平野奈津(ひらの・なつ)さんは私のFacebook友達で、「cafe DRINK DRANK(カフェ・ドリンク ドランク)」(奈良市橋本町8)のオーナー&店長さんである。Facebookの「自己紹介」によると《学生時代に稼いだアルバイト代全てを使って日本・海外のカフェ巡りをする。その時出会ったイギリスのカフェを見て、将来自分の店を出すと決断する。大学在籍中、フレンチのシェフのもとで修業。屋台、創作料理屋でアルバイトし、大学卒業後、イタリアンとデリカテッセンの店で修業を積む》。
※写真のほとんどは、1/16~17に撮影したもの
《デリカテッセンの店でアメリカ発祥の『スムージー』に出会いその魅力に取り憑かれ、スムージーの研究を始める。1999年 DRINK DRANKを立ち上げ 独立。その後、2人の子供を育てながら12年間現場で開発・育成・運営に携わる。2009年 野菜ソムリエ取得。2011年 コーチングラボSCP認定プロコーチ取得 現在ライフセラピストとして女性の生き方や仕事を応援する自立を目指す女性集団『育女倶楽部』の代表メンバー。その中で商品開・イベント企画をする》。

女優の藤林美沙さんは、彼女の実の妹である。藤林さんは今年、岸谷五朗作・演出の「海盗セブン」に出演される。なお「スムージー」とは、あまりお聞き覚えがないだろうが、マックシェイクのようなフローズンドリンクである。Wikipediaによると《凍らせた果物、又は野菜等を使った、シャーベット状の飲み物。クラッシュドアイス(砕いた氷)を使用したフローズンドリンクやフローズンカクテル、やわらかいアイス状のシェイクなどにも似ているが、こちらは材料そのものを凍らせて使用する》。私がいただいた「特選フルーツミックス スムージー」にはオレンジ、リンゴ、バナナ、パインなどが入っていて、果物の美味しさが凝縮していた。今その味を思い出し、有田みかんをパクつきながら、これを書いている。


平野さんは、とても36歳には見えない若々しくてキュートな女性であるが、ここに至るまでには、永らく苦悩の日々を過ごされてきた。彼女のHPの「私の軌跡と思い」によると《1999年、奈良で24席のカフェを家族で開業するも、5年後、夫の仕事の都合で大阪へ引っ越しすることになり、そこから私の苦悩の日々がはじまります。2歳になる子供を大阪の保育園に預け、奈良の職場まで通う生活。慣れない育児と仕事の両立はやがて限界まで達し、育児家事7割、仕事3割の専業主婦に近い状態での生活が始まった。慣れない地域での生活、初めての育児体験。社会からどんどん隔離されていくような錯覚と不安…》。

《日々重ねていくストレスに夫が見かね、再び奈良に戻ることになるものの、やはり幼い子どもを抱えての育児と仕事の両立はなかなか自分の満足には至らず、愛する子供でさえ、私自身の生活を阻害しているような気分に陥り始めていたのです。毎日が自由になりたいという自分と、それが出来ないのを人のせいにしている自分に対する嫌悪感との葛藤の日々でした。そんな生活を送りながらも、ある時、大きな転機が訪れます》。

《家族と経営しているカフェのリノベーションを全面的にまかされることになったのです。試行錯誤しながらも、必死に向かった売り上げを3倍に伸ばし何とか成功。それが、失いつつあった自信というものを取り戻すきっかけとなりました。そんな中2人目女児誕生。今度こそ、「小さな子供がいても、仕事とプライベートを充実させてやる」 以前とは全く考えが変わっている自分に気付いた瞬間でした》。

《その後、自分自信の経験から、同じように苦しんでいる女性のチカラになれないか? と思いはじめ、親友の森田と外出先でもオシャレに使うことができる授乳エプロンを作ろうと思い立つ。私たちのように「むずむずしている女性のために販売しよう!」そこから布切れ1枚を試行錯誤して、何度も試作を重ね、足で京都・大阪・滋賀を回り 何とか100枚制作し、自作のホームページで販売したところ、私たちの想いの通じた日本中のママから少しながら注文が入ったのです。嬉しくて2人で喜んだのを、今でも時折思い出し、胸が熱くなります》。

