透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

夏休みの宿題6

2019-08-15 | E 週末には映画を観よう

 映画「GATTACA ダカタ」を観た。SF映画ということだが、SFというより、ヒューマンドラマと言った方が内容的にふさわしい。映像的には建築シーンなどに近未来的な雰囲気も。

遺伝子の優劣で人生が決まってしまう近未来の差別的社会。遺伝子操作によってマイナス要素を無くして完璧な状態で生まれてくる「適格者」、自然な妊娠、出産によって生まれくる「不適格者」。

適格者でないとなることができない宇宙飛行士。幼いころから宇宙飛行士になりたいと思い続けていた不適格者の若者・ヴィンセントが、適格者として生まれながら、事故、いや自殺未遂で車いす生活を余儀なくされた若者・ジェロームの協力のもと、「ガタカ」の局員になる。この組織はNASAのようなものか。

ヴィンセントが何回も実施された血液検査や尿検査を巧妙に通過し、ピンチも切り抜けて木星の衛星タイタンを目指してロケットで旅立つまでを描いている。

ロケット搭乗直前の尿検査で分かる「不適格者」という結果を見逃してくれる医師、ジェロームがヴィンセントに託した手紙の中身・・・。

この映画に込められたメッセージは、自分で限界の線引きをしないで、目標に向かって努力することが大切だ、ということか。「何ができて何ができないか決めつけるな」というセリフもでてくる。協力者だって必ずいる。ただし真っ当な努力だけでは報われないこともあるということも同時に示していると理解すべきかもしれない。


これで自らに課した夏休みの宿題の内、読書3冊と映画3本はクリアした。残るは火の見櫓のある風景のスケッチ3点。


夏休みの宿題5

2019-08-15 | A 読書日記



 今日、8月15日は74回目の終戦の日。

夏休みの宿題として本を3冊読むことを課しているが、3冊目は予定を変えて『日本軍兵士 ―アジア・太平洋戦争の現実』吉田 裕/中公新書にした。昨日読み始めて、今朝読み終えた。

著者は「はじめに」を**アジア・太平洋戦争における凄惨な戦場の実相、兵士たちが直面した過酷な現実に少しでもせまりたい。**と結んでいる。本書はまさにこのような内容について書かれているのだが、文章は冗長ではなく、簡潔で実に読みやすい。それだけに悲惨さがストレートに伝わってくる。読みながら涙したことが何回もあった。

戦地では多くの日本兵が亡くなったが、戦闘死より、戦病死の方が多かったという。戦病死と関係する餓死者が数多く発生していたという。餓死か・・・。

戦地で日本兵に何が起こっていたのか、どのように亡くなっていったのか、特に敗戦濃厚となった時期以降の実態を数多くの文献(巻末にリストアップされた参考文献は上下2段組で9ページに及んでいる)を参照するなどして具体的に明らかにしている。

**一九四五年一月、兵站(へいたん)病院の撤退に際して「処置」の命令が下った。命令を受けた衛生兵たちは躊躇しながらも、熱が下がり元気になる薬だと称して、傷病兵に薬物を次々に注射してまわった。そのとき、ある傷病兵は、「おい衛生兵!きさまたちは熱が下がるなんぞ、いいかげんなことをぬかして、こりゃ虐殺じゃないかッ」と抗議し(後略)**(73頁)

**前線への軍靴の補給も途絶えたため、行軍の際に軍靴を履いていない兵士も多かった。一九四四年の湘桂作戦に参加したある部隊の場合、脛を保護するための巻脚袢を靴の代用として足に巻きつける者、靴の底が抜けている者、裸足にボロ布を巻いている者、(中略)もいた。また、補給がないため、軍靴は戦闘用に保管し、普段は裸足か草鞋履きの部隊も少なくなかった**(129頁)

**「昼間の戦闘と夜行軍が幾日も続くと、将兵たちは極度な疲労と過激な睡眠不足に陥り、あげくの果ては意識が朦朧となって行軍の方向すら見失い右や左、後方に向かって進む戦友もいたことは事実でございます。特に雨中暗夜の行軍は大変でした。〈中略〉激しい撃ち合いの戦闘よりも、行軍による体力・気力・戦意の消耗はとてもひどかったことは事実です」**(188頁)

引用ばかりで気が引けるが、具体的な描写から戦地での悲惨な状況が伝わる。


2019新書大賞第1位 2018年度アジア・太平洋賞特別賞受賞 





14日付信濃毎日新聞13面の記事によると、長野、松本両市の街頭で16歳から30代の若者30人に「終戦記念日はいつか知っていますか?」と尋ねると半数の15人が「知らない」と答えたという。


夏休みの宿題 残りは

映画1本
火の見櫓のスケッチ3点