「辛味大根(からみだいこん)そば」をご存じだろうか。「おろしそば」「大根おろしそば」と言ったり、「越前おろしそば」「越前そば」と言ったりもする。Wikipediaには「越前そば」という項目が立っている。抜粋すると、
※トップ写真は、そばよし(東京日本橋・三越前)の「おろしもりそば」360円
越前そば・越前おろしそばは、福井県嶺北地方で主に食される蕎麦。蕎麦に大根おろしを乗せて出汁をかけたり(ぶっかけ)、大根おろしに出汁を加えてつけツユにして食べる(つけそば)など、大根おろしを利用することから、「おろしそば」とも呼ばれる。
一般的な蕎麦のように、冬季であってもつゆは冷たいものを用いる。また、具は大根おろしや刻みネギ、鰹節、刻み海苔程度とシンプルなものが基本である。茹で上げた蕎麦を素早く冷水にさらす。蕎麦は、深鉢などに盛って濃い目のつゆを直接かけたり、つけ汁にして食す。辛味大根を使用しており、辛味大根特有のピリリとした辛さが特徴である。そば切りを大根汁につけて食べたことを起源としており、当初は皿(さわち)に入れて食べられていた。
つまり、辛味大根のおろしを薬味として使うのではなく、もとは「おろし汁」に浸けてそばを食べていたのである。では「辛味大根」とは何か。旬の食材百科のHPによると、
百夜月(ももよづき 近鉄奈良駅前)の「ぶっかけおろしそば」945円。白ネギのスライスもたっぷり
●辛味が強い大根の総称
辛味大根と呼ばれているものは普通の大根より小ぶりで辛味が強く、水分が少ない大根の総称です。一言で辛味大根と言っても、親田辛味大根やねずみ大根など古くから栽培されてきたものや赤いもの、緑色のものなど様々です。
●そばやうどんの薬味に
辛味大根はその辛味と、水分が少なくおろしにした時に水気が少ないので、そばつゆなどが薄まらないと言うこともあり、そばやうどんに用いられる事が多い大根です。ただ、非常に辛いので、普通の大根のような煮物などにはむいていません。
●辛味成分アリルイソチオシアネート(芥子油)
大根の辛味はアリルイソチオシアネート(芥子油)と呼ばれる成分によるもので、おろすことで酸素に触れ生成されます。辛味大根にはこの成分が普通の大根より沢山含まれており、これには抗癌作用や抗菌作用があるとされています。
ツーンと辛い「アリルイソチオシアネート」は、ワサビの辛味成分でもあるので、そばと相性が良いはずだ。なお唐辛子の辛味成分であるカプサイシンとは、全く成分が異なる。
季のせ(奈良市東寺林町)の「おろしそば」900円
私が初めて「辛味大根そば」を知ったのは7年前で、同僚のUくんから教わった。一緒に猿沢池畔の「季のせ」へ行ったとき、「おろしそば(辛味大根そば)を試してください」と助言してくれたのだ。「妻はそばで有名な今庄(いまじょう 福井県南越前町)の出身で、いつも辛味大根のおろしを添えた『おろしそば』で食べます。これが名物です」とのこと。食べてみると、これはうまい! ジアスターゼの作用で胃にもたれないし、ノドの痛みにも効く。これは冬場にピッタリの食べ方だ。
おろし汁にそばをつけて食べる食べ方は、子母沢寛の聞き書き集『味覚道楽』(中公文庫)で読んだことがある。信州出身の陸軍中将・堀内文次郎氏の話「しぼり汁そば」である。
お国自慢信州そば。あれには昔から食べ方がある。大根を下ろしたしぼり汁に味噌で味をつけ、ねぎのきざみを薬味とし、それへそばをちょっぴりとつけて食うのである。但しそばはもちろん、大根、ねぎ、それぞれに申し条がある。大根は練馬あたりで出るような軟派のものではいけない。あんなに白くぶくぶくに太ったものは水ばかりで駄目である。
これを聞いた子母沢寛が行きつけのそば屋で、大根のしぼり汁に味噌で味をつけて食べたが、全く旨くない。醤油に替えても同じで、結局、そば屋のつけ汁をつけて食べると美味しかった、と書いていた。これだと今、私たちが食べている「辛味大根そば」の食べ方と変わらない。
田舎そば たかぎ(奈良市花芝町)の「冷やしおろしそば」800円。辛味大根ではなく普通の大根おろしだ
問題は「どこで辛味大根を手に入れるか」ということだ。大規模ショッピングセンターなら売っているのだろうが、ウチの近くのスーパーでは見当たらないので、青首大根の先っぽの部分をおろして使っていた。青首大根は半分に切って、先とモトを別売しているので、先ばかりを使えば何とか辛味大根の域に近づくのだ(先の方が安い)。
ところが最近、もちいどのセンター街(奈良市)の「スーパーOKest(オーケスト)」で、群馬県産の辛味大根が普通に売られているのを発見し、たくさん買い込んできた。おろすと、これは辛い! なので私は、青首大根のおろしと混ぜながら使うことにしている。私にはこれでちょうど良い。
「辛味大根そば」には、こんなメリットもある。スーパーなどの安売りに惹かれて買い、「失敗した!」と戸棚の不良在庫になっていた半生そばや乾麺でも、たっぷりの辛味大根おろしをつけるとあ~ら不思議、結構美味しく食べられるのである。おかげで在庫がどんどん捌けている。
大根おろしの辛味成分には抗癌作用や抗菌作用があるし、ジアスターゼやビタミンCも豊富である。こんなにメリットの多い辛味大根そば、皆さんもぜひお試しください!