平野さんは従来の「授乳服」の欠点を克服したアイデア商品「授乳ロープ」を開発・販売するに至る。授乳ローブは、奈良新聞(10.6.23付)で《育児衣料品で起業 経験生かし「授乳ローブ」開発》として大きく紹介された。
奈良市内で働く母親2人が新たに、育児中の女性向けの衣料品を扱う会社「トゥーネストカンパニー」(同市)を起業した。育児経験を基に開発した第1弾の商品は、授乳時のストレスを軽減できる「授乳ローブ」。高い機能性とファッション性を兼備し「母乳で育児に取り組む母親が人目を気にせず自由に外出できる」優れもの。賛同者の支持を得て、育児女性の自立を支える「社会起業家」として船出した。

「授乳負担の軽減を」 同社代表を務めるのは飲食店店長の平野奈津さん(34)と、団体職員の森田夕夏さん(36)。平野さんは「古くて恥ずかしい」母乳のイメージから長男(9)を粉ミルクで育てたが、長女(3)の出産後はゆとりができ、母乳育児に挑戦。授乳前の煩雑な準備から開放されたほか、経済的余裕も生まれ「母乳の魅力を実感した」。外出の機会が増える一方、授乳時に視線を浴びたり会話が中断されたりするため、トイレに隠れて母乳を与えることもしばしば。「個人の自由が奪われる強いストレスを感じていた」。
授乳ストレスを軽減しようと模索する中で見つけたのが海外製の授乳カバー。購入して着用を始めると、少し気持ちが安らいだ。ただ、使いやすさやデザインなどに課題が山積しており、理想とかけ離れていた。母乳育児を断念した経験のある友人の森田さんと子育てへの思いを語るうち「育児女性が輝ける衣料をつくろう」と意気投合。一昨年からアイデアを温め今年4月、貯金を50万円づつ取り崩して同社を立ち上げた。

「授乳ローブ開発へ」 この間既存の授乳服やカバーの課題を研究。趣旨に賛同する中小企業診断士や家族のサポートを得て順調に製品化を進めたが、最終の縫製段階でつまずく。森田さんは「50社に加工を依頼したが生産量が少なく主婦の遊びと思われた」と振り返る。2人の思いをくんだのは滋賀県東近江市の衣料品製造会社。北川恭司社長は「不況下の繊維業界に挑む2人の熱意に同業者として胸を打たれた」と製造を快諾。「課題は多いが製品に込められた思いが1人でも多くの人に伝われば、商品の価値が理解されるはず」とエールを送る。
授乳ローブは今年2月に完成。袖下のホックをとめて腕を仕舞い込めば人目を気にせず授乳ができ、胸元の切り込みから子どもの様子も伺える。母親に安らぎを与える意味を込め「ドゥース(おだやかな)ローブ」と名づけた。普段の着まわしも袖口から腕を出せばノースリーブ、袖口下とホックの間から腕を出せばポンチョと、おしゃれ着に変身する。生地は国産の麻とレーヨンを半分づつ使い、通気性となめらかな肌触りを実現。構造は意匠登録中という。

平野さんと森田さんは「乳児と向き合う母親は孤独になりがち。ローブを着ることで外出の機会を増やし、自分らしく子育てを楽しんでほしい」と話す。初回生産は100着で価格は1万5750円。色は4色。購入はウェブショップ(ドゥースローブ)か中野さんが勤務するカフェ・ドリンクドランク(同市)で。また、育児女性の生活支援活動「育女倶楽部」の中で、同社の商品提案や食育などを行う。問い合わせはドゥースローブ、電話0742(22)3577。

チキンのシービャンカレー
平野さんのHPに戻る。《それからというもの、どんどん自己表現の欲求が加速し、野菜ソムリエの資格をとることを決断。子供が寝静まる早朝に勉強する日々を重ねた結果、ジュニアマイスターに合格。その後、ハードルは高く、絶対不可能だと思っていたマイスター取得にも挑戦。ソムリエの学校の仲間と勉強会を重ね、苦しみも喜びも共有できる仲間ができた。2009年、野菜ソムリエ資格取得》。

