百醜千拙草

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2022-10-07 | Weblog
ノーベル化学賞はClick chemistryでした。
正直、ん?という感じ。確かに有用な技術開発ではありましたけど、ウチの分野、生物学研究への応用という点では、例えば、過去のGFPの発見ほどのインパクトはないように思います。あるいは、医学生物以外での化学の分野でのインパクトはもっと大きいのかも知れません。まだ多少の時間がかかるでしょうが、この技術が将来に疾患治療などへ応用されることも期待され、それが実現されるとその意義は広く認識されることになるのでしょう。

昨年のPiezoを思い出してみても(何らかの裏事情があったとの噂もありますが)、ノーベル賞は少しずつ発見のインパクトが小粒になっているような気もします。これは、学問分野の細分化、専門化が進んで、ユニバーサルに大きなインパクトを持つ発見というものが相対的に少なくなったからでしょうか。あるいは私の無知ゆえなのかも知れません。

単にテクノロジー開発という点で見れば、20年前の遺伝子の大量並行シークエンシング技術の開発は、非常に大きなインパクトがありましたし、8年前のシングルセル シークエンス技術の開発も現在の生物学研究に大きな影響を与えています。シングルセル技術といえば、数十年前に開発されたフローサイトメトリーのインパクトも非常に大きいです。ただし、こうした技術的イノベーションというのは、何らかのブレークスルーを起こした「発見」の組み合わせによって生まれるもので、そこにオリジナルな発見があるかどうかがノーベル賞の基準になっているのかも知れません。無論、ノーベル賞受賞の条件が生存者のみ三名までという制約も受賞対象研究を限定することになっているでしょう。

インパクトという点では、「RNAワクチン」は、発見とかアイデアのオリジナリティーの点でちょっと難がありますけど、少なくとも社会における影響は非常に大きかったので、今後、RNAワクチンがその他の感染症やがんへの免疫療法に広く使われていくことになれば、将来的にはノーベル賞になる可能性は高いのではないかと思います。

さて、ノーベル文学賞も先ほど発表がありました。フランス人作家Annie Ernauxが受賞とのこと。思えば最近のノーベル賞作家で私が知っているのは、ボブ ディランぐらいですね。文学賞と言えば、村上春樹が毎年名前に上がりますし、作品は外国で広く読まれているのでインパクトは十分と思うのですが、来年はどうでしょう?
相性というのがあるのでしょうけど、残念ながら私は村上春樹の良さが理解できず、読んでいていても途中で「ムリ」と感じてしまうレベル。サリンジャーとかは今読んでも楽しめるので、村上春樹もイケてもいいような気がするのですけど、何ででしょう。どうも、私は村上春樹とはクリックせず、ケミストリーも感じないようです。

しかし、彼が大勢の外国のファンを通じて日本のイメージを上げてくれることで、日本人の私も彼のおかげを被っているとも言えます。受賞する日がくれば、素直にうれしく感じるだろうと思います。
コメント
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