ロシアがイランから武器供与を受けたことを口実に、ブリンケンやトルードーが、ウクライナに長距離弾道ミサイルでロシアへの遠距離攻撃をけし掛けた先週でした。"Warmongers"と一括されるアメリカ軍産と政治複合体は、世界各国で戦争をすることで公金を軍産に回す、つまり、第三国を戦場にすることで金儲けを続けてきました。主に前世紀のアメリカの国家犯罪の記録であるアメリカの国家犯罪全書では、この半世紀の間にアメリカ、CIAは50を越える国家に違法に介入し、国家転覆を図り、戦争を誘発し、数えきれぬ市民を世界中で殺してきたことの詳細が描かれています。戦争と紛争をネタに国家を回してきたこの国では、敵国を常に必要とし、そして、その敵国が大きいほど、大きな予算がつき、軍需経済は大きくなるわけです。
ゆえに、ロシア(それから、これからの中国)は、敵国として十分大きく、国民に脅威を語り、戦争のネタにするにはうってつけでした。しかし、アメリカは自分の力を過信し過ぎたのか、立ち入ってはいけない場所にまで入り込んで、戦争を煽るようになりました。それがウクライナです。ウクライナやジョージアまでを含めてNATOに取り込みロシアを完全に包囲するというのが、80年代ぐらいからのアメリカ強硬派の計画で、その筆頭にいたのが共和党のブッシュ政権の副大統領だったディック チェイニーです。今回、共和党の彼が民主党のカマラ ハリスをendorseしたことが話題になっていましたが、大きな理由の一つが対ロシア政策でしょう。トランプはウクライナへの支援はやめて戦争を終わらせると言っており、一方、バイデン政権の飾りに過ぎないハリスはこれまでの民主党政権のpro-war方針を踏襲するでしょうから、ロシアとの戦争継続を望むものは民主党政権の方が都合がいいのでしょう。
それにしても現政権は、戦争のネタにウクライナを使うということが、ロシアにとってどういうことなのかを理解していないのか、あるいは理解した上で核戦争を期待しているのか、どちらなのでしょう?いくらバイデンが認知症でカマラが傀儡であっても、ロシアはアメリカを荒廃させることができるだけの核戦力を持っていて、核戦争になったら、アメリカのみならず、人類は滅亡するということをわかっていないわけがないと思うのですけど。
ラブロフは、あらためてウクライナが長距離弾道ミサイルを使うようなことになれば、それはロシアとNATO(アメリカと西ヨーロッパ)との直接戦争であり、ロシアの核兵器の使用根拠になり得る、またロシアは核兵器がなくてもキエフを瞬時に壊滅させうると警告しました。プーチン政権は総じてストレートです。彼らの言うことは字面通りに解釈しないといけません。
ところで、前回のポストで、イスラエル(や横暴な権力)を止めるために何ができるのか、というコメントがあったので、思うところを少し。かつて科学研究の世界に身を置いていたせいかも知れませんが、「世の中は基本的にシンプルにできている」と考えておくべきだと思っています。複雑に見えることもシンプルな事柄が組み合わさっており、(少なくとも部分的には)単純な構成因子の"cause-effect"の積み重ねで現象は説明できるとするreductionism的アプローチの実効性は否定できないと思います。ですので、世の中の問題については、何か思いがけないような素晴らしいことが起こって困難が一発逆転で解決するということは、滅多にないと私は思っています。大抵、当たり前のことが当たり前におこり、その結果として予測されたことが起こるのです。「当たり前」と言うのは人間が因果論に基づいて論理的に考えた結果、予測される範囲のことです。ですので、「何ができるのか?」ということに関しても、誰も思いつかない妙案があるわけではなく、事実を当たり前に分析して結果、当たり前の結論が引き出されるだけです。そういうことしか言えませんが、ちょっと議論しておきたいと思います。
イスラエルに関しては、先日、イスラエルの野党党首、Yair Golanは「継続的な民衆の圧力だけが、終わりなき戦争に引き摺り込むネタニヤフ政権を終わらせることができる」と述べました。つまり、権力の横暴に対峙するには、民衆の集合的圧力しかない、という当たり前のことを述べたのですが、私もそれが答えだと思います。問題は、それをどう実現してくかということです。
