら、マッケーンは一期のみの大統領、4年後には副大統領の自分が共和党大統領候補として選挙にでることになるわけです。僻地アラスカの市長上がりの一女性知事であるペイリンには、今回のマッケーンの選挙対策上の「女性で保守派」というニーズが無ければ、ホワイトハウスでの中央政治へ入り込むようなチャンスなどないでしょうから、血迷ったのでしょう。そんな権力欲でギトギトしたペイリンの醜い本音がコントのネタになっているのです。

 最近のオハイオでのキャンペーンでマッケーンは、興奮して、「勢いを感じる、勝てる、そんな気がする!」と叫んでいました。それは、まるで4年前の大統領選挙の予備選で、最初の州、アイオワで失望的な3位に終わった時のハワードディーンの叫びを思い出させるものでした。ディーンはその叫びの後も、全く票がふるわず、早々と大統領選から脱落したのでした。一方、オバマは、最近のインタビューもキャンペーンにも興奮した所はみられず、リラックスした安定感を見せています。消える前にパッと明るくなるろうそくの火、それを思い起こさせるようなマッケーンの興奮でした。

今回のアメリカ大統領選、アメリカの将来にとって、オバマという選択は火を見るより明らかな選択です。しかし、アメリカ人の根深い人種や性に対する偏見は、多少心配です。ナイーブな判断を自信を持って下す(しばしば相互理解不能な)一般アメリカ人の自信の根拠は、しばしばヘンな名前や肌の色であったりするのです。アメリカには「Fool me once, shame on you. Fool me twice, shame on me」という諺というか格言がありますが、今回も万が一、そんな下らない理由で、共和党政権となって、国民生活がもっと悪化したら、責任は共和党ではなく、判断力の乏しい国民にあります。もし今回もアメリカ人が共和党を選ぶなら、アメリカは民主主義はやめて、大統領は投票ではなく、テストか何かで選んだ方が余程、ましでしょう。
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