百醜千拙草

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US大統領とイスラエル政策

2025-01-21 | Weblog
トランプ就任にあわせてのハマスとイスラエルの6週間の停戦合意。しかし期間限定で停戦することにあまり意味はありません。6週後にはまたジェノサイドが再開するということです。しかも、今回の停戦合意の条件は2023年12月の停戦協議時と同じ条件。ネタニヤフが言葉通りに人質奪還を最優先と考えているのなら、一年以上前に人質は解放されていたのです。そして、わざわざ一年、人質の解放を遅らせて、この邪悪な男がやったことは筆舌に尽くし難い。総計20万人近くと見積もられるガザのパレスティナ人が殺され、その何倍もの人々が兵糧攻めにあい、ガザに住むほとんどの人が住処や財産を失って、行く先のない難民となりました。そして、今回、停戦合意がなされた後もイスラエルはガザを攻撃し、発効までの間に100人以上のパレスティナ人を殺し、発効後でさえも子供が殺されました。

これまでも停戦合意は停戦と人質交換、その後にガザの人道的支援と再建というのがセットになっていましたが、イスラエルは、人質交換が終わった後の合意を履行しようとしたためしが有りません。根っからの嘘つきでサイコパスのネタニヤフとそれを支持するシオニスト、彼らに人間性や正直さを期待する方が無理なのでしょうが。

しかしながら、今回の停戦に関しては多少、事情が違うかも知れません。トランプは従来の政治とのしがらみは薄く、しかも、これが最後の任期です。失うものはなく、彼のレガシーを作る最後の期間です。中東和平の実現をそのレガシー作りに考えてもいるでしょう。CIAやMosadによる暗殺を恐れなければや、ひょっとしたらやってくれるかも知れません。(ま、期待はできませんが)

イスラエルはアメリカ大統領が変わる節目には停戦をしてきました。2009年の停戦の際は、イスラエルは「オバマの就任までに、イスラエル軍はガザから撤退する」と述べています。つまり、アメリカの新大統領の就任時は、多少の配慮をしているということです。実際には、2009年の停戦はオバマの要求に応えたものだと考えられています。今回はトランプが要求したのでしょう。

しかし、そのオバマ政権が終了する直前の2017年の総括的記事では、こうあります。

、、、オバマ大統領がネタニヤフ首相を嫌っていることはよく知られているが、あまり知られていないのは、オバマの個人的なネタニヤフ首相に対する反感と、ユダヤ国家の福祉と安全保障に対するコミットメントが共存していることだ。
 オバマ大統領は、ハリー・S・トルーマン以来、最も親イスラエル的なアメリカ大統領の一人である。オバマは前任者の誰よりも多額の資金と武器をイスラエルに与えている。、、、イスラエルへの餞別は、今後10年間で380億ドルという途方もない軍事援助だった。、、、

そして、トランプもまた、2017年の就任後、ウエストバンクへのイスラエルの違法入植禁止の国連決議に反対し、イスラエルはウエストバンクへの違法入植を加速させていきます。しかし、イスラエルへの惜しみない支援と裏腹に、トランプもネタニヤフを無条件で支持しているわけではなく、今回のイスラエルのジェノサイドが始まった時には、大統領選予備選でネタニヤフを非難しています。また、先日は、紹介した通り、ネタニヤフを非難するJeffrey Sachsの動画をツイートさえしています。そして、バイデンもまた、イスラエルをこれだけ支持し、「ジェノサイド ジョー」とさえ呼ばれているにも関わらず、昨年、ネタニヤフを公けに批判しました。

つまり、歴代の大統領は、全員、ネタニヤフを嫌っているのに、なぜかイスラエルには多大な支援をしてきているわけです。思うに、これはAIPACなどのアメリカ国内のシオニスト勢力が、彼らの政治生命を握っている、ということなのでしょう。事実、450人ほどいるアメリカ下院議会で、AIPACの息がかかっていない議員は100人ほどしかいません。
しかし、上で触れたようにトランプに関しては、これまでの大統領とは多少、事情が違うと思います。そこに一縷の望みがあるわけですが。

それにしても、過去のニュース記事を見ていると、イスラエルは、パレスティナに対して、人権蹂躙、迫害、市民の殺害、アパルタイトとずっと今日と同じことをやってきて、同じウソをつき続け、短期の停戦は一時のガス抜きにしか過ぎず、「パレスティナを殲滅する」という彼らの狂った執念は常に一貫している、との認識を新たにさせられます。

イスラエルがシリアの崩壊に乗じてシリアへの爆撃を始め、ロシアがシリアから撤退したその裏で、プーチンは着々とアメリカなしで成り立つ安全な世界の構築を進めています。BRICSは今やコア メンバーが10カ国となり、パートナー国、加盟申請国などを合わせるとG7関連国を凌駕する経済圏となりました。そして、安全保障面でも、先週、ロシアはイランと二十年にわたる戦略的パートナーシップに調印。これでロシア北部とインドはイランを通じて陸路で結ばれることになります。また、これは、イランを最終の敵と考えているイスラエルが、アメリカを引き込んでイラン戦争を仕掛けようとする動きを大きく牽制することになるでしょう。しかも、「中東平和実現」を公約にしているトランプが就任しました。本来なら、アメリカはイスラエルを切り捨てる良い機会だし、それが直接パレスティナ問題の解決に繋がるのですけど、トランプがどう動くかが中東の未来を決めることになります。遠からず、ネタニヤフはイスラエル政府から去るでしょうし、アメリカは凋落して国外の紛争に関わっている余裕はなくなるとは思いますが。
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