現在、国際的運動で、多少の効果を出しつつあると思われるのがBDS (Boycott, Divestment, Sanctions) movementです。(例えば、この団体の活動を見てみてください)。BDSはコロンビア大での反イスラエル デモ活動が話題になった時に取り上げましたが、歴史的には、南アフリカのアパルタイト政策を廃止させたのが、世界的なBDS運動の盛り上がりでした。南アフリカ政府と取引や支援をする企業をボイコットし、南アフリカへの投資を引き上げ、制裁をくわえるということを広げていって、南アフリカのアパルタイト政府に圧力をかけ、アパルタイト政策を撤廃させました。この時、運動の発端になったのが、アメリカのカリフォルニア州立大バークレーでの80年代の学生運動でした。アメリカの大学はendowmentsと呼ばれる資金を運用することでその活動費に当てておりますが、学生が大学当局にデモを通じて圧力をかけ、南アフリカ支援企業への投資をやめさせたことが広がり、最終的に南アフリカのアパルタイト政府に打撃を与えたのでした。
その戦略を踏襲して、アパルタイト国家であるイスラエルへの抗議活動を行なったのが今回のコロンビア大から広がったアメリカの大学での反イスラエル プロテストです。残念なことに、大学が早期に警察を介入させたこと、学年末に重なったことなど、そして、南アフリカの場合と異なり、シオニストはアメリカのエスタブリッシュメントに深く食い込んでいることなどがあり、運動は下火となってしまいました。アメリカでは、人口の2%に過ぎないユダヤ人は、大学、政府機関、金融、主要産業、大手メディアなどの指導的部門では50%近くを占めており、そうした影響力のあるユダヤ人の一部はシオニストであり、イスラエルを支援しています。彼らは自らの立場を利用し、またAIPACなどの機関を通じたロビー活動によって、アメリカ政治に非常に強い影響を与えております。それだけに、イスラエルの場合はアメリカ政府を動かすことが南アフリカよりも困難です。
しかし、BDSは一定の効果をあげており、イスラエル支援企業と見做されているスターバックス、マクドナルド、コカコーラ、などなどの売上は今年になって急激に減少してきています。また、国家レベルでイスラエルへの投資を引き上げ、武器輸出を停止する国も出てきています。イスラエルがこの極悪非道を続けられるのは、共謀者のアメリカの支援ゆえですから、アメリカの支援を止めることができれば終ります。BDSを広げることでアメリカ政府にプレッシャーをかけていくことが一般国民にできることではないかと思います。
しかしながら、スターバックスのコーヒーを飲みながら、ユダヤ資本の3大ネットワークのニュースを聞き、ヒューレットパッカードのパソコンで仕事をするような人が、これらのイスラエル支援企業をボイコットする動機をもつためには、まずは、イスラエルの暴虐の歴史とイスラエル支援企業の役割について知らないと困難でしょう。
つまり、人は、知ることなしに考えることはできず、考えることなしに正しく行動することはできません。人々がこれらの問題をまず知り、それを自分の身に結びつけて考える、そうする人々が一定数、世界に増えれば、世の中を動かす力になると確信しています。
ですので、われわれ日本の一般人ができることは限られていますが、そういう点でも、まずは情報の拡散だと思います。NHKの朝のニュースで報じられる情報は非常に限られています。今も世界中で反イスラエル、パレスティナ支援の数万人規模のデモが各地で行われていることをNHKは報道しません。日本においても、ヨーロッパ諸国で行われているデモより小規模ながらこの週末も新宿の駅前でデモが行われましたが、一切、報道されません。こうした情報はSNSなどを通じたマイクロメディアを通じて拡散されるのみですから、情報を積極的に集めようとする人以外にはなかなか届きません。
加えて、イスラエルのジェノサイドを実質的に支援しているアメリカに絶対服従の日本政府の実質的管理下にあるNHKと大手メディアとは、subtleな言葉遣いを使うことで、まるでイスラエルという国とイスラム組織との戦争が中東で起こっているかのような印象操作がされています。しかし、これは、独立した国と国が戦う戦争ではなく、ジェノサイドであり、占領者がその占領の被害者をほぼ一方的に虐殺しているのです。
パレスティナで起こっていることは「戦争ではない」ということをどれほどの日本人が理解しているでしょうか?私は多くはないと思います。仮に戦争だとしても、国土の8割が破壊され、住人のほぼ100%が住居を追われ、殺された市民の半数が子供であるという戦争など、歴史上、皆無であるという異常さをどれだけの日本人は実感しているでしょう。そして、一体、何割の日本人が、76年前に、そもそも、なぜ75万人というパレスティナ難民が生まれることになったのか知っているでしょうか?