エビとアボカドの香味野菜ごはん
《カフェの店長・野菜ソムリエ、そして2児の母である私は次のステージにいくために、その翌年、プロコーチの習得を目指し京都の養成講座に通う事を決断研修期間中は、あまりにもハードなスケジュールとカフェ運営、子育てで2度も気づかぬうちに肺炎に…》。コーチ(コーチング)とは、《一方的に教え込む「ティーチング」(自分の経験や知識を相手に伝える)とは違い、「コーチング」は対話を重視し、相手の自発的な行動を促すコミュニケーションの技術》である(当ブログ「コーチングとは」)。

平野さんのHP。《そんな生活は夫に心配と多大なストレスを与えていたのでした。「家庭を守れないんだったら、辞めてしまえ!コーチの資格なんてない!」 ストレスが絶頂に達した夫からの一言で、再び余裕のない自分になっていることに気づかされた瞬間でした。「そうだ、私は1人じゃない。両親、夫、ずっとついてきてくれたスタッフ、いつも励ましてくれた友達、いつも私に愛情を注いでくれている子供達。自立とは一人で生きることではないんだ…」 それを気づかせてくれ、受け入れてくれた夫に感謝の気持ちでいっぱいになりました》。
《これをきっかけに、自分が本当にしたいことは何かを突き詰め、「女性が元気に輝くためにとことん応援すること」を仕事にしようと決断。現在はコーチというスキルを使い、ライフセラピストとして女性が自分らしさを取り戻すきっかけになるようなイベントやセミナーを企画、またカフェ店長、野菜ソムリエとしても女性を応援する日々を送っています》。

華奢な体のどこからこんなパワーが出てくるのか不思議なくらいだが、2児の母、カフェのオーナー店長(および野菜ソムリエ)、女性の自立を支援するライフセラピスト(プロコーチ)の3役を見事にこなしながら、ホームページ「平野奈津 Website」、ブログ「きらりと輝く女性になるための応援レター」、Twitter、Facebook、それに最近はメールマガジン「ライフセラピスト平野奈津の応援レター」も創刊された。「私は文章を書くのがすごく苦手です」とお書きなのに…。だから阿修羅像にたとえて、「三面六臂(さんめんろっぴ)」と書かせていただいた。

ライフセラピスト(プロコーチ)としての活動も盛んで、「育女倶楽部 交流フォーラム&自分力upメイクアップ講座」(1/25)、「京都コーチングラボ コーチング入門1dayセミナー」(2/4 平野さんは午前を担当)、「奈良きらりと輝く女性になるための1DAYセミナー」(2/22)など、イベントが目白押しである。
「cafe DRINK DRANK」の場所は、ずいぶん昔に「奈良小鳥園」のあったところである。以前、かぎろひさんの「かぎろひNOW」にも登場していた。木質感覚溢れるお店で、各種スムージー(680円)のほか、ご飯もの(ベジベジごはん)950円が味わえる。メインディッシュは2種類で、私は2日間かけて「10種類の野菜だけで作ったチキンのシービャンカレー」(水を入れず野菜の水分だけで煮込んだカレー)と「エビとアボカドの香味野菜ごはん」(ご飯に特製の醤油ダレがかかっている)をいただいた。それぞれに「梨木農園採れたて野菜のサラダと根菜のスープ」がついている。野菜ソムリエの店だけに、野菜は甘くてシャキシャキ、こってりカレーもタレがけご飯も、とても美味しかった。200円でセットできる香り高いコーヒーもお薦めだ。お店では「授乳ローブ」を貸してくれるので、赤ちゃん同伴のママさんも安心である。
平野さんのような女性は、奈良では珍しいタイプである。しかし、女性の自立や社会進出は当然必要だし、これからますます大切になってくる。以前、当ブログで『デフレの正体』(藻谷浩介著)という本を紹介した。「経済は『人口の波』で動く」というサブタイトルのついた同書は《「現役世代人口の減少」、日本の問題はここにある!誤った常識を事実で徹底的に排す!!》という内容である。同書の「第10講 ではどうすればいいのか」には《女性の就労と経営参加を当たり前に 現役世代の専業主婦の四割が働くだけで団塊世代の退職は補える/若い女性の就労率が高いほど出生率も高い》とあり、《日本屈指に出生率の高い福井県や島根県、山形県などでは、女性就労率も全国屈指に高い》《共働き家庭の方が子供の数の平均は多い》《「内需を拡大するために女性就労を促進しましょう。少なくともその副作用で出生率が下がるということはないですよ」と言っているのです》。

