5月4日に鳩山氏、沖縄訪問。そのぶら下がりの記事での発言を読む限り、私には真意がまだ良くわかりません。三味線を弾いているのか、あるいは本音なのか。本音とすると沖縄と徳之島に普天間を分散するというしばらく前から言われている政府案を推すということでしょうが、それはどう考えてもあり得ない、というか、それでは一歩も先に進まないだろうと思うのです。「前政権は十年前にキャンプシュワブ埋め立てで合意しておきながら、辺野古の海に杭一本打てなかったではないか」と先の党首会談で逆襲した鳩山氏です、辺野古と徳之島という二つの地域に分ければ、計画が進むと思っているとはとても思えません。
私も含めネットの人々の多くは、これは、沖縄に出向いていって、「政府案」を提案しておおっぴらに反対されるというセレモニーを行うためにやるのだと思っていました。そのために五月のぎりぎりまで政府案を明らかにせず、沖縄訪問をわざと遅らせたのだ、という読みです。しかし、この会見の首相の言葉を聞くと、ひょっとして、徳之島、辺野古の併用案という「あり得ない選択」を本気で考えているのではないのかという不安を抱かずにはいられませんでした。本当はどうなのでしょうか。 鳩山氏、育ちが良くて、よくも悪くも善良そうなところがつい出てしまうようなところがあって、政治家として虚実使い分けての駆け引きが苦手なのではないかという私の偏見が、より不安をかきたてます。沖縄での言葉はどこまで本気なのか、芝居だとすると余りに真に迫りすぎているように思います。しかし、清濁相交わる政治の世界で長年暮らして来て、首相になった人ですから、敵のマスコミが言質を引き出してネガティブキャンペーンに利用するための会見で、本音をサラサラさらけ出すことはあり得ないでしょうし、育ちが良くて善良そうなのも、きっと芝居の内なのだろうと考えたいです。
ニュースでは、
首相はまず、沖縄県庁で仲井真知事と会談。「県外移設の実現を期待する声が高まっている。普天間飛行場の危険性の除去と、沖縄県の基地負担の軽減に取り組んでいただきたい」との知事の要請に対し、「現実に日米の同盟関係、近隣諸国との関係を考えた時に、抑止力という観点から(国外移設は)難しいという思いになった」と説明。 さらに「(普天間の機能の)すべてを県外にというのは現実問題として難しい。沖縄のみなさんにもまた、負担をお願いしないとならない」と県内移設に理解を求めた。そして、 「徳之島の皆様にも、普天間の移設に関してご協力願えないかという思いだ」と述べ、沖縄県内とともに徳之島を移設先として検討していることを初めて公に認めた。 しかし、 仲井真知事は首相との会談後、「私は(県内移設を)打診されたとは思っていない」との認識を記者団に表明。
とあります。
この知事の認識はどういうことなのでしょうか。「普天間の機能のすべてを県外に移すのが難しく、沖縄の皆さんにまた、負担をお願いしないとならない」という言葉が県内移設を指すのではないとしたら、何を指しているのでしょうか 。あるいは、知事は、隠された鳩山氏の「腹案」に気づいたのでしょうか。また、日刊スポーツの記事での沖縄県民との対話の様子は次のように書かれています。
だが、その一方で「最終的な政府の決定はされていない」と、あいまいな言葉もあり、女子高生の喜屋武誉(きゃん・ほまれ)さん(16)に「首相の姿 勢に具体的なものは何もない」と突き放された。終了後、国政(くにまさ)美恵さん(55)が首相に歩み寄り、SPに阻止される場面もあったが、メモ用紙に 「県内移設は認めない」という趣旨の手紙を書き渡し「信じていいか」と聞くと、首相はなぜかうなずいたという。 県外移設からの180度転換。7日には、一部移設を目指す鹿児島県徳之島の3町長と会談するが、こちらも拒否の見通し。1人迷走する鳩山首相だ が、「5月末までの決着を目指す考えに変わりない」と明言した。意地か、開き直りか。窮地に陥ってもまた1つ、自分でハードルを上げた。
「県内移設は認めない」という言葉に首相はうなずいたのなら、やはり「腹案」は国外ということなのではないか、と私は思いたいです。もしも、言葉通り、県内県外の分散移転が「腹案」だったのなら、鳩山氏には大失望です。そんなものを大層に「腹案」とは呼ばないでしょう。「最終的な政府の決定はまだされていない」という言葉が、おそらく、沖縄、徳之島での住民の大反対を根拠にして、一気に国外の線で政府案をまとめようという作戦なのではないか、と希望を持たせてくれるのですけど、どうでしょうか。
