週末のがっかりニュースは、自民党の裏金問題。結局、検察はアベ派五人衆の立件を諦め、秘書に詰め腹を切らせて終わらせるつもりのようです。ま、最初のガサ入れでさえ、わざわざ予告してからやったようなものでしたから、この事件の収束のシナリオはあらかじめ書かれていたのでしょう。法律の専門家から見ると、裏金づくりの共謀があったかどうかが焦点のようで、それを立証するのは困難とのこと。それはそうかも知れませんけど、一般国民であれば、冤罪を作った上に裁判で負けたら控訴までして被害者を苦しめるくせに、与党政治家であれば億単位の裏金を作ってもお咎めなし。国民は納得できず、怒り爆発。ま、陸山会事件をでっち上げ、調書内容を捏造した東京地検特捜を私はもとより信用していませんけど。そもそも特捜は、GHQが旧日本軍の貯蔵していた隠退蔵物資を摘発する組織として始まったという経緯から、アメリカとその手先(自民党清和会 )と同じ穴のムジナであるという話は以前からあり、陸山会事件のように政治権力闘争の道具でさえあったわけで、その点を考えると、期待はずれというよりも予想通りの展開でした。しかし、今回の特捜への国民の怒りは凄まじく、かつての不正献金事件の時のように、東京地検は再び黄色いペンキを打ち掛けられることになるかもしれません。
さて、先週の山場は、私的には何といっても、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)での南アフリカ弁護団による弁説でした。南アフリカは先月、イスラエルをジェノサイド禁止条約違反で提訴、その最初の弁論が、1/11の現地の朝から三時間以上に渡り行われました。南アフリカの代表と弁護チームが訴えたイスラエルの罪状とガザおよびパレスティナの被害は、多大な証拠に則ったロジカルで力強い弁論で、見る者の心を揺さぶりました。中でも、淡々とパレスティナの被害事実の具体例を積み立ててイスラエルの罪状を追求したアイルランド女性弁護士のBlinne Ní Ghrálaighの弁説では凄みがありました。アイルランドもノルマン人やイングランドに支配され虐げられてきた歴史を持っています。
彼女の演説の中で、救助隊がある種の子供たちを形容するのに使う一つの略語が紹介されました。
WCNSF
"wounded child with no surviving family"の頭文字を取ったものです。こんなに悲しい言葉があるでしょうか。しかも、この子供たちは天災でも何でもなく、イスラエルの悪意ある無差別虐殺行為の犠牲者なのです。
彼女の弁論をカバーしたニュースと裁判の様子。
一方、その翌日行われたイスラエルの反論は、正直、「よくこんなことがシラフで言えるなあ」と呆れるレベルのお粗末さでした。イスラエルの主張は、ハマスを選択的に攻撃し、ガザの市民へのダメージを少なく済むべく全力を尽くしているということらしいです。しかしあれだけの無差別爆弾(dumb bomb)をガザに集中投下し、70%の犠牲者が子供と女性という2万人の市民を3か月という短期間で虐殺し、生き延びた子供の手足や未来や家族を奪い、ガザを誰も住めないような瓦礫の山にし、イスラエル国防省の役人からして「ガザを兵糧攻めにする」と公言したイスラエルが、これだけの物的証拠を前にして、何を言うか、と心底、怒りを覚えました。弁護士の一人はやる気がないのか、弁論の原稿の紙をなくして壇上で立ち往生するというお粗末さ。イスラエルは結局、見苦しい言い訳に終始し、南アフリカの主張の枝葉末節に反論するだけに終わりました。
裁判所の判事が完全に中立ならば、南アフリカが負けることはありません。残念ながら、ここは国連、第二次世界大戦の戦勝国が牛耳る組織であります。中国、ロシアを除く常任理事国は多かれ少なかれイスラエルの味方をするでしょう。とくに、そもそもパレスティナ問題を引き起こした元凶である三枚舌外交のイギリスとそれに乗ったフランス、そして何より今回の虐殺に関してはイスラエルと同等の罪を負うべきアメリカが常任理事国ですから、裁判の帰趨はわかりません。加えて、パレスティナ問題に関して国連の勧告をずっと無視し続けてきたイスラエルが国際司法裁判所で敗訴したからと言って諾々と従うわけがなく、事実、ネタニヤフはICJでどういう判決が出ようとも戦闘はやめないと宣言。
その後、南アフリカは、バイデン政権に今度はアメリカをジェノサイド幇助で提訴すると通告。武力で正面からやり合って勝てない相手には、世界の世論を味方につけて、束になってかかるしかありません。ネルソン マンデラの意思を引き継いだ南アフリカが「国家」として、立ち上がってくれたことは、素晴らしいことです。南アフリカの行動は、欧米大国とその属国日本の「自分さえ良ければよい主義、勝てば官軍主義(帝国主義/資本主義)」に対するアンチテーゼであり、今後の進むべき世界の指針を示し、この非道で凄惨なガザの大虐殺の中で世界中の差別に苦しむ人々に希望を与えたと思います。
また、今回の南アフリカの提訴の意義が大きいのは、西側/イスラエル対アラブ/イスラム世界という対立の構図と一見、無関係のように見える南アフリカがイニシアティブをとって、国家として世界に人道主義を訴えたという点です。この南アフリカの行動はこれまでの目先の国益を求めてのものではないからこそ、西側諸国はその国民への影響を恐れ、今回の南アフリカのイスラエルとアメリカに対するICJへの提訴の報道を抑制しています。日本に至っては、このニュースはほとんど無視。イスラエルのジェノサイドに抗議して、イスラエルへ向かう船舶の江海への侵入を止めたイエメンに対して、先日のアメリカとイギリスがイエメンへの爆撃を行った事件に関しても、NHKはあたかもテロ組織への制裁であるかのように報道。ま、アメリカの使いパシリの自民党政権に人事を握られ、自民党に報道内容に口を出されるNHKに公平な報道など求めるのは無理でしょうが。
今年末の大統領選に向けて予備選が始まろうとしています。民主党はバイデンに二期目をやらせるつもりでしょうが、無理でしょう。バイデンはようやく大統領になれたのに、ウクライナの戦争を煽り、イスラエルの虐殺に手を貸し、死の商人の手先という汚名を着て晩節を汚し、一期でホワイトハウスを去ることになると思います。次の政権が共和党になるのは仕方がないです。しかし、イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移したトランプがまた返り咲くのは御免被りたい。トランプはバイデンのような武器商人ではないかも知れませんが、数え切れぬほどのセクハラや詐欺などの数々の訴訟に示されるように、人間性には大いに問題があり、そして自己顕示のためには、米軍の最高司令官という立場を行使して核ミサイル発射ボタンを押すぐらいのことはやりかねない危険人物ではないかと思っています。人の不幸を望むのはどうかと思いますけど、正直、バイデンもトランプも、二人とも予備選の間に脱落してもらいたい。フランス並みとはいいませんが、アメリカももっと若く新しい世代の人に任せたほうがよいでしょう。