百醜千拙草

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黒川事件

2020-05-22 | Weblog
「黒川事件」、後世、Wikipediaにはそう書かれるようになるかも知れません。この数週間、目まぐるしいぐらい数々のことが起こりました。これをどう捉えるべきなのか、今日の時点でははっきり私にはわかりませんが、点と点をつないでいくとアベ政権の今後のトラジェクトリーが浮かび上がってくるような気がします。

数年前、森友それから加計で、アベは詰んだと思い、私はようやく、この腐った政権が終わるのだと感じました。かつての自民党なら、森友一発でアベは退場だったでしょう。しかし、野党が弱いこと、それから報復と褒賞人事で対抗勢力が抑えられた自民党のアベ降し失敗などで、アベ一味はますます増長し、一味の利益のために、法をねじ曲げ、都合が悪くなると閣議決定の上で強行採決する、という無法政治を作り上げ、現在の惨状を招くに至りました。

しかし、何事にも始めがあれば終わりがあるものです。数にまかせてやりたい放題してきたアベ一味も、そもそもが利害で結びついただけの粘菌状の塊に過ぎず、我が身が危ないと思えば、泥舟を見捨てもするし、寝返りもする、だんだんとボロや綻びがでて然るべくして終わりを迎えることになります。

モリカケを乗り切ったアベでも、さすがに「桜」は逮捕案件、検察を抱き込み続ける必要がありました。それが、黒川氏の無理な違法定年延長につながりました。これは、これまでの政府の見解を覆す異常で違法な決定でありながら、決済文書もなく、定年延長の理由もマトモに答えられない、ということで、森法務大臣は、国会とメディアで叩かれまくることになりました。加えて、河井元大臣夫妻の贈賄が発覚し、逮捕が噂されるようになりました。その資金にアベ事務所が直接関与していることから、この件で河井元大臣夫妻の逮捕となると、大臣の任命責任のみならず、アベ本人も直接の責任を問われるであろうという事態になりました。この大臣の不祥事は、過去に黒川氏によって握り潰された過去の複数の自民党議員の贈収賄事件をむし返すことになり、ネットで、黒川氏の定年延長の違法性に加えて、定年延長を受け入れた黒川氏本人への反感も一気に吹き出しました。更に、コロナ対策で失策につぐ失策を重ねたアベ政権への不満あって、政権の支持率は一挙に三割まで低下。

黒川氏を続投させ、検事総長につかせて、政権の不祥事を葬りたいアベ一味は、公務員の定年延長制度改革法案に検事の定年延長をコッソリ忍びこませて、黒川氏の定年延長を合法化した上で先々の検察人事を官邸が牛耳ようとしました。しかし、そもそも検察の定年は特別法であり、一般公務員人事法より優先するものです。そんなものを、コッソリ一般法にまぎれさせて通そうとするような姑息なやり方は、多くの人々の怒りを呼び、700万ツイートともいわれるツイッターデモにつながりました。当初、法務大臣を出席させずにサラッと強行採決の予定であったアベ一味でしたが、15日の国会審議では、議事堂前のデモの反対の声が議会内まで響わたるような状況となりました。野党の不信任案提出で、戦いは週明けに持ち越し。この時点では、不信任案の否認と提出の攻防の末に一週間後に強行採決という読みが大勢を占めていました。

そして週明け、止むを得ず、森法務大臣を答弁に立たせた与党、予想通り、マトモな答弁もできず、サンドバッグ状態。この様子が広く拡散された結果なのか、支持率の急低下のせいなのか、アベは法案を議題から取り下げることになりました。この時点でアレっと思いましたが、とりあえずは黒川氏の検事総長就任が目的だろうから、ここで無理をしない方がよいと判断したのだろうと私は思いました。

そして、文春砲が炸裂。麻雀好きの黒川氏が、コロナの外出自粛の中、産経新聞記者らと賭け麻雀をやっていたというスクープ。ネタはどうも産経内部からのタレコミらしいという辺が、想像力をかきたてます。 結果、法務省の聞き取りに黒川氏は賭け麻雀の事実を認め、辞意を表明。

賭け麻雀は天下の御法度、法を取締る立場の人間としては非常にまずい。しかし、黒川氏本人は、不幸中の幸いと思っているかもしれません。思うに、このまま違法な定年延長の挙句に検事総長になったのでは、せっかくの名誉も地位も居心地の悪いものになるのは間違いないでしょう。森友の時に公文書を改竄し、国会で偽証してまで、アベを守り、その褒美として国税庁長官という地位につきながらも、人目を恐れる日陰の身に疲れはて、数ヶ月で辞任を選んだ佐川君は、黒川氏の目には明日の我が身に映ったのではないでしょうか。アベの悪事に手を貸した、己が因果が身に報い、役満を目前に大チョンボ、同情しませんが、そもそもイカサマ博打なら、そのツケはきっちり払え、との国民の声。

バルカン半島の小さな街でのサラエボ事件があっという間にドミノ倒しのように第一次世界大戦にまで発展したのは、事件そのものよりも、その裏にあった国家間の確執が、事件をきっかけに表出したからだと考えられます。そういう意味で、一検事長の定年延長という一見小さく見える事件は、モリカケ、桜、をはじめとするアベの悪事の数々、アベ政権の売国政策と棄民政策、経済対策や危機対応への限りない無能さ、などなどに積りに積もった人々の不満を爆発させる点火剤となったのではないかと思います。今後、この爆発が一時的なもので消し止められるのか、あるいは「黒川チョンボ事件」として後世に残る事件になるのか、まだわかりませんが、これは今後の政権の行方を十二分に示唆している事件だと感じます。

つまり、アベ一味、コロナをきっかけに始まったダッチロールで、急激に墜落へと向かっているように見えます。河井夫妻の贈賄事件、黒川氏の辞任、描いていた予定が外れ始めました。となると、アベ一味の利に聡いものは泥舟から逃げ出そうとし、政敵はこれを機会に反撃に出るようになるでしょう。仲間と思っていた維新や公明党も距離を置き始める、となると一気にダウンヒルを転がる石となるかも知れません。さすがにそうなる前にアベも観念して辞めるでしょうけども。
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