透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「蓬生」

2022-05-17 | G 源氏物語

「蓬生 志操堅固に持つ姫君」

 光君が須磨で苦境の日々を過ごしている間、援助を失った末摘花は気の毒なほどさびれた暮らし向きになってしまう。邸は荒廃、蓬や葎(むぐら)が生い茂っている。女房たちも次々と去っていく。それでも姫君は邸や道具の売却を持ち掛けられても拒む。**「(前略)私の生きているあいだに、お邸を手放すなど考えられません。こんなに不気味に荒れ果てているけれど、両親の面影が残っている古いお邸だからこそ、心もなぐさめられるのです」**(483頁)そのような状態の邸に野分の追い打ち、渡り廊下が倒壊し、板葺きの雑舎が幾棟も骨組みだけが残る姿に。なんとも悲惨な状況。  

加えて姫君は**だいじに育ててくれた父宮の考え通り、世間は用心すべきものだと信じて、手紙を送り合ってしかるべき人々ともまったくつきあいを持っていない。**(484頁)読んでいてかわいそうだなと思う。

*****

姫君の叔母の夫が太宰大弐に任ぜられる。叔母は姫君を筑紫に連れて行こうとするが、姫君は頑として受け付けない。光君の来訪を信じているから。

時は過ぎてゆく・・・。翌年の四月、光君は花散里、そう末摘花ではなく別の女性のことを思い出して出かけていく。途中、見覚えのある邸の前を通りかかる。末摘花、光君と再会! 

**その昔、夫の留守に、いらぬ疑いを避けるため、塔の壁を壊して夜中灯りをつけていたという貞淑な女の話を思い出し、その女と同じようにずっと長い年月を過ごしてきたのかと思うと、いとしく思える。一途に恥じらっている姫君はさすがに気品があり、奥ゆかしく思える。この人を援助するべき人として忘れまいと思っていたのに、もう何年もいろいろなことに紛れて忘れてしまっているあいだ、さぞやこの自分を恨んだだろうと思うと、なおのこと姫君が大切に思える。あの花散里も目立って派手にする人ではないので、そちらと比べても大差なく、この姫君の欠点もさほど目立たなかったのである。**(498頁)

「光源氏なんて浮気ばっかし、あたし嫌い」 今時の文学少女の源氏評はこんなところだろうか、でも上掲の引用箇所を読むと情に厚いのかなとも思う。

紫式部は次のように書く。**光君といえば、かりそめの戯れだとしても、平凡な人並みの女性には目も向けず耳も貸さず、世間から、これは、と注目され、忘れがたい魅力のある人たちを求めているのだろうと思われているわけです。しかしながらこんな正反対の、何から何まで人並みにも及ばない人を一人前に扱うのは、いったいどんなつもりなんでしょうね。これも前世の宿縁なのかもしれません。**(499頁)

光君は末永く庇護することを心に誓い、末摘花を二条東院(本文では二条の東の院と表記されている)に引き取る。

変わらぬ心の尊さよ。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


「澪標」

2022-05-16 | G 源氏物語

「澪標 光君の秘めたる子、新帝へ」

 全54帖(54巻)の長編小説『源氏物語』、14帖「澪標」まで読み終えた。

光君が帰京した次の年の二月に朱雀帝譲位、冷泉帝即位。三月、明石の君に女の子誕生。父親の光君、明石に乳母(めのと)を遣わす。その秋、光君住吉神社参詣。いくつもの願いを叶えてもらったお礼参り。そこで偶然にも明石の君一行と出会う。だが明石の君は言葉を交わすことなく去る。**ふつうの大臣などの参詣の時とは比べものにならないほど格別に奉仕したことだろう。明石の女君はいたたまれない思いで、このような人たちに交じって、取るに足らない自分が少しばかりの奉納をしても、神のお目に留まることもなく、人の数にも入れてはくださらないだろう、(後略)**(466頁) なにもここまで自分を卑下することもないと思うけれど、性格なんだろうか。