上と下の写真は、平野さんのFacebookページから拝借
なぜ「女性の就労率が高いほど出生率が高くなる」のか。その理由を藻谷氏は次のように書いている。
1.ダブルインカムでないと、子供を3人持つことは難しい。
2.共働きだと保育所などを利用でき、または親の手助けを得ることができ、子育てのストレスが緩和される。父親も育児に参加するようになる。
そして「働く女性の代わりに、家事を誰が分担するのか」という問題については、企業社会から退場しつつある高齢男性が《社会人として蓄積してきた能力と手際を持って、若い女性の代わりに家事に当たれば、その分彼女たちは所得を得て経済を拡大することができ、高齢男性の側も家族の賞賛を得ることができます》というアイデアを披露している。閑話休題。この記事を書いた翌日、ご本人からコメントをいただいた(1/24追記)。

記事を読みながらこれまでの13年間を思い出していました。楽しいことばかりではなかったですが、これまでの体験や想いがこのような形でたくさんの方に知っていただくことができ、とても嬉しく思います。そして少しでもこの活動で女性の明日が元気になれば!と思います。
子供を持つことにより、自己喪失感に襲われる時があります。女性が経済的自立を果たすメリットは大きいと感じています。社会での存在意義、自己表現、他者への貢献、それが自己を取り戻し、自分らしい生き方へと導いてくれるのではないかと考えています。固く閉ざした心にノックをし、再び自分らしく輝けるきっかけをこれからも作り続けていきたいと思います。
「子供を持つことにより、自己喪失感に襲われる」という感覚は男性には持ちにくいものであるが、考えてみればその通りである。平野さんのHPのタイトルは「きらりと輝く女性を 1,000人誕生させます」である。「固く閉ざした心にノックをし、再び自分らしく輝けるきっかけを作りたい」という平野さんの活動ぶりは、若い女性の心を打つことだろう。平野さん、ますますのご活躍を期待しています。読者の皆さん、「cafe DRINK DRANK」をお訪ねすれば、こんなにキュートな平野さんに(たぶん)お会いできますよ!
※写真のほとんどは、1/16~17に撮影したもの
《デリカテッセンの店でアメリカ発祥の『スムージー』に出会いその魅力に取り憑かれ、スムージーの研究を始める。1999年 DRINK DRANKを立ち上げ 独立。その後、2人の子供を育てながら12年間現場で開発・育成・運営に携わる。2009年 野菜ソムリエ取得。2011年 コーチングラボSCP認定プロコーチ取得 現在ライフセラピストとして女性の生き方や仕事を応援する自立を目指す女性集団『育女倶楽部』の代表メンバー。その中で商品開・イベント企画をする》。

女優の藤林美沙さんは、彼女の実の妹である。藤林さんは今年、岸谷五朗作・演出の「海盗セブン」に出演される。なお「スムージー」とは、あまりお聞き覚えがないだろうが、マックシェイクのようなフローズンドリンクである。Wikipediaによると《凍らせた果物、又は野菜等を使った、シャーベット状の飲み物。クラッシュドアイス(砕いた氷)を使用したフローズンドリンクやフローズンカクテル、やわらかいアイス状のシェイクなどにも似ているが、こちらは材料そのものを凍らせて使用する》。私がいただいた「特選フルーツミックス スムージー」にはオレンジ、リンゴ、バナナ、パインなどが入っていて、果物の美味しさが凝縮していた。今その味を思い出し、有田みかんをパクつきながら、これを書いている。


平野さんは、とても36歳には見えない若々しくてキュートな女性であるが、ここに至るまでには、永らく苦悩の日々を過ごされてきた。彼女のHPの「私の軌跡と思い」によると《1999年、奈良で24席のカフェを家族で開業するも、5年後、夫の仕事の都合で大阪へ引っ越しすることになり、そこから私の苦悩の日々がはじまります。2歳になる子供を大阪の保育園に預け、奈良の職場まで通う生活。慣れない育児と仕事の両立はやがて限界まで達し、育児家事7割、仕事3割の専業主婦に近い状態での生活が始まった。慣れない地域での生活、初めての育児体験。社会からどんどん隔離されていくような錯覚と不安…》。

