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越後妻有大地の芸術祭の展示物のある旧津南小学校大赤沢分校で『田口洋美秋山郷マタギ狩猟映像』を観た。
何人もで待機場所を分担して、春先の冬眠から覚めた熊を狙い撃つ。
銃声一発で仕留められた熊が、雪の斜面を全くの脱力状態で何回も転がり、ずり落ちていくシーンがあった。
ドキュメンタリーならではの迫真、ではなく真実の、野生の命が尽きる瞬間。
その後は、体の各所に結びつけた縄を各自が持ち、雪の上を引きずっていくところが映った。
それからは、顎から真っ直ぐ短刀で皮を裂くところから始まる解体シーンになり、大鍋に肉たっぷりの熊汁を囲んでの酒宴などのシーンが印象的だった。
名札をぶら下げて腰掛けていた入り口の係員に話しかけてみたら、80歳前後と思われるその人が最後のマタギとのことだった。
冬眠から覚めた熊は、外の様子を確認するために徘徊してから一度戻るのだそうで、二度目に出てから物を食べるという。
そうして、とにかく二度目に出て食餌をするまでに仕留めないと、良い熊の胆がとれないのだと説明してくれた。
映像の中には、胆汁の詰まった胆嚢を慎重に取り上げ、袋が破れないように周りに付いている筋とか余分な膜を丁寧に取り除くシーンがあった。
何頭くらい獲ったら生活できるんですか、などと下賤な事を聞いてみた。
もう自分がやり始めたころには、マタギだけで食えるような時代ではなくなっていたと言っていた。
もっと話を聞きたかったけれど、一人の連れが車の中でラインなんぞをしながら待っているので、後ろ髪を引かれる思いで切り上げた。