tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

ムヒカ大統領(ウルグアイ)のスピーチに、源信の「少欲足知」を思い起こす

2012年07月26日 | 環境問題
昨日(7/25)、NPO法人スマート観光推進機構(Myまち遊び)理事長の星乃勝さんから、メーリングリスト経由でこんな情報をいただいた。《観光ネタではないですが、今朝、このメッセージを知り、衝撃を受けました!ので、皆さんにもお伝えさせていただきます。皆、気がつきながら、日常のなかの部分の忙しさにかまけるなかで、世界は危機的な状態を増幅しているのだと思います。このメッセージの内容は、皆、知っていることばかりの内容です。でも、個々まで赤裸々に一国の大統領が語るメッセージは、私は初めてお聞きします。(中略)ぜひ、皆さんもご一読ください。そして、耳を傾けなければならない話はシッカリと耳を傾けていただきたいと思います。そして、自分にできることを取り組んで行きましょう》。

星乃さんはメールに「リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ」(ムヒカ大統領のスピーチ日本語版 Posted by Akira Uchi)へのリンクを貼ってくださっていたので、ここから抜粋して紹介する。ますば訳者の打村明氏のコメントである。
※トップ写真およびYouTubeは、打村明氏のホームページから拝借

リオ会議(Rio+20)は環境の未来を全世界で決めて行く会議で、日本メディアも新聞やテレビで大きく取り上げてきたのに、もっとも衝撃的で環境危機の本当の問題を唯一示し、考えさせられるウルグアイ大統領の本音スピーチを誰も日本語に訳していません!

リオ会議では各国首脳が集まり、地球の未来を議論し合う場なのに、各国首脳は自分のスピーチを終わらせたら、一人一人と消えて行ってしまいました。世界中から何時間もかけてこの場に来ているのに、みな人の話は聞かず自分のスピーチで済ませている代表者が多いリオ会議だったと思います。

ウルグアイのような小国の大統領は最後の演説者でした。彼のスピーチの時にはホールにはほとんど誰もいません。そんな中、カメラの前で残したスピーチは、その前まで無難な意見ばかりをかわし合う他の大統領とは打って変わって、赤裸々に思っていることを口にしています。



ムヒカ大統領のリオ会議スピーチ: (訳:打村明)

午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。私たちの本音は何なのでしょうか?現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?質問をさせてください:ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。

息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?可能ですか?それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?

なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?マーケットエコノミーの子供、資本主義の子供たち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?あるいはグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?

私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が社会のモーターの世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。

人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれも無く政治問題ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。昔の賢明な方々、エピクレオ、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています「貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことを分かってほしいのです。根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、1300万頭の世界でもっとも美味しい牛が私の国にはあります。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。

私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。

発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。


いかがだろう。引用は以上である。打村氏のコメントを含め、全体から2/3程度に抜粋して紹介しているので、全文をお読みになりたい方は、ぜひ上記サイトをご覧いただきたい。

ムヒカ大統領の《ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか》という問いかけの意味は重い。古くは「南北問題」といわれ、近年では地球環境問題における「途上国条項」という形で浮上している問題である。《西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?》《どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?》。

国土の90%に資源が満ちあふれているウルグアイのような国においてさえも、(クレジットカードの)リボ払いやローン支払いのために長時間労働を強いられている人々がいるのである。《ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。(中略) 幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます》。

「貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」(エピクレオ、セネカ、アイマラ民族)という言葉が、「足ることを知らば貧といえども富と名づくべし、財あり とも欲多ければ、これを貧と名づく」(源信『往生要集』)という言葉と見事に共鳴していることにも、驚きを禁じえない。

消費資本主義が築いた欲望充足社会・浪費推奨社会という方向から脱皮するには、「少欲足知」という仏教の教えに立ち戻らなければならないのである。それは個人の生活スタイルの問題であると同時に、各国の利害をかけたグローバルな政治問題である。とりわけ東日本大震災と原発事故を経験した日本人は、率先して取り組むべき課題である。「節電目標が緩和された」といって胸をなで下ろしている場合ではない。

それにしても、胸を打つスピーチだ。ウルグアイ国民は、このような素晴らしいリーダーを持って、幸せである。《彼のスピーチの時にはホールにはほとんど誰もいません》というのは残念だったが、今、このようにしてメールやFacebookで情報が日本中で飛び交っているのは、心ある日本人の心を確実にとらえた証左であろう。