《日々重ねていくストレスに夫が見かね、再び奈良に戻ることになるものの、やはり幼い子どもを抱えての育児と仕事の両立はなかなか自分の満足には至らず、愛する子供でさえ、私自身の生活を阻害しているような気分に陥り始めていたのです。毎日が自由になりたいという自分と、それが出来ないのを人のせいにしている自分に対する嫌悪感との葛藤の日々でした。そんな生活を送りながらも、ある時、大きな転機が訪れます》。

《家族と経営しているカフェのリノベーションを全面的にまかされることになったのです。試行錯誤しながらも、必死に向かった売り上げを3倍に伸ばし何とか成功。それが、失いつつあった自信というものを取り戻すきっかけとなりました。そんな中2人目女児誕生。今度こそ、「小さな子供がいても、仕事とプライベートを充実させてやる」 以前とは全く考えが変わっている自分に気付いた瞬間でした》。

《その後、自分自信の経験から、同じように苦しんでいる女性のチカラになれないか? と思いはじめ、親友の森田と外出先でもオシャレに使うことができる授乳エプロンを作ろうと思い立つ。私たちのように「むずむずしている女性のために販売しよう!」そこから布切れ1枚を試行錯誤して、何度も試作を重ね、足で京都・大阪・滋賀を回り 何とか100枚制作し、自作のホームページで販売したところ、私たちの想いの通じた日本中のママから少しながら注文が入ったのです。嬉しくて2人で喜んだのを、今でも時折思い出し、胸が熱くなります》。

平野さんは従来の「授乳服」の欠点を克服したアイデア商品「授乳ロープ」を開発・販売するに至る。授乳ローブは、奈良新聞(10.6.23付)で《育児衣料品で起業 経験生かし「授乳ローブ」開発》として大きく紹介された。
奈良市内で働く母親2人が新たに、育児中の女性向けの衣料品を扱う会社「トゥーネストカンパニー」(同市)を起業した。育児経験を基に開発した第1弾の商品は、授乳時のストレスを軽減できる「授乳ローブ」。高い機能性とファッション性を兼備し「母乳で育児に取り組む母親が人目を気にせず自由に外出できる」優れもの。賛同者の支持を得て、育児女性の自立を支える「社会起業家」として船出した。

「授乳負担の軽減を」 同社代表を務めるのは飲食店店長の平野奈津さん(34)と、団体職員の森田夕夏さん(36)。平野さんは「古くて恥ずかしい」母乳のイメージから長男(9)を粉ミルクで育てたが、長女(3)の出産後はゆとりができ、母乳育児に挑戦。授乳前の煩雑な準備から開放されたほか、経済的余裕も生まれ「母乳の魅力を実感した」。外出の機会が増える一方、授乳時に視線を浴びたり会話が中断されたりするため、トイレに隠れて母乳を与えることもしばしば。「個人の自由が奪われる強いストレスを感じていた」。
授乳ストレスを軽減しようと模索する中で見つけたのが海外製の授乳カバー。購入して着用を始めると、少し気持ちが安らいだ。ただ、使いやすさやデザインなどに課題が山積しており、理想とかけ離れていた。母乳育児を断念した経験のある友人の森田さんと子育てへの思いを語るうち「育児女性が輝ける衣料をつくろう」と意気投合。一昨年からアイデアを温め今年4月、貯金を50万円づつ取り崩して同社を立ち上げた。

