高速増殖という極めて危険といわれている技術を使う原子力発電所のもんじゅが前回の放射線漏れ事故から運転停止15年を経て運転再開が決まった矢先に、早くも放射線検出器が作動して警報がなった、というニュース。日本経済新聞の記事を読む限り、警報は6日深夜から7日正午ごろまでにかけて(半日以上も断続的に)鳴り続けたことを報じています。経済産業省の原子力安全保安員も「まだ詳細は分からないが、検出器の故障」と推定したとのこと。原子力機構からの福井県への連絡は、なんと警報が鳴りだしてから12時間も経ってからとのこと。先が思いやられます。詳細は分からないのに検出器の故障と推定した、というところで、もうすでに危険度満載です。つまり、検出器がどうも3台あって、2台は異常がなかった、だから、(鳴っていた警報と繋がっていた)検出器を止めたのだそうです。この話は、車を運転していたら異音が聞こえてきたので、ラジオのボリュームを上げたという笑い話を思い出させます。事情がこれ以上書いていないので、分からないのですけど、この書き方だと、検出器は同じ場所に3台並べてつけてないと、こういう理屈にはならないと思うのです。(普通そんなことはしないでしょうけど)仮に、検出器が三つ並べてつけてあって、一台だけで警報が鳴っていたという状況だとして、この一台が故障しているという結論にはどういう理屈で至ったのでしょうか。警報の鳴った検出器が故障していて、鳴らなかった方が故障していない、ということがなぜ分かるでしょう。多数決ですかね。鳴らないことをもって故障していないと結論するのなら、最初から警報をつけている意味がないのではないのではないでしょうか。15年前のもんじゅの事故の際も、あまりに警報がうるさいので止めたところ、別の事故の発見が遅れて事故が拡大したのだそうです。警報は狼少年だとでも思っているのでしょうか。また、放射線漏れがない、という結論は、どういう証拠に基づいているのでしょう。だいたいそもそも運転開始直後から検出器が故障しているという時点でもうダメでしょう。一事が万事です。きっと、既に放射能も漏れていると覚悟しておいた方がよいと思います。
どうして、こんな危険なものを扱っている癖に、「検出器が故障していると推定し、詳細はわからないけど、運転は継続する」というような、都合の良い解釈と判断をするのでしょうか。こういう事故は推定有罪で臨まねばならないと思います。事故が起こってしまってからでは遅いのです。そのために警報があるのではないですか。一体、施設の安全規定はどういう条項になっているのでしょうか。検出器は3台あるから、警報がなったら多数決で決めればよい、とでも書いてあるのですか。
結局、15年も休止状態にあって老朽化しつつある上に、活断層の上に建っているような原子炉で、しかも極めて危険な技術を使い、原爆に使える純度のプルトニウムを年間、数十キログラムも産生するようなものの運転再開をするということは、純粋に発電目的とは思えません。(現在は試験段階で、実用化にあと40年かかるという話で、その間、年間100億という維持費がかかるそうです。事業仕分けで不必要と判断されたという話もききました。それだけで、「エネルギー資源に乏しい我が国で、原発の開発は重要、云々、、」という文科省大臣の言葉は詭弁に過ぎないと思います。使い物になるのに後40年かかるのなら、その間に日本の人口はどんどん減って、それほどエネルギーも要らなくなるのではないでしょうか。40年なくて済ませれるなら、あと数百年ぐらい、あるいは永久に無しですませられるのではないかと思います)
もんじゅでは、近いうちに大事故がおきる、おきない筈がないと思います。そうなってから、失われたものは金では買えないことをまた思い知らされることになるのです。
また、今に始まったことではないですけど、この新聞の報道の仕方をみても、マスコミの劣化は目を覆うばかりです。極めて危険な原子炉で、過去に放射線漏れ事故をおこし、そして事故情報を隠蔽しようとし、その事件を、動燃の総務部長の自殺(に見せかけた殺人らしいです)で幕引きしようとした、という前科があるもんじゅです。それが15年ぶりに運転再開した矢先に警報が鳴ったのに、報告は警報が鳴ってから半日以上も経ってからで、しかも、検出器の故障だろうと推定して、原子炉ではなく検出器の方を止めた、ということです。これを聞いて「危ない」と思わない人はいるのでしょうか。関係者にはセツメイセキニンを果たしてもらわなければなりません。
更に翌日8日には、冷却ナトリウムの温度が制御領域を超えて250度以上に達し、警報が鳴ったとのこと。これも「一時的」だから大丈夫と判断したらしいです。一時的なら大丈夫と判断してよいと作業規定に明記してあるのですかね。核の連鎖反応は一時的に臨界閾値を越えたら後は自動的に反応が進行してしまって止めようが無い類のものではないのでしょうか。この調子だと、毎日毎日、何か不都合が起き続けて、その都度、適当な言い訳でごまかしているうちに、取り返しのつかない事故が起こりそうな気がします。
そう言っていたら、9日には別の検出器で異常(本当に事故ではなく、検出器の故障なのでしょうね!)が見つかり、更に、排水処理設備の警報と冷却系タンクから出るガスの温度低下を示す警報が鳴ったとのこと。マスコミと原子力機構は相変わらず、「安全性に問題はない」と言い続けています。その結論は何に基づいているのか。説明してもらえないと、彼らは平気でウソついて反省することがないという連中ですから、国民は信じられません。
この際、新聞には、「もんじゅ、今日の警報」の欄を設けてもらって、天気予報の隣にでも載せたらどうでしょうかね。毎日毎日、警報が鳴って、それでも「安全性には問題はありません」という文句を聞かされていたら、さすがに興味のない人でも「おかしい」と思うようになるでしょう。
追記。翌10日には、制御棒挿入操作の人為的ミスが起こったとのこと。また、ニュースのよると、
6日に約14年ぶりに試験運転を再開して以来、運転管理情報に分類すべき軽微な警報でも随時公表してきたが(注、これはウソ、随時ではない)、かえって重大な警報との区別が付きにくくなるため、今後、直ちに公表するのは故障やトラブルに限定すると発表した。
本来、軽微か軽微でないかも含めて情報公開すべきものなのに、今後は、公表する情報にセンサーを入れると言っているわけです。これは極めて危険な思想であると思います。マスコミはこれについても、全く何の突っ込みも入れずに放置。警報がビービー毎日鳴っていても、これは軽微だから問題ない、と言われて信じていたら、取り返しのつかない大事故だった、というシナリオが目に見えます。その時になってからでは遅いと思います。