打村氏は《シェアや転載の許可を聞く方が多くてとても嬉しいです。どうぞご自由に転載ください。許可なんていりません》《みなさんのつぶやき、シェア、ブログ紹介のおかげでムヒカ大統領のスピーチもたくさんの人に読まれています。ありがとうございます》とお書きである。皆さんも、ぜひこの素晴らしいスピーチをお友達に紹介してあげてください。
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ステーキ 雪峰(せっぽう)

2012年07月25日 | グルメガイド
日々のニュースネタに追われて、「グルメガイド」を書くのは5ヵ月ぶりである。今回は、とっておきのステーキハウスを紹介する。その名は「ステーキ雪峯」(奈良市神功3-1-6)である。
雑誌「naranto」2007年春号の「噂の新店」では、このように紹介されていた。


写真はすべて1/25(水)の撮影



近頃、注目の店が続々と誕生中のならやま大通り。奈良大学の正門のちょうど真ん前あたりに、白がひと際目を引く瀟洒な造りの店を発見。訪ねてみれば、昨年12月にできたばかりというステーキの店だった。すっきりとした清潔な空間。カウンターをぐるり囲む椅子は全部で9つ。銀色に磨き上げられた鉄板のステージに立つのは、ご主人の清水憲一さん。サラリーマンから転じて20年。大阪の北新地のステーキ店などを経験した後、昨年(06年)までの10年間、新大阪でステーキ「雪峰」を営んできた。夫婦2人が快適に暮らせて、お店もできる場所として新たに選んだのがここだった。





「本当は神戸で探していたんですが、たまたま紹介で見に来て、一度で気に入ったんです」。長年つき合いのある肉屋から仕入れる肉は、山形、岩手、松阪、鹿児島など産地を選ばず全国から。特選の中の特選、専門用語で“とび”と呼ぶ最高級のもののみを使う。16ミリ以上ある厚い鉄板が、十分に温もったところで、いよいよ舞台の幕が開く。



まずは前菜。2皿のうちひとつは季節の魚介を取り入れる。今日は「鯛のソテー 雪峰風」。ちなみに屋号の「雪峰」の意味は?と聞いてみれば、厨房で悟りを開いた僧侶の名だという。そんな会話を交わす間にも、鉄板の上では鯛が焼かれ、野菜のソースが出来上がっていく。香りや音をライブで楽しみつつ、待つことができるのも鉄板ステーキの醍醐味だ。





サラダや前菜の合間には、ガーリックトーストをつまみながら、ワインが快調に空いていく。気分も体温も上昇してきたところで、メインの肉が登場。山形牛のヒレの中でも、脂のバランスが最高と言われるシャトー・ブリアン。ミディアムレアに焼き上がったところで、まずは塩だけで。甘く香り高い肉の味わいに「ほおっ」。意味不明の感嘆詞のみ。あまりの感動は、時にことばを奪うものと再確認した夜だった。





大阪にお住まいの常連・アルティマさんは、ご自身のブログ「アルティマ腹いっぱい!」で、大きく紹介されている。



かなり久々に奈良までステーキを食べに行ってきました 以前は新大阪にお店があり、ちょくちょくお邪魔してたのですが… 片道1時間半は少し遠いですね しかし私はディナーをステーヘキハウスで食べるときには、ココしか使いません 雪峰のマスターの焼いたものしか食べないと決めています ランチや違う形式で出てくるステーキは戴きますが、鉄板焼きステーキディナーは どちらかが死ぬまで変わらないと思います





鉄板焼きでのステーキは肉の最も美味しい食べ方だとは思いませんが 華がありとても楽しい食べ方だと思います 肉好きが高じて脱サラしてステーキ業界に進まれたマスターは、未だに大の肉好きです 肉好きのマスターが大好きな肉の話をしながら焼くステーキが不味いはずありません 私は基本的に食事中は無口なほうですが、雪峰では心弾み饒舌になってしまいます まるで観客参加型の舞台を見ているようです 私にとって雪峰のマスターは最高のエンターテナーです 年々肉から魚、魚から野菜に好みが変化しましたが、たまにはガッツリいくことも必要ですね





