百醜千拙草

何とかやっています

これからの研究

2019-08-20 | Weblog
知り合いに頼まれて、学位審査会の学外学位審査員の準備を始めました。審査会では、関連する研究の分野の概説を20分ほどするように言われたので、スライドを作り始めました。
 振り返れば、今では縮小しつつあるこの分野も20年-10年前ぐらいは大変刺激的な発見が続出した時期でした。今では教科書に載っているような発見が毎月のように身の回りで起こっていたのだなあ、と思います。当時にその実感はあまりなく、そういうものだと思っていました。今、思えば、すごいことであったとつくづく思います。当時、それらの重要な発見の場の近所にいたのに、私はただの傍観者であって、ほぼそれらの発見になんの寄与もしていないというのが、多少残念ではあります。
 世界の有名研究者の研究系譜をたどっていくと数えるほどの研究祖先に収束するのだそうです。つまり、重要な研究の系統が、全く、なんの土壌もない所に起こることは少なく、そうした「血筋」が重要だということです。多分、コツとか秘伝の技術とか、なにかそんなものがあって、そういうところに優秀な人々が集まったということでしょう。情報時代となり、全てがキット化されつつある現在では、このことはだんだん変わってくるとは思います。
 現に、うちの分野は10年ぐらいまでは、マウスの遺伝子改変技術を駆使できる研究室がリードしてきたと言えます。20-30年ぐらい前までは、ES細胞を用いて遺伝子改変を行うことができるシステムを持つ研究室は限られており、そのシステムを持つ研究室がアドバンテージを持っていました。しかし、今では、そうした技術が特殊なものでなくなり、新しい遺伝子編集技術の開発もあり、そのアドバンテージはなくなりました。
 それでも研究者は、希少価値のある研究システムにいち早く飛びつくことで優位性を保とうとはしていますが、もやは、こうしたアプローチでアドバンテージを取るのは難しくなり、百家争鳴の戦国時代となりつつあります。純粋に学問的には喜ばしいことですが、競争がつきものの研究者当事者としては、先の読めない難しい時代でもあります。
 私といえば、世の流行や先を読むことの疎さにかけては自信があります。読みが当たった試しがありません。だからと言ってインデックスファンドに定期的に投資をするというのでは確実に廃業ですし、どうしたものでしょうね。
コメント
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