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※トップ写真は、そばよし(東京日本橋・三越前)の「おろしもりそば」360円
越前そば・越前おろしそばは、福井県嶺北地方で主に食される蕎麦。蕎麦に大根おろしを乗せて出汁をかけたり(ぶっかけ)、大根おろしに出汁を加えてつけツユにして食べる(つけそば)など、大根おろしを利用することから、「おろしそば」とも呼ばれる。
一般的な蕎麦のように、冬季であってもつゆは冷たいものを用いる。また、具は大根おろしや刻みネギ、鰹節、刻み海苔程度とシンプルなものが基本である。茹で上げた蕎麦を素早く冷水にさらす。蕎麦は、深鉢などに盛って濃い目のつゆを直接かけたり、つけ汁にして食す。辛味大根を使用しており、辛味大根特有のピリリとした辛さが特徴である。そば切りを大根汁につけて食べたことを起源としており、当初は皿(さわち)に入れて食べられていた。
つまり、辛味大根のおろしを薬味として使うのではなく、もとは「おろし汁」に浸けてそばを食べていたのである。では「辛味大根」とは何か。旬の食材百科のHPによると、
百夜月(ももよづき 近鉄奈良駅前)の「ぶっかけおろしそば」945円。白ネギのスライスもたっぷり
●辛味が強い大根の総称
辛味大根と呼ばれているものは普通の大根より小ぶりで辛味が強く、水分が少ない大根の総称です。一言で辛味大根と言っても、親田辛味大根やねずみ大根など古くから栽培されてきたものや赤いもの、緑色のものなど様々です。
●そばやうどんの薬味に
辛味大根はその辛味と、水分が少なくおろしにした時に水気が少ないので、そばつゆなどが薄まらないと言うこともあり、そばやうどんに用いられる事が多い大根です。ただ、非常に辛いので、普通の大根のような煮物などにはむいていません。
●辛味成分アリルイソチオシアネート(芥子油)
大根の辛味はアリルイソチオシアネート(芥子油)と呼ばれる成分によるもので、おろすことで酸素に触れ生成されます。辛味大根にはこの成分が普通の大根より沢山含まれており、これには抗癌作用や抗菌作用があるとされています。
ツーンと辛い「アリルイソチオシアネート」は、ワサビの辛味成分でもあるので、そばと相性が良いはずだ。なお唐辛子の辛味成分であるカプサイシンとは、全く成分が異なる。
季のせ(奈良市東寺林町)の「おろしそば」900円
私が初めて「辛味大根そば」を知ったのは7年前で、同僚のUくんから教わった。一緒に猿沢池畔の「季のせ」へ行ったとき、「おろしそば(辛味大根そば)を試してください」と助言してくれたのだ。「妻はそばで有名な今庄(いまじょう 福井県南越前町)の出身で、いつも辛味大根のおろしを添えた『おろしそば』で食べます。これが名物です」とのこと。食べてみると、これはうまい! ジアスターゼの作用で胃にもたれないし、ノドの痛みにも効く。これは冬場にピッタリの食べ方だ。
おろし汁にそばをつけて食べる食べ方は、子母沢寛の聞き書き集『味覚道楽』(中公文庫)で読んだことがある。信州出身の陸軍中将・堀内文次郎氏の話「しぼり汁そば」である。
お国自慢信州そば。あれには昔から食べ方がある。大根を下ろしたしぼり汁に味噌で味をつけ、ねぎのきざみを薬味とし、それへそばをちょっぴりとつけて食うのである。但しそばはもちろん、大根、ねぎ、それぞれに申し条がある。大根は練馬あたりで出るような軟派のものではいけない。あんなに白くぶくぶくに太ったものは水ばかりで駄目である。
これを聞いた子母沢寛が行きつけのそば屋で、大根のしぼり汁に味噌で味をつけて食べたが、全く旨くない。醤油に替えても同じで、結局、そば屋のつけ汁をつけて食べると美味しかった、と書いていた。これだと今、私たちが食べている「辛味大根そば」の食べ方と変わらない。
田舎そば たかぎ(奈良市花芝町)の「冷やしおろしそば」800円。辛味大根ではなく普通の大根おろしだ
問題は「どこで辛味大根を手に入れるか」ということだ。大規模ショッピングセンターなら売っているのだろうが、ウチの近くのスーパーでは見当たらないので、青首大根の先っぽの部分をおろして使っていた。青首大根は半分に切って、先とモトを別売しているので、先ばかりを使えば何とか辛味大根の域に近づくのだ(先の方が安い)。
ところが最近、もちいどのセンター街(奈良市)の「スーパーOKest(オーケスト)」で、群馬県産の辛味大根が普通に売られているのを発見し、たくさん買い込んできた。おろすと、これは辛い! なので私は、青首大根のおろしと混ぜながら使うことにしている。私にはこれでちょうど良い。
「辛味大根そば」には、こんなメリットもある。スーパーなどの安売りに惹かれて買い、「失敗した!」と戸棚の不良在庫になっていた半生そばや乾麺でも、たっぷりの辛味大根おろしをつけるとあ~ら不思議、結構美味しく食べられるのである。おかげで在庫がどんどん捌けている。
大根おろしの辛味成分には抗癌作用や抗菌作用があるし、ジアスターゼやビタミンCも豊富である。こんなにメリットの多い辛味大根そば、皆さんもぜひお試しください!
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