透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

のれん

2006-08-19 | A あれこれ

 
   
松本市内のこの店、再来年で開業から60年。ラーメンマニアな方なら2枚の写真でどこなのか分かるかもしれません。

この店が道路拡幅のため以前の店の反対側に移転、オープンしたのは今から4年前のこした。店は新しくなりました、でも平面プランは以前の店と変わりません。入口が2ヶ所あって、正面からみて左側が畳コーナー、右側が厨房、その間の配下膳用の小窓も同じ。カウンター上部に山岳写真のカレンダーをディスプレイするのも同じ。よく覚えていないけれど厨房機器のレイアウトも以前たぶん同じ。テレビの位置やのれの色は変わったけれど・・・(のれんは以前は藍色した)。

長い間に染み付いた使い勝手は変えようも無く、いままでのプランが一番いいとの結論だったのだろうと推察します。

麺をゆる時間が一定ではなく、柔らかかったり硬かったしますが、ファンになってしまうと、そこがいいなどと思ってしまうから不思議です。「あばたもえくぼ」のラーメンバージョン。昼時はいつも混でいるので、私が行くのは残業する日の夕方です。


2003UB313

2006-08-17 | A あれこれ

 

 SFの世界では宇宙の果てまでいとも簡単にすっ飛んでいくことが出来てしまう。だがこの『火星縦断』ジェフリー・A・ランディス/ハヤカワ文庫を読むと(これもSFだが)、火星に行ってくることすら大変なことなんだということを知ることになる。文庫本の帯で分かるが作者はNASAの現役研究者だ。

2028年、六人の第三次火星探検隊が火星に着陸するところから、このSFは始まる。着陸早々、帰還船で事故が発生してしまう。どうやって地球に帰還するのか・・・。手段は一つ、第一次探検隊が残した帰還船を利用すること。

第一次探検隊が事故で死亡したために彼らの帰還船が残されているのだが、その場所は(火星の)北極点。第三次観測隊が着陸したのは赤道よりまだ南。北極点をめざして6000キロの火星縦断の旅が始まる。ちょっと冗長ではあるが(550ページの長編)なかなか面白かった。

前ふりが長くなってしまった。今朝の新聞の一面に「太陽系惑星3個増え12」という記事が載っていた。現在プラハで開催中の国際天文学連合の総会で議論されているとのことだ。

「セレス」「カロン」という名前はいいとしても「2003UB313」って何だ? 調べてみるとどうやら仮符合ということだ。なんだか製造番号みたいだな。早く名前をつけてもらわないと覚えられない・・・。

カロンは今までは冥王星の衛星だとされていたそうだが、ワルツを踊るようにお互い回りながら(我ながらオシャレな喩えを思いついたものだ)太陽の周りを回っているとのことだ。双子惑星ということか。このふたつの天体を惑星とすることには異論もあるようだ。雑誌「ニュートン」の付録の太陽系の天体を紹介するポスターを見ているが(写真参照)冥王星もカロンも月より小さい。

「2003UB313」が発見されたカイパーベルトという領域にはまだまだ惑星候補がたくさん存在するといわれているらしい。結果的に20個とか30個とかになったらもう覚えられないだろう。

ところで地球の衛星は月が一つだけだが、他の惑星のようにいくつもあったら生活習慣などが全く違っていただろうな、と思う。月見うどんのタマゴの数だって・・・。  

 


しをん的日常

2006-08-17 | A あれこれ



アルコールな夏休み。

|三浦しをんさんて和服の似合う人だっけ?
三浦しをんの『まほろ駅前多田便利軒』を紹介してくれた知人に、先日こんな返事を出してしまった。たぶん相手は??だったに違いない。
しをんさん、なんだか外見とイメージ違うな~、と思いながらこの本を読み始めていた。

私は気がついた。和服の似合う人は歌人の水原紫苑(しおん)さんだったことに。彼女はときどき「週刊ブックレビュー」に登場する。
二人の名前、なんだか似ている。「ンナ、全然違うジャン」と突っ込まれそうだが。