「授乳ローブ開発へ」 この間既存の授乳服やカバーの課題を研究。趣旨に賛同する中小企業診断士や家族のサポートを得て順調に製品化を進めたが、最終の縫製段階でつまずく。森田さんは「50社に加工を依頼したが生産量が少なく主婦の遊びと思われた」と振り返る。2人の思いをくんだのは滋賀県東近江市の衣料品製造会社。北川恭司社長は「不況下の繊維業界に挑む2人の熱意に同業者として胸を打たれた」と製造を快諾。「課題は多いが製品に込められた思いが1人でも多くの人に伝われば、商品の価値が理解されるはず」とエールを送る。
授乳ローブは今年2月に完成。袖下のホックをとめて腕を仕舞い込めば人目を気にせず授乳ができ、胸元の切り込みから子どもの様子も伺える。母親に安らぎを与える意味を込め「ドゥース(おだやかな)ローブ」と名づけた。普段の着まわしも袖口から腕を出せばノースリーブ、袖口下とホックの間から腕を出せばポンチョと、おしゃれ着に変身する。生地は国産の麻とレーヨンを半分づつ使い、通気性となめらかな肌触りを実現。構造は意匠登録中という。

平野さんと森田さんは「乳児と向き合う母親は孤独になりがち。ローブを着ることで外出の機会を増やし、自分らしく子育てを楽しんでほしい」と話す。初回生産は100着で価格は1万5750円。色は4色。購入はウェブショップ(ドゥースローブ)か中野さんが勤務するカフェ・ドリンクドランク(同市)で。また、育児女性の生活支援活動「育女倶楽部」の中で、同社の商品提案や食育などを行う。問い合わせはドゥースローブ、電話0742(22)3577。

チキンのシービャンカレー
平野さんのHPに戻る。《それからというもの、どんどん自己表現の欲求が加速し、野菜ソムリエの資格をとることを決断。子供が寝静まる早朝に勉強する日々を重ねた結果、ジュニアマイスターに合格。その後、ハードルは高く、絶対不可能だと思っていたマイスター取得にも挑戦。ソムリエの学校の仲間と勉強会を重ね、苦しみも喜びも共有できる仲間ができた。2009年、野菜ソムリエ資格取得》。

エビとアボカドの香味野菜ごはん
《カフェの店長・野菜ソムリエ、そして2児の母である私は次のステージにいくために、その翌年、プロコーチの習得を目指し京都の養成講座に通う事を決断研修期間中は、あまりにもハードなスケジュールとカフェ運営、子育てで2度も気づかぬうちに肺炎に…》。コーチ(コーチング)とは、《一方的に教え込む「ティーチング」(自分の経験や知識を相手に伝える)とは違い、「コーチング」は対話を重視し、相手の自発的な行動を促すコミュニケーションの技術》である(当ブログ「コーチングとは」)。

平野さんのHP。《そんな生活は夫に心配と多大なストレスを与えていたのでした。「家庭を守れないんだったら、辞めてしまえ!コーチの資格なんてない!」 ストレスが絶頂に達した夫からの一言で、再び余裕のない自分になっていることに気づかされた瞬間でした。「そうだ、私は1人じゃない。両親、夫、ずっとついてきてくれたスタッフ、いつも励ましてくれた友達、いつも私に愛情を注いでくれている子供達。自立とは一人で生きることではないんだ…」 それを気づかせてくれ、受け入れてくれた夫に感謝の気持ちでいっぱいになりました》。
《これをきっかけに、自分が本当にしたいことは何かを突き詰め、「女性が元気に輝くためにとことん応援すること」を仕事にしようと決断。現在はコーチというスキルを使い、ライフセラピストとして女性が自分らしさを取り戻すきっかけになるようなイベントやセミナーを企画、またカフェ店長、野菜ソムリエとしても女性を応援する日々を送っています》。

華奢な体のどこからこんなパワーが出てくるのか不思議なくらいだが、2児の母、カフェのオーナー店長(および野菜ソムリエ)、女性の自立を支援するライフセラピスト(プロコーチ)の3役を見事にこなしながら、ホームページ「平野奈津 Website」、ブログ「きらりと輝く女性になるための応援レター」、Twitter、Facebook、それに最近はメールマガジン「ライフセラピスト平野奈津の応援レター」も創刊された。「私は文章を書くのがすごく苦手です」とお書きなのに…。だから阿修羅像にたとえて、「三面六臂(さんめんろっぴ)」と書かせていただいた。

