■ 幸田真音さんは作家になる前、国際金融市場の現場で仕事をしていた。そのときの経験や知識を活かしていままで経済社会で熱く生きる人間達を描いてきた。
『コイン・トス』講談社文庫 はそんな幸田さんが描いた大人の恋の物語。**ふたりの運命を託した遠い日の約束が甦る** 帯に惹かれて購入、読了。
主人公の篠山孝男と北原冴子、ふたりはある証券会社の同僚。冴子は画商になりたいと、会社を辞めてニューヨークへ行ってしまう。篠山がニューヨークの本店で開かれる会議に出席することになり、ふたりはある店で再会。
コインをトスして表が出たら、今夜ニューヨークで、もしも裏が出たら東京で・・・。表が出たか裏が出たかは書かないでおく。
その後ふたりは国際電話で話をするようになる。
「決まったのよ。ついに絵が売れたの。これでやっと一息つけるわ」
「よかったな。おめでとう。それじゃ東京でお祝いをしなきゃな」
売れた絵の搬入日は2001年9月11日。冴子は搬入先の世界貿易センタービルに向かう・・・。
こういうサスペンスフルな小説のストーリーは書かないほうがいいだろう。冴子は事件後行方不明になってしまうから、その後物語はふたりを中心に展開していかないのは仕方がないが、やはり少し物足りない。でもこういうスタイルの恋愛小説も好みだ。更に続きが読みたくなるエンディングだった。幸田さんには続編を期待したい。
主人公の篠山孝男は既にこの小説に登場している。