御代替わりに伴い、あの六条御息所が前斎宮と帰京する。また一波乱あるのでは、と読み進むと・・・。なんと御息所は急に重い病にかかり出家してしまう。で、娘の前斎宮を光君に託し、娘に手を出さないでくださいね、と言い残して亡くなる。この後、光君は前斎宮を養女にする。そして藤壺の宮と相談して養女を冷泉帝(自分の息子)の妃にしようと考える、朱雀院が彼女にぞっこんなことを知りながら。光君から相談を受けた藤壺の宮は次のように答える。**「(前略)朱雀院のお気持ちを思うと、畏れ多いことでありますし、お気の毒でもありますけれど、御息所の遺言にかこつけて、院のお気持ちには気づかなかったふりをして、入内をおさせになったらいいと思いますよ。(後略)」**(476頁)藤壺のシビアな判断。

『源氏物語』は単なる恋愛小説ではなく、政治的な背景があるということだろうが、なかなかそのようなところまで読み解くことは難しい。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


朝日村針尾の石碑

2022-05-15 | B 石神・石仏


長野県朝日村針尾大石原にて 生活道路沿いに大小12基の石碑が祀られている。撮影日2022.05.15 

 コメントにお応えするため、再取材に出かけた。

向かって右から左に石碑の写真を載せる。


右 「庚申」文字碑 大正九年十月(1920年) 大石原耕地 左(小)不明


道祖神 祝言跪座像


「庚申」文字碑 萬延元歳十二月日(1860-1861年)大石原中


右 不明 中 「青面金剛」文字碑 明和四丁亥年(1767年) 左 「南無阿弥陀仏」碑


右(小)不明 左「二十三夜」碑


「庚申」文字碑 昭和五十五年十一月(1980年) 大石原部落中 


*1 「養蠶神」 裏面の刻字:明治九子年九月(1876年)大石原耕地中 
   碑高約150cm 碑幅約70cm 碑厚約30~35cm


青面金剛像碑 (過去ログ


*1 行書で3文字 下は「神」。同じ神様が別の地区にも祀られているのではないか、そう考えて近くの御道開渡(みどがいと)へ。


朝日村古見御道開渡にて 撮影日2022.05.15

左から2番目の文字碑の「養蠶神」、*1はこれと同じなのではないか。は蚕。だから「養蚕神」と同じ。


『新字源』角川書店(1969年)

大石原にに戻り、読めない文字碑(*1)の前に立つ。中の字は下に虫がふたつ並んでいるように読める。とすると、上の字は養・・・? 養とは読めないけれど、行書だとこう書くのかな。


朝日村小野沢本郷 撮影日2022.05.15

「蠶神」2文字の碑が別の地区に祀られていた。


**蚕玉様(こだまさま) 蚕玉様は養蚕の守り神であり、(後略)。石碑や祠、幟や御札などに書かれている神名は「蚕玉神」「蚕神」「養蚕神」「蚕大神」「養蚕神」「養蚕守護神(尊)」などで、書かれている文字も(*2)蠶・蚕などがある。**『朝日村誌 上巻』 朝日村村誌刊行会(1989年)(755,6頁) *2 変換できない漢字

『朝日村誌 上巻』第四節 民間信仰 四ムラの神仏 によると庚申塔が朝日村には74基(村誌刊行時1989年)あるとのこと。**村内全般にわたって集落ごとに庚申塔が建てられた村は全国でも珍しいといわれる。**(758頁)という記述がある。


 


「明石」

2022-05-15 | G 源氏物語

「明石 明石の女君、身分違いの恋」

 前帖「須磨」の最後でいきなり起きた暴風雨が「明石」でも続く。雷も鳴りやまないまま幾日も経つ。都でも同じ空模様。光君のいる寝殿に続く廊に落雷! 仮の御座所でうとうとしている光君の前に故桐壺院(父親)が夢枕に立つ。生前そのままの姿で**「住吉の神の導いてくださるがままに、早く船を出してこの浦を立ち去りなさい」**(413頁)と告げる。このことば、現代語訳だと味気ない。奇遇にも翌朝明石の入道が船で迎えに来る。やはり夢でお告げがあったという。

明石に移った光君。都に残した紫の上を気にかけつつも、明石の君に心惹かれ・・・。明石の君は伊勢に下ったあの六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)によく似ていたというから、光君の好みのタイプだったのだろう。もっとも、光君はかなりストライクゾーンが広いと思うが。

