百醜千拙草

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好感持てるオバマの科学技術アドバイザー

2008-12-23 | Weblog
大統領選が終わってから、アメリカのポリティクスには全く触れなかったのですが、一応、次期政権がどんなように構成されていくかは断片的なニュースでフォローしていました。先週末、オバマの科学技術アドバイザーのトップを、ニューヨークのスローンケタリングがんセンター所長でノーベル医学賞受賞者であるHarold Varmusと、ハーバードとMITとのコラボのゲノム研究機関、Broad Instituteの所長のEric Landerの二人が務めることが報道されました。Eric Landerはちょっと変わった経歴の持ち主で、もともと数学者だったのですが、イギリスでの留学後、MITに帰って来てから専門をゲノム遺伝学へ変更し、以後、この分野の発展を牽引してきました。彼の講演は二三度、聞いたことがあります。アメリカ人のオプティミズム満ちた夢のある話で聴衆を楽しませてくれます。
 私が大学院の頃、骨芽細胞の分化に伴って発現する新規遺伝子をクローニングするという実験をしていました。取ってきたもののうち、もっとも発現パターンが劇的であった遺伝子のcDNAの3'端断片のシークエンスを見てみると、まだ報告されたことのない遺伝子のようでした。ノザンで調べると全長は8kb余り、取れてきたのは3'の1.5kbというわけで、ライブラリーを作り直したり、RACEでgene walkingしたりしながら、2年以上かけてコーディングのシークエンスを決めました。当時、マウスのゲノムシークエンスも分かっておらず、シークエンスも放射性同位元素を使って、一週間かけてようやく500塩基を読めるかどうかという時代でしたので、今から思えば、たかだか8kbのシークエンスを読むのに2年とはばかげているように聞こえますが、当時はそんなものだったのです。ゲノムシークエンスといえば、実はEric Landerは2001年にNatureに発表された歴史的なヒトゲノムプロジェクトの論文の筆頭著者でもあります。ところで、私がその苦労してクローニングしたcDNAは結局、二流雑誌をたらい回しにあった挙句、大した論文にはなりませんでした。一つの理由は、その全長シークエンスをようやく決めて、遺伝子産物の機能も推測できるようになったころ、Eric Landerのグループからフィンランドの骨遺伝疾患家系の遺伝的解析で原因遺伝子を同定したという論文がCellに出て、その遺伝子が私がクローニングした遺伝子のヒト相同遺伝子であったからかも知れません。彼らの論文で、遺伝子の機能もその異常がどういうヒト疾患につながるかも明らかとなってしまい、そういったことを目標としていた私の研究の意義が乏しくなってしまったからです。別に競争していたわけでもなんでもないのですが、結果として彼らの論文が出版されたために、私の仕事は余り価値がなくなってしまったのでした。それは今から15年近くも前の話です。その後もEric Landerのグループのゲノム遺伝学の分野での活躍を続け、Time誌での数年前の企画では、現代のもっとも影響力のある100人の一人にも選ばれています。
 オバマのこの人事も私には次期政権への期待を持たせるものです。経済アドバイザーに男尊女卑失言でハーバード総長を辞めることになったラリーサマーズを据えた時は、オバマは単にクリントン政権を再現しようとしているだけではないのか、という疑問もわいてきたのですが、今回の科学技術アドバイザーの人事は好感が持てます。生命科学に広い知識と公平な判断力を持つVarmusとEric Landerが科学技術アドバイザーカウンシルの長を務めるというのは、研究界にとって喜ばしいことではないかと思います。

もう一つ、大統領がらみのニュース。トルコの靴メーカーへ飛行性能に優れた靴の注文が増えています(本当の話)。先日、イラクでのブッシュの記者会見で、ブッシュに向かって靴を投げつけたイラク記者のニュースがYoutubeで話題になっていましたが、どうもその記者がはいていた靴がそのトルコのメーカーのものだそうです。あの投げられた靴の軌道とスピードをみると、靴を投げた記者はかなりの靴投げ技術を持っていたと思えるのですが、それを年齢に似合わぬすばやさでよけたブッシュの靴よけ技術もなかなか侮れないものだと、それを見ていた人は思ったのではないのでしょうか。次回の記者会見では、ブッシュは靴を警戒してくるでしょうし、その裏をついてうまくブッシュに靴を命中させるには、靴投げ技術の改善のみならず、飛行性能のよい靴、より早く、より鋭く、より正確に、目標に到達できる靴が不可欠であるという結論に達したのであろうことは想像に難くありません。この際、日本も世界に誇る科学技術をもって、高飛行能靴の開発に貢献したらどうでしょうか。残念ながら、ブッシュの記者会見の機会はあと一ヶ月足らずに限られていますので、あってもチャンスは一度あるかどうか、急がねばなりません。
 アメリカ大統領は0で終わる年に選出されると、暗殺にあうか、または変死するというジンクスがあって、たとえば、1860年のリンカーン、1880年のガーフィールド、1900年のマッキンリー、1960年のケネディー、1980年のレーガンは暗殺(または暗殺未遂;レーガン)されていますし、1840年のハリソン、1920年のハーディングは変死しています。2000年選出のブッシュはこのジンクスにあたるのですが、任期終了までわずかとなって、いよいよジンクスも外れるのかと思っていましたが、ここに来て、高飛行性能の靴による危険の可能性が出てきたかも知れません。

ところで、明日から1週間ほど、遠方にでかけますので、次回、次々回のブログの更新はしない予定です。
皆様、楽しいクリスマスを迎えられますように。
コメント
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