百醜千拙草

何とかやっています

厳戒令の夜

2013-04-23 | Weblog
どうもボストンマラソン爆破事件の犯人はチェチェン出身のロシア人(チェチェン人)の若者の兄弟だったようです。(少なくとも、そう発表されています)チェチェンと言えば、ソ連時代から民族自決、独立をめぐって紛争が絶えないところです。以前に自分の書いたものを読み返してみると、ノーベル賞文学賞作家のソルジェニーチンの故郷(訂正、ソルジェニーチンはコーカサス地方ですが、チェチェンの西のロシア領内の生まれです)ということで取り上げています。コーカサス地方イコール紛争という構図は定着して長いです。そのチェチェン独立派はロシアに対してテロ行為を繰り返しており、その独立派は中東のイスラム系武装勢力と密接につながっています。

これぐらいの情報からは何とも言えませんが、この若者たちがイスラム系過激派の思想を受けついでいたというのは考えられることです。ただ、弟の方はマサチューセッツのケンブリッジの高校を卒業して、州立大学に進学ており、そのクラスメートによると普通の子供であったという話。19歳の子供が自分の頭で判断してテロ行為に加担したとは思えないので、射殺された26歳の兄やあるいは別の誰かに利用されたのではないだろうか、と想像します。中東のイスラム過激派とパクトを組んでいたチェチェン独立派がお互いの活動を支援しあう、ということはあり得ることだと思います。プロファイリングされていて活動しにくいアラブ系イスラム過激派が、マークの薄い白人のこの兄弟を使ってやらせたのかも知れません。

解せないのは木曜日の夜から起こった一連の事件の流れです。最初の方の情報では、この兄弟はマサチューセッツ、ケンブリッジにあるMIT付近で、コンビニで強盗を働き、MIT警備をする警察官を射殺し、そのパトカーを奪い、更に、ベンツをカージャックして逃亡、ケンブリッジ西の隣町、ウォータータウンで警察と銃撃戦となり、兄の方が射殺され、弟はその倒れた兄の死体の上を車で乗り越えて逃走という、異常な展開だったようです。その後、マサチューセッツ州知事が、容疑者の逃亡を防ぐために、厳戒令(?)を発令し、ボストンを含むウォータータウン周辺の街での一般人の外出、車の運転が禁止されました。ボストンの街はゴーストタウンと化し、一方、ウォータータウンでは投入された大人数の警官が住宅地の一軒一軒をしらみつぶしに犯人を探して回るという緊張した一日となりました。ほぼ丸一日かかって、住民が一般住宅の庭に置いてあったモーターボート付近に血の跡があることを見つけて警察に通報、結果、そのボート内に隠れていたところを発見され、さらに銃撃戦となった後、捕獲された、という話です。

この一連の事件がすべて、この兄弟がやったことならば、その異常さに驚きます。この捕獲された弟の容疑者から、情報が出てくれば、もうちょっと事情が分かるのでしょうが、重症で喉を撃たれて会話ができない状況であるとのことです。(兄は殺され、弟は喋れない、何となく怪しさを感じますね)そもそもこの兄弟、十年も前の子供のころにアメリカに移住してきており、無差別テロに自ら加担する動機がよくわかりません。彼らがチェチェン人でイスラム系過激派との繋がっている可能性ある、それだけでしょうか。弟の方は、子供のときからアメリカの社会で育ち、医学専攻の大学生であって、昨年にはアメリカ市民権を獲得しています。中高時代の友人も、普通に社交的な子供であって異常な所はなかったと言っており、現在ロシアにいる両親は、この子供たちは犯人ではなく誰かに仕立て上げられたに違いないと語っています。また、兄の方も三歳の子供をもつ家庭の主人であったという話を聞きました。そんな背景で、確実に自分や家族の将来を破壊することが分かっているような行為をするだろうか、と不審に思います。一方で、かつての日本の大学紛争のころの学生活動家の行為や、オウムの無差別殺人事件を思い浮かべると、二十歳そこそこの若者が思い込んで、視野狭窄となって突っ走ってしまうことはあり得ることだとも思います。

事実、殺された兄の方はイスラム過激派に思想的に傾倒していた可能性が強いようで、2011にFBIがとある国(明らかにされていませんがロシアのようです)の要請に従って、兄の方を調べた記録があるそうです。その要請国の情報によれば、兄の方はイスラム過激派のフォロアーで2010年にある地下組織に参加しようとしたのだそうですが、当時、FBIはテロ活動の証拠を見つけることができなかったので、そのままになっていたということです。また、この兄弟の育ちを見てみると、イスラム圏のキルギスのチェチェン人村に育ち、その後アメリカに移住する前にロシアのDagestanに移動しています。この場所もイスラム系反政府運動の強い場所だったそうです。とすると、親も知らないうちにこの兄弟はイスラム系過激派の影響を子供のうちに受けていたのかも知れません。もう一つは、兄の方はどうもアメリカ市民権を取ろうとしたが取れなかったという過去があったようです。弟の方は昨年にアメリカ市民となっていますから、市民権を申請したのは最近のことなのではないかと思います。ひょっとしたらロシア?のFBIへ要請記録が引っかかったのかも知れません。となると、それを機に、思想的動機に加えて、アメリカに対する兄の個人的な恨みもあったという可能性もあるかも知れません。

いずれにせよ、一般市民を狙う無差別テロが何らかの有意義な結果を産み出すことはありません。極論すればテロ行為は、己の復讐心に「正義」とラベルを貼ったウサばらしにしか過ぎません。ウサを晴らすために無関係の市民を殺傷し、自分とその家族の生活を破壊し、憎しみを増やすだけの愚かな行為です。
そして、テロリストを己の利益のために、計算ずくで利用する人間もいます。そういう者たちが最も罪が深いのは言うまでもありません。
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