光君のことが好きになれないという女性読者が少なくないというのも分かる。

身分の違いを気にする明石の君、娘に代わり父親が熱心に光君にアプローチ。とうとう二人は結ばれる。やがて明石の君懐妊。都では朱雀帝の夢にも故桐壺院があらわれる。帝は桐壺院と目を合わせてしまったせいか、眼病を患う。更に大后まで具合が悪くなるし、帝の祖父(右大臣)が亡くなる。**「やはり、あの光君が罪も犯していないのにこのような逆境に沈んでいるならば、かならずその報いがあるに違いないと思うのです。かくなる上は、元の位を授けましょう」**(428頁)と考えて大后に話すが、気丈な大后に厳しくいさめられる。だが、ふたりの病は次第に重くなる。で、結局、光君は京に戻ることに・・・。光君、復活!

(追記するかも)


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


火の見櫓のある風景を描く

2022-05-15 | A 火の見櫓のある風景を描く


上伊那郡辰野町横川にて 描画日2022.05.11

横川川に沿って集落が点在する辰野町の横川地区。私が好きな構図、道路によって遠近感が際立つ「道路山水」。高低差があり、変化に富んだ風景で、線描が難しい。あまり時間をかけると線が活きないことが分かったので、このスケッチでは線描を50分くらいで済ませた。いままで通り下描き無し。油性ペンでいきなり本チャンの線を描くという方法。左側の蔵の妻面が左右対称でないのが気になるが、まあそれも味、ということで。

雲の描き方をつかんだ。ホワイト絵の具は全く使っていない。塗り残しとブルー絵の具の水量の多少による濃淡の調整。これは透明水彩絵の具のごく基本的な使い方かもしれないが、描き方を習ったわけでもなく、自己流なので、今ごろ会得・・・。

スケッチは楽しい。


 


「須磨」

2022-05-12 | G 源氏物語

2024年のNHK大河ドラマは紫 式部が主人公でタイトルは「光る君へ」とのこと。脚本は大石 静さん。紫 式部を吉高由里子さんが演ずるそうだ。今年を『源氏物語』を読む年と決め、4月から読み始めている。まあ、今年中には全54帖を読了できるだろう。気が早いが、今から平安貴族の暮らしが可視化される大河ドラマ「光る君へ」が楽しみ。

「須磨 光君の失墜 須磨への退居」

 朧月夜との密会が明らかになり、処分が避けられない状況となった光君。自ら須磨への退居を決意。関係のあった女性たちに密かに別れを告げ、三月二十日過ぎに七、八人の近しい従者と共に下ることに。

涙河うかぶ水泡(みなわ)も消えぬべし流れてのちの瀬をも待たずて(涙河に浮かぶ水泡のような私は消えてしまいそうです。いつかお帰りになるあなたとの逢瀬も待たずに)(376頁) 朧月夜から届いた歌。

光君、伊勢の斎宮へも使いを差し向ける。伊勢といえば六条御息所。光君、なんとまめなことか。その六条御息所からも手紙が届く。
うきめかる伊勢をの海士(あま)を思ひやれ藻塩垂るてふ須磨の浦にて(つらい日々を送っている伊勢の私を思いやってくださいね、涙を流していらっしゃるという須磨の浦で)(387頁)

ふたりの女性の性格の違いが和歌からも窺える。当然のことながら「源氏物語」の和歌は紫 式部の作。やはりこの平安の才女はすごいと思う。

*****

光君の須磨下向を知った明石の入道は娘・明石の君に光君との結婚のチャンス到来と張り切る。でも奥さんは懸念を示す。**「まあ、なんてことを。京の人が話しているのを聞きますと、光君さまは尊い身分の奥方さまを大勢お持ちになって、それでも満足せずに、こっそりと帝の御妻(みめ)とまで過ちを犯されたというではありませんか。(後略)」**(399頁)田舎にまでうわさが伝わっているようで・・・。現代小説には、このようなまとめというか解説のような文章を途中で入れることがよくあるけれど、昔も同じだったということかな。

この帖のラストはすごい。三月一日、光君が海辺で心身の穢れを祓う禊ぎを始めると、突然、見たこともないほどの暴風雨に。雷が鳴り響き稲妻が走る。このまま世は滅びてしまうのではないかと人々はうろたえる。明け方になって、光君はぞっとするような夢を見る。このあたりの描写はCGを駆使して派手に描く、今どきの映画のようだ。