しかし、主要メディアにおいては、これらのコンテクストは、ほぼ意図的に無視されています。NHKは「イスラエルはハマスが隠れているとされる学校を攻撃し、xx人の死者がでました」とまるで、台風被害でもあったかのような調子で文章を棒読みするだけですが、実際に起こったであろうことを具体的に想像してみてください。長年、抑圧され、自由を奪われ、何世代にもわたって困難な生活を強いられてきた人々です。そうして、家族を殺され、何もかもを奪いさられ、身一つで食べるものにも欠いた難民が身を寄せている避難所の学校や病院に爆弾を落とすということがどういうことか、理解できるだけの知能と想像力があれば、NHKの報道がいかに報道の精神を欠いているかわかるでしょう。事実を報道しているだけというのなら、なぜ、NHKイスラエルの主張しか報道しないのでしょう?なぜ76年の虐殺と抑圧をおこなってきたイスラエルとその被害者であるパレスティナの歴史を無視し、国際法で認められている10/7のハマスの武力抵抗を非難するのでしょう?
マスメディアがわざと口を噤み、スピンをかけることによって、人々は権力者が人々に知って欲しくない不都合な事実に注意を向けなくなり、マスメディアの解釈をそのままに信じ込んだりします。知らないこと、意識にのぼらないことは、人びとにとって「存在しない」ことと同じだし、そもそも興味のないことを知ろうともしないのが人間です。だから、われわれは、重要なことは、学び、忘れないように、学校で歴史を教えて、戦争の記憶を語り継いできたのだと思います。
われわれ個人が、できることは、まずは、ユダヤ資本に牛耳られている大手メディアや、イスラエル最大支援国であるアメリカの属国である日本のメディアが流す情報以上のものを「知ること」であり、批判的に物事を見ることによって、自ら考え、判断するというプロセスを引き起こすことでしょう。しかるに、自分の身に直接関与しないことに興味を持たないのが人間であり、歴史の授業は居眠りして過ごし、マス メディアの言うことは丸呑みで信じてしまうのも人間です。
そういう無関心な人、さらに悪いのは多少の知識があるがために、自分では何もしないくせに、誠実に努力する人々を冷笑しバカにすることを喜ぶ「小人」は、少なくありません。しかし、こうしたゼロやマイナスの人々をプラスの方向に向かわせて社会全体で圧力を加えていくことでしか権力を動かすことはできないのではないかと感じております。他人は変えることはできません。自分が変わろうとする意思のみが人を変えることができます。われわれができることは、そんな意識の芽生えを刺激することであり、そのためにはまずは知ってもらうことです。少しでも多くの人に問題を知ってもらおうと、わざわざ休日を潰して、街角に出て、デモを行い、TwitterやTikTokでメッセージを発信ししている人々がおります。彼らの行いは尊いものだと思います。少なくとも、それを冷笑したり批判したりするよりは、遥かに価値あることだと思います。
私も、ずっとこの話題を取り上げてきたのは、多少でも情報提供の足しになるのではないかと気持ちがあるからでもあります。話を聞いてくれる周囲の人には話をします。日本でやる意味があるかどうかわかりませんが、個人的なBDSとして、スターバックスなどの個人ボイコット、パレスティナ支援団体への支援などは、何もしないよりはマシだと思ってやってます。大海も一滴の水からなり、千里の道も一歩から始まるもので、力をもたない個人でも、心ある人々ができることを積み重ねていくことが大切だと思っています。毎日、少しの時間でも苦しむ人に心を寄せて忘れないでいることだけでも意味があります。一人一人ができることは限られていますが、ゼロではありません。
人はそれぞれ、自らの生活があり、人生の目的がありますから、それらを犠牲にして、数々ある世の中の不条理に立ち向かう必要はないし、そうするべきではないと私は思います。しかし、パレスティナやアフリカで行われているジェノサイドで無抵抗な子供が残虐に殺され続けているという現実は、受け入れ難いものです。
コメントいただいた方、「なんとかしなければならない」という気持ちを共有していただいているのなら、是非、その目的のためにご自身ができることは何があるだろうかと考え、できる範囲で行動し、そして発信してもらえたら、と思います。
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