鳩山氏の腹案は、必ずしも海外ではないという話を小耳に挟みました。グアム、テニアンを考慮に入れてアメリカと交渉するのだろうと思っていたのですけど、その沖縄県外、国内の腹案とは、「自衛隊基地を米軍に解放する」という手なのだということでした。この案だと、基本的に基地の新設はなし、普天間の米軍も日本に留まることになって、とりあえずメンツは立つ(オバマは中間選挙前で、日本に対して弱腰をみせたくないらしいです)ということです。普天間の米軍は抵抗するでしょうけど、これは最も経済的で妥当な落としどころのような気がします。
本来、米軍にとって絶対的に必要でもない普天間が存在している理由は、米軍内部の縄張り争いなのだそうです。当初、岡田外相らが言っていた嘉手納基地への併合案というのは、合理的な案ではあるのですけど、嘉手納と普天間の間での米軍内の争いのために困難とのこと。ですので、その観点からは普天間の米軍を国内のどこかに移すというだけで、彼らの感情的な抵抗にあうことは予想されます。ならば、テニアンに新しく快適な基地を作るというのは、彼らにとってはおそらくベストに見えると思います。多分、既存の自衛隊基地に居候する形は彼らは喜ばないでしょう。
一方、ホワイトハウスはテニアンを含む北マリアナ州の知事を今月16日に招聘した様子。在日米軍のグアム移転への向けて、第一段階となるかも知れない普天間のテニアン移転の実現性について議論する予定のようです。アメリカ国防省の官僚組織の頭越しに、ホワイトハウスが、直接在日米軍と極東軍事戦略の問題へと乗り出したということでしょう。松田光世氏のツイッター情報のまた聞きでは、今月の日米実務者会議で、オバマ政権が日本に要求したいことは、グアム移転への費用の日本の負担増と緊急派遣部隊(米国人救出のため)の日本駐留なのだそうです。そのアメリカ側の要求をふまえての鳩山氏の驚きの「腹案」は、日本の自衛隊基地の米軍への解放というウルトラCなのだ、という筋です。週刊ポストは、より限定的に九州の自衛隊基地(宮崎の新田原基地、鹿児島県の鹿屋基地があげられています)に海兵隊を分散させ、ローテーションで沖縄に駐留させるという「総理試案の概要」という文書を手に入れたと報じています。果たして、その真偽のほどはどうでしょうか。
テニアンへの移行は沖縄住人側からベストでしょうけど、日本の立場からは、金がかかること、加えて、抑止力がどうとか、安全保障がどうとか、反鳩山派に攻撃の口実を与えることになります。テニアン移行は、アメリカ側からは、中間選挙を控えたオバマが「日本の基地を手放す」というニュースを嫌う可能性があり、加えて、金の問題を含む複数の問題をクリアしないといけないという障害が予想されます。一方、自衛隊基地の米軍への開放は、もっとも経済的で、沖縄県外という約束も守られますし、移動もおそらく簡単、アメリカ側にしてもメンツが保たれる、というワケです。この話が進めばサックリ五月末の普天間決着はとりあえず図られます。アメリカ側、日本側、沖縄側の三者にとって、ベストではなくても妥協できる線だと思います。もちろん、基地利権に関わっている日米の連中は気に入らないでしょう。もう一つ難があるとしたら普天間にいる米軍のエゴでしょうか。
しかし、これが本当の「腹案」だとすると、どうしてこの案がもっと早くに人の知るところにならなかったのか、と不思議に思います。あるいは、現実にはこの案には無理があるのかも知れません。ただし、交渉のカードにはなるでしょう。これが実現性のある話なら「腹案」と見栄を切っただけのことはあります。ただ、先日、マリアナ州知事とグアムの知事が鳩山氏に面会を求めたのにも関わらず、官邸側が拒否したとのニュースもあり、その辺のことが何を意味しているのか、ちょっと不安が残ります。鳩山氏は面会を希望していたらしいですけど、この面会が行われなかったのはどういう理由なのでしょうか。16日のマリアナ州知事のホワイトハウス訪問より前に、日本の首相が会うというのは確かにtrickyではありますから、控えたということなのでしょうか。
いずれにせよ、ホワイトハウスが直接動き出したということは、少なくともオバマ政権は、政権交代によって普天間問題に代表される日米安保が重要な外交上の問題になったと認識していることが伺えますし、彼らも真剣に落としどころを探るつもりになっていると想像されます。そうなら、沖縄基地問題とそれに続く日米安保、軍事同盟の問題は意外に急速に解決に向かって進む可能性もあると思います。
五月もあと二週間あまりとなりました。鳩山氏には最高の見せ場を演出してもらって、マスコミどもがアタフタするところを見たいものです。そう願ってはいるのですけど、本当のところ、鳩山氏は何を考えているのでしょうか。宇宙人の心は推し難いです。