紫 式部が優れたストーリーテラーであることが今まで読んできて分かった。まあ、そうでなければ70年にも及ぶ長大な小説を書くことはできないと思うが・・・。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


「花散里」

2022-05-09 | G 源氏物語

「花散里 五月雨の晴れ間に、花散る里を訪ねて」

 この帖は短い。読んでいる角田源氏では、わずか4ページ。 橘の花、郭公(ほととぎす)がキーワード。

右大臣方の世。失意の光君、出家のことも頭をよぎる。五月雨が珍しく晴れた雲の絶え間、今は亡き父・桐壺院の妃のひとりであった麗景殿女御の邸を訪れることにする。麗景殿の女御の妹の三の君(花散里)とはかつて逢う瀬を重ねた仲だった。まず女御と桐壺院の思い出話をする。**桐壺院が親しみやすく心の安らぐ人だと話していたのを思い出すと、昔のことがあれこれと偲ばれて、光君はつい涙をこぼす。**(361頁)

人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ(361頁)**と詠む女御は、やはりほかの女とは異なってすばらしい人だと思わずにはいられない。**(362頁) その後、光君は花散里のいる西側の部屋をさりげなく訪ねる。ふたりはなつかしく語らう。

紫式部は麗景殿女御の邸に向かう途中で立ち寄った中川あたりに邸がある女性(やはりかつて関係のあった恋人・中川の女)を対比的に描き、麗景殿女御と花散里の優しさを際立たせている。

花散里は家庭的な人だと思う。きっとそうだろう。いいなあ、心安らぐ女性って・・・。

これで全54帖の1/5を読んだことになる。読み急ぐことなく読み続けたい、『源氏物語』は「読まずに死ねるか本」だと思っているから。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


火の見櫓のある風景を描く

2022-05-08 | A 火の見櫓のある風景を描く


火の見櫓のある風景 松本市今井にて 描画日2022.05.06

カバーのスケッチと同じ風景をもう一度描いた。以前より時間をかけたけれど、線に勢いがないし、硬い印象になった。ただ時間をかければ良いというものでもないということが分かった。やはり線描30分から45分、着色も同時間、計1時間から1時間半くらいで描くのがよさそう、いままで通り・・・。

「道路山水」と呼ばれる構図は好きだし描きやすい。このスケッチのような中景だけの構図は描くのが難しい。


 


「賢木」

2022-05-07 | G 源氏物語

 

「賢木 院死去、藤壺出家」

 桐壺院崩御、政権は右大臣方に移る。藤壺出家。物語が大きく動く。

六条御息所は娘と伊勢に下ることを決心する。嵯峨野の野宮に六条御息所(俗な言い方だと年上の愛人)を訪ねる光君。久しぶりの再会。

暁の別れはいつも露けきをこは世に知らぬ秋の空かな(315頁)

藤壺の出家は源氏との関係を絶つため。源氏とは違い、理性的な判断は大人。

政敵の右大臣の娘・朧月夜と光君の密会、不倫関係は続く。ひょんなことから右大臣にバレるふたりの密会・・・。右大臣は**二藍色の帯が、尚待の君の着物に絡みつき、外側に出てしまっているのに気がつき、何か変だなと思う。**(352頁) 男帯が娘の着物の絡みついているのを見てしまった父親・・・。

右大臣と弘徽殿大后は光君の失脚を画策する。光君大ピンチ。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


「あ・うん」向田邦子

2022-05-07 | A 読書日記

 
『あ・うん』向田邦子(文春文庫2006年第4刷) カバーデザイン:中川一政(もう何年も前、柳沢孝彦設計の真鶴町立中川一政美術館を見学した。)

   唯一の長編小説『あ・うん』向田邦子戦前、太平洋戦争間近。製薬会社のサラリーマン水田千吉と実業家・門倉修造。一対の狛犬に喩えられるようなふたりの奇妙な、そう奇妙としか思えない友情。門倉と水田の妻たみとのプラトニック・ラブ。昭和の暮らし、親密なつきあいが描かれる。