ご主人の清水憲一さんは私の1つ年上で、包丁さばき抜群、おしゃべりもとても楽しい方である。奥さんの千津子さんは「古社寺を歩こう会」の常連さんで、奈良検定の最上級資格である「奈良まほろばソムリエ」に挑戦中である。



このお店はワイン持ち込み可(1本1,000円)なので、お気に入りのワインで美味しい料理を楽しむこともできる。シンプルで清潔感あふれる店内で、最高のステーキとお酒をいただく時間は、まさに至福の時。大切な時に大切な人と、ぜひお訪ねいただきたい。

※ぐるなびの同店サイトは、こちら。地図は、こちら。以下、ぱ~ぷる創刊10周年記念特別編集「奈良美食倶楽部」(2010.1.13発売)より


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おんぱら祭り&花火大会

2012年07月24日 | 奈良にこだわる
綱越神社おんぱら祭 奉納花火大会


三輪の明神さんとして知られる大神神社(おおみわじんじゃ)の摂社、綱越神社(つなこしじんじゃ)では、毎年、7月30日と31日におんぱら祭りが営まれる。『きょうの奈良』(紫紅社刊)「おんぱら祭」によると《大神神社の1の鳥居から西へ百メートルほどのところに建つ綱越神社(つなこし)神社は、さまざまな穢(けが)れを祓う祓戸大神(はらえどのおおかみ)を祭神とし、大神神社の卯の日の神事(現在の春の大神祭)の前には、神職は三輪川で禊(みそぎ)をして当社で祓の儀を受けなければ神事に携わることができなかった。そのため「御祓(おんはらい)社」=おんぱらさん」とよばれている》。

《「おんぱら祭」は半年間に身についた穢れを祓い暑い夏を乗りきるための夏越(なごし)の祓で、「綱越」の社名は「夏越」が転訛したという説がある。30日は宵宮祭で、31日は神馬(しんめ)が社を3周して邪気を祓ったのち、巫女の神楽舞の奉納があり、最後に茅の輪をくぐる。鳥居の前には紙の人形(ひとがた)がおかれ、名前と年齢を記して3度息を吹きかけ、両肩と具合の悪いところをなでて納めるとお祓いしてもらえる。31日の夜は、2千発の奉納花火大会が催される。このあたりは高い建物がないので、どこからでも壮大な花火が楽しめる》。

なるほど。夏越(なごし)から「綱越(つなこし)」、お祓いから「おんぱら」、つまり「夏越神社のお祓い祭り」なのだ。

 きょうの奈良―まほろばの国の三六五日
 小野久仁子
 紫紅社

綱越神社でお祀りされている「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」は、お祓いの神さまである。Wikipedia「祓戸大神」によると《神道において祓を司どる神である。祓戸(祓所、祓殿)とは祓を行う場所のことで、そこに祀られる神という意味である。神職が祭祀に先立って唱える祝詞である「祓詞」では「伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊祓給ひし時に生り坐せる 祓戸大神等」と言っており、祓戸大神とは、日本神話の神産みの段で黄泉から帰還した伊邪那岐が禊をしたときに化成した神々の総称ということになる。なお、この時に禍津日神、直毘神、少童三神、住吉三神、三貴子(天照大神・月夜見尊・素戔嗚尊)も誕生しているが、これらは祓戸大神には含めない》とある。

今年(2012年)の花火大会は「第56回おんぱら祭奉納花火大会」として開催される。「花火カレンダー2012」によると《奈良県内屈指の花火大会。約2000発の花火が打ち上げられる。周囲に視界をさえぎる建物などが少ないので、四方から花火を眺められる。開催日時 2012年7月31日(火)19:30~20:10 悪天の場合 小雨決行(荒天時は中止) 開催場所 芝運動公園周辺》。

今年は梅雨明け早々から悪天候で、あまり夏らしさを感じないが、暦はすでに夏バージョン、花火大会も始まるのだ。「視界をさえぎる建物などが少ないので、四方から花火を眺められる」とは、有り難いことである。皆さん、ぜひ夏越神社のお祓い祭りと花火大会にお出かけください!
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二荒山神社と大猷院 世界遺産 日光の社寺巡り(3)

2012年07月23日 | 小さな旅
世界遺産「日光の社寺」は、二社一寺(にしゃいちじ)といわれ、日光東照宮、日光二荒山(ふたらさん)神社、日光山輪王寺(りんのうじ)および輪王寺大猷院(たいゆういん)で構成される。このように書くと、お寺と神社が整然と建ち並んでいる印象だが、実際には「日光山」という広いエリアに神社とお寺が入り組んで建っているのである。その事情をWikipedia「輪王寺」から拾うと、