一方、共産党の市田書記局長は、先の憲法集会で正論をどうどうと述べています(赤旗:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-05-04/2010050404_01_1.html)。この辺が野党の強みとも言えます。 普天間問題は日米安保(日米同盟)の問題であり、基地が危険であるとか危険でないとかいうようなレベルの話ではないという(大手マスコミが報道しない)正論です。しかも、日米安保は自民党時代にコッソリ日米(軍事)同盟という、明らかに憲法違反の条約へと変化させられていたのです。即ち、日本に米軍基地があるのは、日本の安全保障のためであるという大義名分でさえ、既に書き換えられており、今や、「日本の米軍基地はアメリカの世界軍事戦略のためであり、日本はそれに協力する」という多くの国民がおそらくよく知らないような内容に変化しています。つまり、日本の米軍基地は、日本や日本人のためにあるのではなく、アメリカ国外にいるアメリカ人の安全を保証し、アメリカ軍の任務遂行のために存在しているということです。それに日本国民の巨額の税金が費やされ、沖縄県民が多大な犠牲を強いられているという理不尽な話です。
鳩山さん、おそらく、徳之島の町長たちとの会見のあとに、本音を出してくるのだろうと期待しているのですけど、どうでしょうか。この問題の核心は、アメリカのグアム移転にどれだけ日本が金を出せるか、ということです。金を積めばアメリカはサクサクとグアムに行くのは間違いありません。問題は如何にその60億ドルといわれる金に上積みすることなく、普天間ごと、グアムに引き取ってもらえるかということです。普天間は日本に数多くある米軍基地の一つにしか過ぎません。この基地がなくなったところで、米軍の機能にはほとんど何の支障もないというのが現実です。にも関わらず、自民党が基地移転を画策してきたのは、基地利権による一部の人間の利益のためです。辺野古に新しい基地を作るという話は、日本の方からそういってくれるのなら、アメリカとしても乗らない手はない、という調子だったのでしょう。そのツケを沖縄に人々がずっと被って来たのを見て、鳩山氏は、長年、官僚の言うままに自民党が沖縄に押し付けて来た理不尽な問題をひっくり返そうとしたわけです。アメリカは、折角のおいしい話を反故にしようとする鳩山氏からどれだけの「違約金」が取れるかという算盤をはじいているでしょう。もし、国外で交渉(即ち、普天間の閉鎖とその後の米軍基地の撤去)をやる気なのであれば、これは相当に困難であることは予想されます。鳩山氏がそこまで覚悟を決めて、汚れ役をやっているのだとしたら、鳩山氏のとれる手段は、思うに、「土下座作戦」しかないのではないかと想像するのです。無い袖は振れないわけですし。沖縄での反対、徳之島の大反対を誘導して、「基地の移転先は見つかりません、お金もありません、申し訳ありませんけど、とりあえず普天間は閉鎖してもらって、ついでに違約金はなしで、グアムに行って戴けませんか」とひたすら低姿勢で交渉し、脅しには、ひたすら頭を下げて聞こえないふりをする、そういう屈辱的な交渉法しか残っていないのではないか、そんな気がします。 しかし、今回の鳩山氏の抑止力がどうとかというナンセンスな言い訳を聞いていると、芝居ではなく、あるいは、本当に脅されて心変わりしたのかという疑いも残ります。 成り行きを見守るしかないのですけど、沖縄で述べたことが本当に鳩山氏の本音で「腹案」なのだとしたら、私にとっては、政権交代はとんだ茶番だったということという結論になりかねません。きっと民主党を支持している人々もこの普天間問題で、鳩山氏が国外を主張できないということになれば、鳩山政権はアメリカに懐柔された、つまり、自民党に成り下がったと解釈するでしょう。となると、自民党が壊滅状態の現在、一気に国民の政治不信が進むでしょう。そう流れれば、日本が独立した民主主義国家になることは当分起こりません。そして、アメリカの国力が落ちれば、今度は日本は中国の属国にでもされることでしょう。そんなことがわからぬ鳩山氏でも小沢氏でもないはずです。沖縄米軍が抑止力になっているなどというようなマヌケた言い訳を鳩山氏が口にしたということの解釈は二つあると思います。彼らがアメリカ側に寝返ったか、あるいは、アメリカとの交渉にむけて三文芝居を続けているか、です。
今は、徳之島訪問後に大逆転劇があることを信じたいと思います。