ライフセラピスト(プロコーチ)としての活動も盛んで、「育女倶楽部 交流フォーラム&自分力upメイクアップ講座」(1/25)、「京都コーチングラボ コーチング入門1dayセミナー」(2/4 平野さんは午前を担当)、「奈良きらりと輝く女性になるための1DAYセミナー」(2/22)など、イベントが目白押しである。
「cafe DRINK DRANK」の場所は、ずいぶん昔に「奈良小鳥園」のあったところである。以前、かぎろひさんの「かぎろひNOW」にも登場していた。木質感覚溢れるお店で、各種スムージー(680円)のほか、ご飯もの(ベジベジごはん)950円が味わえる。メインディッシュは2種類で、私は2日間かけて「10種類の野菜だけで作ったチキンのシービャンカレー」(水を入れず野菜の水分だけで煮込んだカレー)と「エビとアボカドの香味野菜ごはん」(ご飯に特製の醤油ダレがかかっている)をいただいた。それぞれに「梨木農園採れたて野菜のサラダと根菜のスープ」がついている。野菜ソムリエの店だけに、野菜は甘くてシャキシャキ、こってりカレーもタレがけご飯も、とても美味しかった。200円でセットできる香り高いコーヒーもお薦めだ。お店では「授乳ローブ」を貸してくれるので、赤ちゃん同伴のママさんも安心である。
![]() | デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) |
藻谷浩介 | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
平野さんのような女性は、奈良では珍しいタイプである。しかし、女性の自立や社会進出は当然必要だし、これからますます大切になってくる。以前、当ブログで『デフレの正体』(藻谷浩介著)という本を紹介した。「経済は『人口の波』で動く」というサブタイトルのついた同書は《「現役世代人口の減少」、日本の問題はここにある!誤った常識を事実で徹底的に排す!!》という内容である。同書の「第10講 ではどうすればいいのか」には《女性の就労と経営参加を当たり前に 現役世代の専業主婦の四割が働くだけで団塊世代の退職は補える/若い女性の就労率が高いほど出生率も高い》とあり、《日本屈指に出生率の高い福井県や島根県、山形県などでは、女性就労率も全国屈指に高い》《共働き家庭の方が子供の数の平均は多い》《「内需を拡大するために女性就労を促進しましょう。少なくともその副作用で出生率が下がるということはないですよ」と言っているのです》。

上と下の写真は、平野さんのFacebookページから拝借
なぜ「女性の就労率が高いほど出生率が高くなる」のか。その理由を藻谷氏は次のように書いている。
1.ダブルインカムでないと、子供を3人持つことは難しい。
2.共働きだと保育所などを利用でき、または親の手助けを得ることができ、子育てのストレスが緩和される。父親も育児に参加するようになる。
そして「働く女性の代わりに、家事を誰が分担するのか」という問題については、企業社会から退場しつつある高齢男性が《社会人として蓄積してきた能力と手際を持って、若い女性の代わりに家事に当たれば、その分彼女たちは所得を得て経済を拡大することができ、高齢男性の側も家族の賞賛を得ることができます》というアイデアを披露している。閑話休題。この記事を書いた翌日、ご本人からコメントをいただいた(1/24追記)。

記事を読みながらこれまでの13年間を思い出していました。楽しいことばかりではなかったですが、これまでの体験や想いがこのような形でたくさんの方に知っていただくことができ、とても嬉しく思います。そして少しでもこの活動で女性の明日が元気になれば!と思います。
子供を持つことにより、自己喪失感に襲われる時があります。女性が経済的自立を果たすメリットは大きいと感じています。社会での存在意義、自己表現、他者への貢献、それが自己を取り戻し、自分らしい生き方へと導いてくれるのではないかと考えています。固く閉ざした心にノックをし、再び自分らしく輝けるきっかけをこれからも作り続けていきたいと思います。
「子供を持つことにより、自己喪失感に襲われる」という感覚は男性には持ちにくいものであるが、考えてみればその通りである。平野さんのHPのタイトルは「きらりと輝く女性を 1,000人誕生させます」である。「固く閉ざした心にノックをし、再び自分らしく輝けるきっかけを作りたい」という平野さんの活動ぶりは、若い女性の心を打つことだろう。平野さん、ますますのご活躍を期待しています。読者の皆さん、「cafe DRINK DRANK」をお訪ねすれば、こんなにキュートな平野さんに(たぶん)お会いできますよ!