日光山内の社寺は、東照宮、二荒山神社、輪王寺に分かれ、これらを総称して「二社一寺」と呼ばれている。東照宮は徳川家康を「東照大権現」という「神」として祀る神社である。一方、二荒山神社と輪王寺は奈良時代に山岳信仰の社寺として創建されたもので、東照宮よりはるかに長い歴史をもっている。ただし、「二社一寺」がこのように明確に分離するのは明治初年の神仏分離令以後のことであり、近世以前には、山内の仏堂、神社、霊廟等をすべて含めて「日光山」あるいは「日光三所権現」と称し、神仏習合の信仰が行われていた。現在、輪王寺に属する建物が1箇所にまとまっておらず、日光山内の各所に点在しているのは、このような事情による。

さて、今回は最終回として、北西側の(駅から最も遠い)日光二荒山神社と輪王寺大猷院を紹介する。まずは二荒山神社である。Wikipedia「日光二荒山神社」によると



日光二荒山神社は栃木県日光市にある神社。式内社(名神大社)、下野国一宮。社格は国幣中社。正式名称は二荒山神社であるが、宇都宮市の二荒山神社(ふたあらやまじんじゃ)との区別のために鎮座地を冠して日光二荒山神社と呼ばれる。

日光の3つの山の神(大己貴命、田心姫命、味耜高彦根命)を総称して二荒山大神と称し、主祭神としている。3つの山とは、男体山(二荒山)、女峯山、太郎山の三山である。この山々は神体山、いわゆる神奈備であり、神が鎮まる霊峰として古くから信仰されてきた。この日光の神々は「日光三山」「日光三所大権現」などと呼ばれ、山の名前からもわかる通り、これらの神々は親子と考えられてきた。


つまり、父・大己貴命(おおなむちのみこと=男体山)、母・田心姫命(たごりひめのみこと=女峯山)とその子・味耜高彦根命 (あじすきたかひこねのみこと=太郎山)の3柱の神さまが祀られているのである。下野国(しもつけのくに=栃木県)の一宮(いちのみや=地域の中で最も社格の高い神社)とは、すごい。今も神域は、日光国立公園のほぼ全域にわたる。



二荒山(ふたらさん)の名は、諸説あるが観音菩薩が住むとされる補陀洛山(ふだらくさん)が訛ったものといわれ、後に弘法大師空海がこの地を訪れた際に「二荒」を「にこう」と読み、「日光」の字を当てこの地の名前にしたといわれる。空海はその訪れた際に女峯山の神を祀る滝尾神社を建てたという。また、円仁も日光を訪れたとされ、その際に現在輪王寺の本堂となっている三仏堂を建てたといい、この時に日光は天台宗となったという。

江戸時代までは、神領約70郷という広大な社地を有していた。今日でも日光三山を含む日光連山8峰(男体山・女峰山・太郎山・奥白根山・前白根山・大真名子山・小真名子山・赤薙山)や華厳滝、いろは坂などを境内に含み、その広さは3,400ヘクタールという、伊勢神宮に次ぐ面積となっている。



二荒山神社は縁結びの神さまとして、お守り(縁結び笹)が売られ、境内には神前結婚式のパンフレットがたくさん置かれていた。ご由緒によると《縁結び笹 この笹に願いを込めると、男女の良縁はもとより、仕事の縁・人の縁等々あらゆる良い縁に恵まれるといわれます。ここには「結び札」があり、それぞれの思いを書いて、結び所に結んで祈ります。「縁結び笹」に因んだ御守は、全国で唯一のあらゆる良い縁を結ぶ御守です》。また同神社のHPによると《二荒山神社の主祭神は、大己貴命です。別の名は、大国主命・だいこく様とも呼ばれ、福の神・縁結びの神様です。あらゆる縁を結んでくださる神様です》。