ではいったい、しをんさんはどんな人?
なぜか文庫のカバーの折り返しに写真が載ってない。
ネットで検索してみた、ヒット、ヒット!って高校野球の実況みたいにヒットした。 ハ~ン、なんだかイメージが合ってきた。

しをんさんは『しをんのしおり』のタイトルは、本当ならば「人生劇場」になるはずだった、と書いている。ところが編集部の偉い人、エルメスのネクタイをした加藤氏の横槍が入って『しをんのしおり』に決まったとある。

『人生場』今回のエッセイ集のタイトルは彼女のこだわりなのかもしれない。でも劇場ではなくて激情、おっと激場に何故したのかは不明。

週刊新潮に連載したものをまとめたということだがそのタイトルが「人生激場」なのかな。それにしてもオモシロイ。
ライバル誌、週刊文春の室井さんのエッセイ「すっぴん魂」といい勝負だな、これは。 しをんさんの作品、全部読もう・・・。

 アルコールな夏休みの結果  → 

 


屋根のジレンマ

2006-08-16 | A あれこれ


民家 昔の記録 山形県 (8008)

 山形県の六十里越街道、この山形と鶴岡とを結ぶ街道をかつてバスで移動したことがある。80年の夏のことだ。途中、湯殿山の麓の朝日村(現在は鶴岡市)の大網の民家を訪ねた。

この地方では寄棟の屋根にハッポウと呼ばれる開口部を設けている。養蚕をするようになって、蚕室に必要な採光と通風を確保するために造られた。

屋根に開口部を設けることは雨仕舞い上、弱点を作ることになる。豪雪地帯でもあるから、雪仕舞いにも支障を来たす。そこでかなり注意深く開口部を設けている。ちょうど雨や雪を避けるためにコートのフードを顔の前まで突き出すようなしつらえだ。屋根の棟の置き千木も数がたくさんあって印象的だった。

雨仕舞いと採光・通風、この屋根のジレンマを解消する工夫が全国各地の民家に多様な造形を生み出した。

***

森敦の芥川賞受賞作品『月山』はこの地方を舞台にした小説だった。73年の作品だからすっかり内容を忘れてしまった。確か映画化されたように思う。ひとりの男がこのハッポウから激しく雪が降る様子を見ているシーンがあったような曖昧な記憶がある。

もうあれから26年も経過した。あの山村はいまどんな様子なんだろう、民家はまだ当時の姿を留めているのだろうか・・・。


 


繰り返しの美学、再び

2006-08-16 | B 繰り返しの美学
 
○繰り返しの美学を繰り返す(0608)

前回のサッカーワールドカップ、日韓共同開催決定を機に全国各地にいくつもサッカースタジアムが建設されました。サッカースタジアムの場合、スタンド後方に柱は建てられますが、視覚的に邪魔になるので、前方に柱は建てられません。後方だけ柱を建てたのでは屋根はフィールド側におじぎをします(当然 先端が重力で下がる)。この問題をクリアして、屋根をどのように架けるのかが、設計者の腕のみせどころなのです。

松本市郊外にある県営施設アルウィンでは、スタンドの外側で屋根を下方に引っ張っています。シーソーの片側だけに人が乗ると当然下がるけど、反対側をロープで地面に固定しておけば下がらない。理屈はこれと同じ。ロープに相当するのがV字型の白い鋼管というわけです。

心地よいリズム感。
繰り返しの美学は身近なところにいくらでもありそうです。

部分と全体

2006-08-16 | A あれこれ


路上観察 松本市内 0608

■ 松本市内には蔵を利用した店がいくつもある。これもその一つ。全体を構成するいくつかの部分がうまくまとまっていて美しい。縄のれんや飾り窓の一輪ざし、アサガオ、鉢植えの花。

