透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

国宝仁科神明宮社殿 屋根の葺き替え

2019-08-05 | A あれこれ

 既に何回も書いているが松本城から徒歩で5分くらいのところにある旧開智学校校舎が国宝になれば、長野県の国宝は10件になる(下表参照)。その内の6件が建造物だ。

大町市にある仁科神明宮の社殿(本殿・中門・釣屋)も国宝だが、今年の11月に行われる遷宮祭に合わせて、3月初旬から10月末までの工期で桧皮葺きの屋根の葺き替え工事が行われている。

昨日(4日)行われた葺き替え工事の見学会に参加した。見学の予約者は90人くらいだと受付担当者から聞いた。桧皮葺きの作業を間近に見る機会はめったにないから、貴重な見学会だった。仁科神明宮の屋根の葺き替えも次回は20年後になる。

桧皮葺きの屋根は西日本に多く、東日本は杮(こけら、柿(かき)とは字が違う)葺きが多いそうだ。







拝殿の後方にある国宝の中門・釣屋・本殿は仮囲いで覆われていて、中で葺き替え作業が行われている。



綴皮といって、何枚か重なっている薄い桧皮を庖丁でこづいて一体化する作業などを見学した。桧皮は主に岐阜県のものが使われているとのことだった。

その後、桧皮葺きの作業の様子を見学した。

平成11年(1999年)の葺き替え以来20年が経過してだいぶ傷んだ桧皮を全て取り去り、更に傷んでいる下地材も修理して、新しい桧皮で全面的に葺き替えるという作業だ。取り替えた下地材には今回の修理であることが分かるように焼き印をしてある。





職人さんが桧皮を実に手際よく竹釘で留めていく。本殿と中門の千木(×に交叉している部材、破風板をそのまま伸ばして千木にしている)も修理したり取り替えたりしているそうだが、それが計8本のうち何本かは、訊きもらした。千木には木曽桧が使われているそうだ。



ごく薄い桧皮を何枚も重ねて葺く。12~15mmくらいずらして、流れ方向には3ヶ所、横方向には30mmくらいの間隔で留めると聞いた。


竹釘を打ち付ける金槌


竹釘


取り替えた千木に押された焼き印


〇長野県の国宝

・松本城(松本市)
・善光寺本堂(長野市)
・仁科神明宮(大町市)
・安楽寺八角三重塔(上田市)
・大法寺三重塔(青木村)
・旧開智学校校舎(松本市 現時点(8月)では重要文化財 国宝指定の答申あり)

・土偶・縄文のビーナス(茅野市)
・土偶・仮面の女神(茅野市)

・紙本墨画寒山図(諏訪市)
・白楽茶碗 銘 不二山 (諏訪市)

諏訪市にあるサンリツ服部美術館で紙本墨画寒山図(6月)と白楽茶碗 銘 不二山(7月)を鑑賞したので、10件全て見たことになる。


 


― 北安曇郡池田町の火の見櫓再訪

2019-08-05 | A 火の見櫓っておもしろい


(再)北安曇郡池田町会染 3脚666型 撮影日190804

 火の見櫓巡りを始めたのは2010年5月だが、この火の見櫓はその翌年、2011年10月に見ている。昨日(4日)大町から帰る時、この火の見櫓を再訪した。見張り台の高さは確認していないが、8、9メートルくらいあるだろうか。踊り場まで手すり付きの外付け梯子を架け、そこから上は櫓の中に梯子を架けている。見張り台に半鐘は無く、踊り場に移されている。屋根は見張り台の大きさに比べて小さく、両者の間隔も離れすぎているように見える。





脚が長いのがこの辺り(池田町や隣の大町市、松川村もそうかな)の火の見櫓の特徴。



薄い平鋼を蔓のように曲げた、くるりんちょな飾りを避雷針に付けている。


 


1207 みんなちがって みんないい

2019-08-04 | A 火の見櫓っておもしろい


1207 大町市社宮本 3脚33型 撮影日190804

 大町市社宮本の狭い坂道を車で下ってきて、この火の見櫓と出合った。ガードレールの隙間から登り降りするのかと思いきやさにあらず。





道路の擁壁を一旦下に降りて、梯子を登るようになっていた。火の見櫓を建てた時から道路とはこのような位置関係だったのだろうか、それとも道路改良によって、道路の方が高くなってしまったのだろうか・・・。周辺の様子をちゃんと見ていれば分かったかもしれない。

櫓は3本の横架材によって4分割されている。下から1番目と2番目の横架材の間を長い脚にしている(写真②)。その上、2番目と3番目の間は幅を狭くしてブレースを設置している。ブレースには割枠式ターンバックルが使われている。3番目の横架材のところが見張り台の床面。床と手すりは簡易なつくりで屋根はシンプルな3角錐。こういう火の見櫓もなかなか好い。

「火の見櫓 みんなちがって みんないい」


 