《神前結婚式 今のように神社の神前で行われるようになるまでには、『古事記』『日本書紀』の神話に登場する神々の結婚をはじめ、日本の風土の中で培ってきた神祭りの永い歴史があります。それは大自然の中で生き、自然に在す神々に常に感謝や祈りを捧げてきた人々の営みから生まれたものです。夫婦の和合を乞い願い、夫婦の契りを固める結婚が、神々のお計らいであり、お恵みであるという考え方は、遠い祖先から受け継がれてきた神々への素朴な信仰でもありました。このことはまた、親から子、子から孫へと連綿と続いてゆくいのちを大切にしてきたあらわれでもあります。神前結婚式が今日のように多くの日本人に受け入れられ、行われてきた背景には、このような信仰がありました。ここには、結婚を神々と祖先に感謝し、子孫の繁栄を願う日本人のひたむきな生き方を見いだすことができます》。


ここから、輪王寺大猷院の境内に入る


縁結びの二荒山神社から回ってきたのだろうか、若い女の子が
2人、ムリして写真を撮っていたので、シャッターを押してあげた

さて二荒山神社の奥(西)に、輪王寺大猷院(りんのうじ・たいゆういん)がある。つまり東から、輪王寺三仏堂(本堂)→東照宮→二荒山神社→輪王寺大猷院と並んでいるのである。あ~ややこしい。輪王寺の公式HPによると、


手水舎も、こんなにゴージャス

「大猷院」は、徳川三代将軍「家光公」の廟所(びょうしょ=墓所)です。境内には、世界遺産に登録された22件の国宝・重要文化財が、杉木立の中にひっそりとたたずんでいます。境内に林立する315基の灯籠も印象的です。





先祖である家康公の廟所(東照宮)をしのいではならないという家光公の遺命によって、彩色や彫刻は、控え目に造られましたが、かえってそれが重厚で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。





入り口の「仁王門」にはじまり、家光公墓所の入り口に当たる「皇嘉門」(こうかもん)まで、意匠の異なる大小6つの門で、境内が立体的に仕切られており、門をくぐるたびに景色が転換して、あたかも天上界に昇っていくような印象を受けます。





「彩色や彫刻は、控え目に造られました」とあるが、私には「ホンマカイナ」という印象である。皆さんはいかがだろう。それにしても「縁結びの神」は、どこでも強いと思い知った。「日光山」が「二荒山」(そのモトは補陀洛山)ということも、今回初めて知った。

これで「世界遺産 日光の社寺巡り」は、おしまいである。実はこのあと少し時間があったので、鬼怒川温泉まで足を伸ばし、そこで遅めのランチを済ませ、東武線の特急で東京に戻った。鬼怒川温泉では、バブル期まで、団体客を相手に栄華を誇った温泉地の現況をまのあたりにすることになる。それはまた別の日に。
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ホテル日航奈良に、春日大社と興福寺をイメージした客室が登場!(2012Topic)

2012年07月22日 | お知らせ
JR奈良駅のすぐ西側にある「ホテル日航奈良」(奈良市三条本町8-1)に、8月1日から「春日大社」と「興福寺」をイメージした客室(コンセプトルーム)が各1室、登場する。6月にスタートした「東大寺」ルームに次ぐ第2弾である。同ホテルのプレスリリースによると、

奈良の社寺をイメージしたコンセプトルーム続々登場
春日大社・興福寺イメージの客室販売開始

ホテル日航奈良(奈良市三条本町8-1 総支配人 津秦 幸生)では、 2012年8月1日(水)より“春日大社”“興福寺”をイメージしたコンセプトルームを各1室限定で販売開始いたします。また、発売を記念して、期間限定宿泊プランも同時発売いたします。ご宿泊されるゲストに、お部屋の中でも“奈良”を存分に感じていただくために誕生したコンセプトルーム。今回は、今年6月に発売した“東大寺”をイメージしたお部屋『華(はな)』に続く第二弾の発表となります。



春日ルーム「朱(あか)」。以下4枚の写真は、同ホテルのプレスリリースから拝借



春日大社をイメージしたお部屋は、春日大社の『朱塗り』の赤イメージから『朱(あか)』。興福寺をイメージしたお部屋は、興福寺・阿修羅像の衣に描かれる『宝相華文』の一文字をとり『相(そう)』といたしました。どちらのお部屋もホテルの9階東側に位置し、窓から春日山や興福寺五重塔も見ることができます。また、壁には、写真家 桑原英文氏撮影の“春日大社と砂ずりの藤”、森本康則氏撮影の“古都雲上”をそれぞれ飾り、各部屋にちなんだ柄の“華倭里行燈(かわりあんどん)”や、“各部屋限定オリジナルベッドライナー”“関連書籍”なども配置しています。


