百醜千拙草

何とかやっています

石川議員の離党に思うこと

2010-02-12 | Weblog
 日米安保は、敗戦後の日本がアメリカに隷属関係にあるということを示した条約であり、ゆえに60年、70年台に、激しい安保反対運動がありました。私より一、二世代上では、安保闘争を中心とした学生運動に多くの大学生が係っていました。今の普天間の米軍基地の問題は当然、日米安保の上にあるもので、歴史を知るものから見れば、安保は日本がアメリカの植民地であるという印であり、建前上軍隊を持たない日本を、有事の際は、土地や金銭との交換でアメリカの武力で守ってもらう、というようなノンキな契約でないということは、はっきりしています。
 敗戦から60年以上たった2010年の現時点においても、日本がアメリカの属国であるという事実は変わっていません。岸信介がCIAの日本エージェントであったという話は有名な話です。一方、アメリカとの繋がりの薄い経世会系の田中角栄、竹下登、金丸信、橋本龍太郎、鈴木宗男、そして小沢一郎は、全員、東京地検特捜に国策捜査を入れられ、現時点で小沢一郎と橋本龍太郎を除いて、全員、逮捕、失脚となっています。橋本龍太郎は逮捕には至りませんでしたが、議員辞職しています。旧利権派はアメリカの属国状態を保ち、アメリカに国民の税金を横流しすることで、その見返りを得るという利害の上にこの構造を維持してきました。高度成長期には税金をアメリカにかすり取られていても、ボロが出ずに済みましたが、高度成長期が終わってすでに30年、一般国民が喰って行くことが難しくなってきた上に、これからの高齢化問題などを抱えている日本で、いつまでも、この植民地政策を続けて行くことは不可能です。鳩山内閣と小沢民主党が考えているように、日本とアメリカの関係は現状をふまえて、双方にとってベストな位置を探しながら改善していく必要があります。
 今では、私の世代も含めて、日本とアメリカとの関係を、(隷属関係であり)屈辱的である、と感じる若い人は余りいないのではないかと思います。学校では、日本は近代民主主義の国であり、戦争放棄をした独立国であると教えられていますし。(事実は、もちろん、違います)
 しかし、私はそれでよいと思います。「独立国という建前だけれども、本当は植民地なのだ」という劣等感というか、ねじれた感情を持つよりは、「独立国という建前なのだから、独立国として振る舞おう」という態度のほうが素直でよいです。戦争放棄しているのは、「日本が憲法九条に基づいて世界平和を実現したいと願っているからだ」と考える方が、「憲法九条は本当はアメリカが日本を骨抜きにして支配するために押し付けたものだ」という事実に卑屈になるよりも余程、建設的であると思います。
 日米安保や憲法九条のように、政治や世の中には、建前と本音があります。社会で言えば、建前は法律であろうと思います。社会人として生活する上でまず優先されなければならないルールです。そして、いくら法律の方がおかしくても、法律である以上、遵守すること、これが法治国家として国を運営していくための基本中の基本であることは、ソクラテスの故事を引用するまでもなく、言を待ちません。このところを曲げてしまっては、いくらその後に善の意志や、戦略上の意義があっても、これは法治国家、民主主義国家というシステムそのものを冒涜するものであると私は思うのです。
 そんなことを、石川議員の民主党離党のニュースを聞いて思いました。議員辞職はしないのになぜ民主党を離党するのか、私は意味がわかりません。議員辞職しないのであれば、民主党を離党する必要もない、と私は思います。起訴されたという事実が重いとか言う人もいますけど、罪もはっきりせず、無罪になる公算が大きい現段階で、(たぶん、世間が民主党に偏見をもつことを心配しているのでしょうけど)民主党を離党する、ということは、デタラメな捜査でも冤罪でも、検察に言いがかりをつけられたら、それだけで「なんとなく有罪」という、推定無罪という法律に対する違反を自ら認めることにならないのか、と思うのです。選挙を半年後に控えた今、次の参院選で民主党が勝つことがなにより大事であって、もしここで世論を軽んじて、負けてしまったら、日本の矛盾を正すことができない、そのためには、身を引いて民主党から離れるほうがよい、そういう判断なのでしょう。しかし、目的のために手段を選ばないようなことをすると、長期的にはマイナスであろう、と私は思うのです。
 どうして、鳩山氏も小沢氏も慰留しないのでしょうか。判断は本人がする、というのはその通りですけど、離党の理由が「選挙のため」という本音以外にないのであれば、離党を認めず、建前を通す方が大切です。鳩山氏や小沢氏が石川議員の離党に口を挟めば、新聞や自民党はまたないことないこと書いて叩きまくるでしょうけど、それを恐れて無理を通すならば、いずれ足下をすくわれると思います。
 石川氏の離党には「強い建前」が必要です。離党の声明を見ても、納得できるような建前はありません。それがないのであれば、離党は逆効果となり得ると思います。私は、すでに、このように世論や明らかにおかしい検察やマスコミの犯罪に正面から闘おうとせず、とりあえず選挙のために日和っておこう、という態度をとる政党は、立場が逆転した時に、今度は逆に、己を通すために弱者に対して違法行為を働くことをためらわなくなるのではないか、と心配になってきています。
 石川議員には、もっとはっきりとした離党の理由(党に迷惑というような理由でなく)を述べてもらって、それが民主主義と法治国家の精神に沿っていることを、納得できるように説明してもらいたい、私はそう思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする