■ 『日本の景観 ふるさとの原型』樋口忠彦/春秋社 を読んだ。この本を読むのは何回目だろう(過去ログ1、過去ログ2)。初読は1981年11月。
著者は日本の景観を典型的な7つの型(タイプ)に分け、それぞれについて過去の文献からの引用を交えるなどして論じている。
7つの型は以下の通り
①秋津洲やまと型:盆地の景観
②八葉蓮華(はちようれんげ)型:高野山に代表される山岳盆地の景観
③水分(みくまり)神社型:扇状地の景観
④隠国(こもりく)型:谷の奥の景観
⑤蔵風得水(ぞうふうとくすい)型:山の辺の景観 長い間慣れ親しんできた棲息地
⑥神奈備山(かんなびやま)型:
⑦国見型:⑥と共に凸状のシンボルがつくり出している景観
神奈備山が山の辺から仰ぎ見られる山であるのに対し、国見山はそこから山の辺を俯瞰する山という説明がなされている。両者の空間的構造に明確な違いはあるにだろうか。私は分からない。両者の違いは視点の置き場、ということでは。
景観の型のアナロジーとして都市空間の型についても説明できるとしている。都市空間は更に建築空間に落とし込むことができるから、棲み所として好まれてきた景観の分析的研究は建築にも適用できる、と思う。
**人間は、広がりのある場所においては、何か背後による所がないと落ち着かないものである。背後による所がある場所は、人間に心理的な安心感・安定感を与えてくれる。日本の古くからある集落を見ても、それが盆地や谷や平野であろうとも、ほとんど山や丘陵を背後に負う山の辺に立地している。**(170、1頁)
自然災害で体育館など大きな空間に避難する場合にも、空間は壁際から避難者に占められていくだろう。上掲引用部分が建築空間においても当てはまることを示している。
建築設計にも応用することができる、景観論。