興福寺ルーム「相(そう)」


株式会社カキモトの「華倭里行燈(かわりあんどん)」阿修羅バージョン

◇内容詳細◇
春日大社をイメージしたコンセプトルーム『朱(あか)』 興福寺をイメージしたコンセプトルーム『相(そう)』
・ホテル9階 東側ツインルーム 各1室のみ(35㎡・トリプル・フォース対応可能)
・客室料金:1室 35,000円(税金・サービス料込)(トリプル39,500円・フォース44,000円)
・アメニティ:ミキモトコスメティックバスアメニティ
※両部屋とも禁煙ルームです。
※設置している行燈や関連書籍などはお持ち帰りいただけません。
※全て春日大社、興福寺の監修をもとに行っています。

◇1日各1室・期間限定 宿泊プラン◇
『コンセプトルーム【朱(あか)】誕生記念プラン』『コンセプトルーム【相(そう)】誕生記念プラン』
期間:2012年8月1日(水)~2012年12月30日(日)
料金:お一人様 17,500円(1泊朝食付き・1室2名利用)※3名利用、4名利用の場合追加料金が必要。
特典:『朱(あか)』:春日大社ゆかりの和菓子「萬々堂通則 ぶと饅頭」(5個入り)、『相(そう)』:興福寺国宝館 拝観券(ご宿泊の人数分)
ご予約・お問い合せ:0742-35-8831(宿泊予約)



こちらは東大寺ルーム「華(はな)」。ベッドライナーは法衣のイメージ。以下の写真は、6/27撮影

6/27(水)、東大寺ルーム「華(はな)」を見学させていただいた。当ブログ「古事記完成1300年 ゆかりの地でイベント続々」でも紹介したとおり、法衣をイメージしたベッドライナー(ベッドにかける飾り)、正倉院宝物をあしらった華倭里行燈(かわりあんどん=金属製の電気ランタン)や一筆箋など、東大寺の雰囲気がよく出ていた。


会席料理から、お通し(エビの枝豆和え、北海道のウニ、サーモン、アワビ豆腐)。トップ写真とも


これはぜいたく、スープ仕立てのお吸い物(大和肉鶏、ハモ、ホンシメジ、三つ葉、スダチ)

そのときは、同ホテル3階の和処「よしの」で食事をいただいた。大きな窓から景色を眺めながら、6月の季節感をうまく取り入れられた料理の数々をいただいた。豆乳ベースの「大和鍋仕立て 熊本牛しゃぶ」など、ヨソではなかなかいただけない逸品である。


新鮮なお造り(シマアジ、タイ、ボタンエビ、マグロ、剣先イカ)。梅雨どきだったので傘が載っている


おお、こんなところにカエルの王女さま…

同ホテルのHPには《季節を食す 吟味した確かな食材と、手間を惜しまないおもてなしの心で綴る逸品。全国各地から厳選した銘酒とともに、四季折々の味をご堪能ください。7月の旬御膳(朝顔)は、あゆや鱧、うなぎのお料理をご用意いたします。営業時間 昼食/11:30~14:30 夕食/17:30~21:00 フロア:3F 席数:64席 個室3室 終日全席禁煙》とある。


たっぷりの熊本牛


スープは豆乳仕立て。飛鳥鍋(牛乳仕立て)を連想させる演出がニクい

このホテルでは、コンセプトルームのほかに、ロビーの「古事記ゆかりの地マップ」、ウオーキング地図付き宿泊プラン「神話めぐり~古事記」などアイデアあふれる企画を連発している。これほど新しい企画を打ち出せるのは、企画室(広報担当)のTさんと宿泊部(ネットセールス担当)のKさんという2人の女性パワーと、それを経営陣が支援するという組織パワーの賜物であろう。

これからの夏休み期間、多くの観光地では年間で最多数の宿泊観光客を呼ぶが、奈良はそうなっていない。8月には大イベント「なら燈花会」が開催されながら、宿泊客数や経済効果の向上という点では、いま一歩の観がある。逆にいうと、各宿泊施設の企画力が試される時なのである。大いにアイデアを競い、奈良にたくさんの観光客を呼び込んでいただきたいと思う。
コメント (2)
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