軒の白壁がちょっと剥落している、そこが渋いといえないこともないができれば修理して欲しい。店の中がどんな様子なのか、こんど確かめてみよう。

*****

先日、開智学校のエンジェルについて書きました。何故凸なのかと。『建築探偵 雨天決行』藤森照信、増田彰久/朝日新聞社 に理由が出ていました。さすが藤森探偵。どうやら建設当時はツルリン、何もついていなかったようですが、戦後の修理の時、文化庁の人が「それではマズイ」と気をきかせて凸をくっつけたそうです。以前私が読んだのはこの本だったのかもしれません。


 


夏の夜空 彩々

2006-08-15 | A あれこれ


○ 夏のフォトアルバム 4     夜空 彩々 (060815) 

秋田の竿灯、青森のねぶた等々、日本の夏祭りは「夜の演出」だと思う。
夏の夜空を彩る花火を観てきた。
理想の生き方を桜や花火に喩える人が少なからずいる。
一度でいい、こんなに輝くことが出来たら・・・。



変化の過程

2006-08-15 | E 朝焼けの詩



夏のフォトアルバム 1

「そういうことをいってはいかん。俺ひとり死ねばいいことなのだ。
 君が死ぬ必要がどこにある? よいか、死んではならんぞ」

『日本の一番長い日 運命の八月十五日』半藤一利/文藝春秋


 


まほろ駅前多田便利軒

2006-08-14 | A 読書日記


○『まほろ駅前多田便利軒』 

小説家は登場人物のキャラクターを設定するのに案外身近な人をモデルにしていることが多いのではないか。事実インタビューでそう答えるところをテレビで見たり、エッセイなどでそのことについて触れているものを読んだりしたことがある。複数の人物から作中のひとりのキャラクターを創り上げるということもあるかもしれない。全くモデル無しというわけにはいかないだろう。

さて、三浦しをんの直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』だが、主人公の二人、多田啓介と行天晴彦の場合もそうだろうか・・・。
私には二人のキャラを作者はいくつかの「漫画の登場人物」からイメージしたのではないのかな、と思えた。但しなんとなくそんな気がするというだけで、その根拠を示すことはできないが。また場面の展開も、コマ割された漫画のシーンの連続のように思えた。文中に二人の名前、多田と行天が頻出することもあるいは関係があるのかもしれない。

ウェブマガジンの連載をまとめた『しをんのしおり』新潮文庫 によると
**私の漫画体験は、小さいころ近所のお兄さんから貸してもらっていた「週刊少年ジャンプ」に始まる。その後はジャンルにこだわらず何でも読んでいたのだが(後略)** とのことだ。

本書の前にこのエッセイを読んでいたことと、目次のデザインと中とびらのイラスト(写真)から、あるいはそんな先入観を抱いていたのかもしれない。

ところで肝心の小説だが、「俺には子どもがいた」と多田が行天に告白する終盤、急にシリアスな雰囲気が漂いだす。
そしてラストの2行・・・。

この小説をこれから読もうという方、最初から読んで欲しい。蛇足ながらそう付け加えておく。

 


ブックレビュー 0607、08

2006-08-14 | A ブックレビュー


ブックレビュー 060717~0810

■ 今回の20冊、7月17日から8月10日までにブログに書名が載った本。

建築関係の本が多い。ということは、建築に関する話題が多かったということ。藤森さんのファンサイトを1週間続けて書いたことなどによる。

次回の20冊、どんな本が揃うのか全く分からない、ブログの「流れ」による。写真では書名が読み取れないが、装丁で分かるので備忘録としては、OKとしておこう。思いの外、むかし読んだ本を覚えているものだということにこの頃気が付いた。内容は忘れていることが多いが・・・。


 


東を向くのはなぜ?