1206 大町市社の火の見櫓

2019-08-04 | A 火の見櫓っておもしろい


1206 大町市社宮本 3脚66型 撮影日190804

 「あ、火の見櫓!」大町市社で出会った火の見櫓。

大町市にはこの火の見櫓のように外付け梯子に落下防止かごを付けたものがある。櫓の中に梯子を設置するのと、どちらが恐怖感をより和らげるのだろうか。



見張り台と梯子との取り合いはこんな様子。屋根の反りのカーブがなかなか好い。



櫓に近づいて見上げて、屋根の一部が欠損していることに気がついた。

梯子と見張り台の移動がしやすいと思う。





大町市や隣の北安曇郡池田町にはこの火の見櫓のような脚長タイプが多いと思う。9割くらいの火の見櫓が道路沿いに立っているが、この火の見櫓は民家の敷地内に立っているものと思われる。






こうなっているのか・・・

2019-08-03 | A あれこれ

 今年の5月17日、文化審議会が文部科学大臣に旧開智学校校舎を国宝にするよう答申した。このことを記念して過日、国宝指定答申報告会が開催された(過去ログ)。この報告会以前から今日(3日)の見学会が予告されていて、申し込んでおいた。

午前10時半からの見学会に参加した。

旧開智学校校舎はあんパンと同じように和と洋の折衷だ。和の技術と材料を用いて和でも洋でもない建築を創りだしている。



学校建築でこれだけ装飾された車寄せとバルコニーはなかなか類例がないようだ。



開智学校はもともと女鳥羽川沿い(左岸)にあり、川の氾濫による水害にも遭っている。明治29年の水害以降、バルコニーも簡素なデザインで修復されていた。屋根は切妻で、エンジェルもないし手すりも簡素だ(上の写真)。

旧開智学校校舎は明治8年に着工、翌9年に竣工している。工事費11,000円(教員の給料で、現在の建設費に換算すると約2億円になるそうだ)の約7割が地元負担だったという。

校舎は昭和36年に重要文化財に指定され、昭和38年から翌年にかけて現在地に移築された。その際、バルコニーなどを含めて新築当時の姿に近づけて復元されたと、リーフレットに説明されている。





見学会ではバルコニー付きの車寄せ、塔屋などの説明が学芸員によってなされた後、内部へ移動した。で、普段は開かずの窓が学芸員によって開けられた。バルコニーの床は、と見ると瓦棒葺きのようだ。中央部分からごくなだらかな勾配がつけられているようにも見える。手すり中央の親柱につっかい棒をあててある。こうなっているのか・・・。遠くに松本城が見えている。



このエンジェルについては過去ログ参照。

エンジェルの後ろ姿は・・・。



こうなっているのか・・・。足の指は裏側もつくってある。こげ茶色の羽の先が見えている。

普段閉じているバルコニーの窓を開けてもらえたただけでも今回の見学会に参加する意義があった、と思う。




 


ブックレビュー 1907

2019-08-02 | A ブックレビュー



 プレゼントされていた図書カードがあったので、7月は買い控えることもなく、読みたい本を買い求めて読んだ。で、読了本は6冊。

『江戸の不動産』安藤優一郎/文春新書。 **不動産という視点から江戸繁栄の秘密を探る**(帯に記された本書の内容紹介文)明暦の大火を契機に火除地が江戸市中に設けられたが、この火除地に簡易で屋台のような移動店舗、水茶屋(喫茶店)、髪結床(理髪店)などの出店が許可されていたことをこの本で知った。なるほど、そのくらいのことは行われていたんだろうな、と納得。

『日日是日本語』今野真二/岩波書店。 言葉や本と楽しく真剣に向き合う日々の暮らし。

レイ・ブラッドベリは今でも人気がある作家だろう。
ようやく「読まずに死ねるか本」の1冊『華氏451度』を読むことができた。読んだというだけで満足な作品(この本は図書カードをプレゼントされる前に買い求めていた)。

『日本一おかしな公務員』山田 崇/日本経済新聞出版社。 どこの自治体にもこんな職員がいたらいいのに。

『それでも日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子/新潮文庫。新潮文庫の100冊の1冊。 この夏休み、多くの高校生や大学生に読んで欲しいと思う。レベルの高い講義で、歴史に疎い私は字面を追うことに終始したが・・・。小林秀雄賞受賞。

『スピリチュアルペイン』細田 亮/幻冬舎。 人は死にゆく時、肉体的苦痛や精神的苦痛が伴うとこは分かっているが、更ににスピリチュアルペインなるものが伴うなんて・・・。**時代は「QOL」から「QOD」へ**と本の帯にある。QODはQOLと不可分で、QOLを高める生き方をすることが求められるということを理解しなくては。



 


「科学入門」

2019-08-01 | A 読書日記


360

 光陰矢の如し 早くも8月。

小遣いの「追加受給」なしで毎月生活する。そのために自分に厳しく、日々の生活を律する。切ないことだが書籍代も節約しなければならない。自室の書棚に並ぶ本を取り出して再読もすることに。

10日に始まる9日間という長い夏休み、課題は火の見櫓のある風景のスケッチ3点、DVDで映画観賞3本、読書3冊。 

3冊のうちの1冊がこの『科学入門 科学的なものの考え方』。何も今さら・・・、と思わないでもない。だが読みたいと思う本を読みたいときに読む、これ小さな幸せ。初読は1979年の5月、40年ぶりの再読だ。

「全国学校図書館協議会選定 必読図書」というシールが表紙に貼ってある。今だってこの評価に変わりはないだろう。