百醜千拙草

何とかやっています

着陸態勢

2013-08-02 | Weblog
ポスドク用グラント審査会が終わりました。施設内のレビューアが約10人ほど集まりましたが、臨床、基礎、エンジニアリングと全然バックグラウンドの違う人々が独自に殆ど門外漢の分野の応募を審査したにかかわらず、だいたい評価が一致していたのが面白いです。よいグラントは誰が読んでもよいということですね。トップ3位は私が選んだトップ3と一致しました。その三人は検討しないことになり、あと、下位の人で推薦したい人、中位の人でボーダーラインの人を中心に意見交換し、合計25人のファイナリストの中で10名、補欠2人を選びました。その中で、私が比較的高い評価をつけた二人は、研究計画は面白いと皆が思ったようですが、一人はポスドク歴が長過ぎる、一人は論文出版数が少な過ぎるという理由で、選ばれませんでした。ポスドク歴の長い人は、3年間をど別大学の教官職にあったのにポスドクに戻ったという点が結構マイナス評価を受けた理由でした。この小さなグラントのサポートがこの人のキャリアの発展に役立つか疑問だということで、つまり、もっと若くて勢いのある人に投資しようということです。ま、グラントの主旨がそうですから、仕方ありませんが、この厳しい研究業界で、それなりに経験を積んだ人が報われないのは気の毒です。審査会の帰りに同年代の別の審査員の人と雑談しました。一年先は闇、私と似た境遇です。きびしい研究環境はやはりストレスが溜まりますが、そのストレスの中で如何に平常心を保つか、というあたりが修行なのでしょう。

そういえば、私の分野でこの十年世界的にも勢いのあった先生が研究をやめて臨床系の病院に移るというウワサを聞きました。基礎的研究ではかなり光っていて、アメリカの研究室からのオファーは多々あったようですが、日本を離れることができないという理由なのだそうです。二年前にはアメリカの学会でも大きな賞を授賞され、これからこの分野をひっぱっていくリーダーと思っていただけに、残念なことです。

働き盛りの研究者の先輩方が、思わぬことで研究の世界を去って行く話をポツポツ聞くようになりました。歯はぽつぽつ抜けるのに、新しい歯は生えてこない、そんな寂しさを感じます。ひょっとしたら、資本主義経済で経済大国化できたが故に発達した科学研究もそろそろ限界に近づきつつあるのかなと思ったりします。科学だけが世界を理解するための方法ではありません。科学の発展が人類にもたらしたものと奪ったものを秤にかけたら、ドッコイドッコイではないか、原発事故やヨーロッパでのモンサントの遺伝子組み換え作物反対運動を見ていて思いました。できたら、将来私も自給自足の生活をしたいと望んでいますが、その時に畑に撒く種はモンサント製であって欲しくはありませんし、畑の土が放射能でピーピー鳴っていたりして欲しくありません。

そんなこんなで、いつまでもポスドク気分の私も、人生の終わり向かってどんな風に着陸態勢に入るかというようなことを考え出す年になりました。これまでやってきたことと違うことにも少しずつ目を向ける時期にきているのかも知れません。ただ、実験室の人のことや家族のことを考えるとあと十年はがんばりたいとは思うのですが。

最後に、アホウ氏が久しぶりに大チョンボの発言をして、世間をさわがせたというニュースを聞きました。

麻生太郎副総理兼財務相が29日、東京都内で憲法改正に関し「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうか」と講演していた問題で、ユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・米ロサンゼルス)は30日、「一体どんな手口をナチスから学べると言うのか」と題した抗議声明を発表し、麻生太郎副総理がすぐに発言の真意を明確に説明するよう求めた。


ま、選挙も終わったしアベ氏をそろそろ降ろしにかかろうと思っているのかも知れませんが、これでは自爆テロですね。

ちょっと〆切のある仕事とか実験とか家庭の事情とかで何かと忙しいので、今日はこれ以上文句をいうのは止めておきます。それよりも、先週末から、各地の放射線量が上がっていたのが心配です。
コメント
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