2006-08-13 | A あれこれ

 
 
○安曇野市内にて(060813)

   夏の花
ひまわり


ソフィア・ローレンが主演した映画「ひまわり」 
戦争の悲劇、男と女の絆とは・・・
ヘンリー・マンシーニの哀愁漂う音楽。

ゴッホの名画「ひまわり
日本の生命保険会社が途方もない高額で落札して話題になった。

伊藤咲子「ひまわり娘」
確かに明るい娘だった。いまどうしているんだろう。
 ***
ひまわりは東を向いて咲く。
茎の先端に一つだけ花を咲かせる品種の場合には東を向いて咲く。
茎にたくさんの花を咲かせる品種の場合には四方八方向いて咲く。

ひまわりはその名の通り太陽の「オッカケ」。ただしそれは若いときだけで開花する頃には「オッカケ」卒業で東を向いている。オーキシンという生長促進ホルモンの作用で開花する前のひまわりは太陽の「オッカケ」をするのだそうだ。一生懸命生長しようと努力しているのだな~。

ヒトの場合、「オッカケ」は必ずしも年齢とは関係ないということを「冬ソナ」でおばさん達(中高年の女性達を便宜上こう表現させていただく)が実証して見せた。

ふだん、なにげなく見ている植物、よ~く考えてみると??なことがいろいろある。この手の??にはいつまでも興味をもちたいと思う。

ただしおばさん達の「オッカケ」には興味がな~い。

 


あのすばらしい民家をもう一度♪

2006-08-13 | A あれこれ

 
梼原(高知県)の民家(8003)



 
『住まいの伝統技術』から(下の2カット)

 以前、「芝棟」について書いた際、『茅葺の民俗学』安藤邦廣/はる書房 をとり上げた。芝棟についてその効用(機能)をきちんと説明していたので。

その後、安藤さんが共著で出した『住まいの伝統技術』建築資料研究社を自室の書棚に見つけた。この本は日本各地の伝統的な民家の調査結果をまとめたもので、カラー写真や説明図が多く見ているだけでも「ホーッ、すごい」と思ってしまう。(写真中、下)

上の写真は以前このブログにも載せたが1980年の春に私が撮ったもの。梼原は高知県の山村で確か中村から四万十川(その支流かもしれない)に沿って走るバスで2時間以上もかかるところだった。

偶然だが、同じ民家を撮影した写真がこの本にも載っている、しかもほぼ同じアングルで(写真中)。この民家はどうやら有名だったらしく別の本でも紹介されていた(私がここを訪ねたのも本の写真を見たのがきっかけだった)。

この本は芝棟についても紹介しているが、野芝を棟にのせているところの写真まである(写真下)。ちょうどそのタイミングに居合わせないと撮れないわけだが、他にも棟飾りを取り付けているところや屋根の葺き替え作業の様子を写したものも載っている。

今ではもう撮ることが出来ない写真を見ていると、このような記録をきちんとまとめておくことが後年貴重な資料になるということを痛感する。

(メモ)この本は1995年に発行された。


 


連想ゲーム

2006-08-12 | A あれこれ

 
銀座ミキモト(060408)

 建築構造家の佐々木睦朗氏は「せんだいメディアテーク」で伊東豊雄氏のピュアなコンセプトを卓越した構造センスで見事に具現化して見せた。ふたりのコラボはその後「まつもと市民芸術館」を経てこの「銀座ミキモト」(写真)へと続く。

昨年末、この商業ビルが東京銀座に竣工した。今春、このビルの外観だけ見る機会があった。

鋼板コンクリート構造。2枚の鋼板の間にコンクリートを充填して、約14×17mの外形を形成している。この作品を紹介している雑誌の佐々木氏の解説文によると、伊東氏は単なる表層的な装飾ではなく、構造と一体化した象徴的なファサードをイメージしていたそうだ。

厚さがわずか20cmの壁で高さ50m近い高層ビルが実現した(このビルには鉄骨の柱が無い)。面的な構造システムであるためにいくつもの応力伝達経路を内在していて、リダンダンシーが高いという。

Redundancy 冗長性とは狭義には建造物や機械類・システムの設計における余裕を指し、その対象物に想定される負荷、および、要求される性能に対し、それより多め、大きめに設計された「余裕」や「余地」を指す。

子どもの感性は時として大人が予期しないような見方を提示する。

A:「このピンク、かわいい!」
M:「でも、なんだか虫に喰われたキャベツの葉っぱみたい」

設計者の手を離れた建築作品は、いかなる感想も受容しなくてはならない存在となる。