仙吉の父親が東京駅で倒れた。**白金三光町のうちにかつぎこまれたときは、もう死相が出ていた。**(113頁)
仙吉の娘のさと子が外出先から帰ってくる。

以下、さと子の感慨。

**初太郎は、ふたりを、「こまいぬ」だと言っていた。
こまいぬさん あ
こまいぬさん うん
阿呍という字も教えてくれた。
初太郎は、門倉がたみを好きなこと、たみもまた門倉を好きなことを知っていた。しかも仙吉がそれを知っていることも、よく知っていた。息子に口を利かなかったように、そのことはひとこともしゃべらずに死んでいった。
おとなは、大事なことは、ひとこともしゃべらないのだ。**(116,7頁)

物語が進んで終盤。**さと子は急に母親が憎らしくなった。自分の夫と門倉を両天秤にかけている。まん中にいて微妙な揺れを楽しんでいるところは弥次郎兵衛じゃないか。
父親もうとましく思えた。親友が自分の妻に夢中なのを知りながら、波風立てずに二十年もつき合ってきたというのは、卑怯なのかずるいのか。(中略)
門倉にも言いたかった。「お母さんのこと本当に好きなら、力ずくでも奪えばいいじゃないの」(後略)**(216頁)

誰もが、このような状況を受け入れ、口にも出さず、日々暮らしている。このことに、さと子は思う。この思いは私の感想の代弁。私だけでなく、多くの読者がこのような感想を抱くのでは。

 これが向田邦子の描いた昭和。


 


キミの名は? ハンカチノキ

2022-05-06 | D キミの名は?


 信州スカイパークに「ハンカチノキ」という名前の花木があることを何日か前にラジオ番組で知った。初めて聞く名前だった。昨日(5日)、ウォーキングしていてこの花木に気がついた。樹高は6,7メートルくらいか。なるほど、遠目には枝先に白いハンカチをつるしたよう見える(写真上)。これが名前の由来だろう。


以下説明板の文章。**まるで枝先に白いハンカチがあるかのように見える変わった木です。実はその白いハンカチのように見える部分は花ではなく葉の変形した「苞(ほう)」と呼ばれる部分です。実際には白い苞の中央にある黒い丸のかたまりのような部分が花に当たります。** 

ハナミズキの白やピンクの花も実は花ではなくて苞だということは知っていたけれど、ハンカチノキは知らなかった。例年の花期は5月上旬~中旬とのこと。今年は温暖な気候の影響で例年よりも早く開花したと同説明板にある。信州スカイパークでウォーキングを始めなければ、この花(苞)を見ることはなかっただろうな。

カルガモを見たり、珍しい花木を見たり・・・、ウォーキングするのが楽しい。


 


信州まつもと空港

2022-05-05 | B 繰り返しの美学

 今日は5月5日、こどもの日。信州スカイパークのターミナルゾーンで早朝ウォーキング。ちょっとコースアウトして空港ターミナルへ。


長いキャノピー、久しぶりに見た繰り返しの美学。

建築構成要素を直線状に等間隔に並べるとそこに秩序が生まれ、それを美しいと感じる。シンプルなルールによって、ものが秩序づけられた状態・様子を脳が歓迎しているのだ。このことを「繰り返しの美学」と称して時々ブログに取り上げている。


 


キミの名はカルガモ、だよね。

2022-05-05 | D キミの名は?


信州スカイパークにて 撮影日2022.05.05 

 今朝(5日)6時ころから信州スカイパークのターミナルゾーンをウォーキング。清澄な朝、ウォーキングをしている人はまばら。中間地点から引き返す途中、修景池でカモのつがいかな、2羽が水面をゆっくり移動しているところを見た。

カモだよね。で、キミの名は? 帰宅後に『野鳥』真木広造(永岡書店2002年)で調べて分かった。黒色先端が黄色いくちばし、顔の黒色線。キミの名はカルガモ、だよね。ひなを何羽も連れて道路を横断する様子をテレビで見ることがあるよ。


 


「葵」

2022-05-04 | G 源氏物語

「葵 いのちが生まれ、いのちが消える」

 桐壺帝譲位、朱雀帝即位。4月、盛大行われる賀茂祭の御禊の行列に光君も加わった。懐妊中の葵の上も見物に出かけた。見物客の車でごったがえす一条大路。で、「車争い」のトラブル発生。お忍びで出かけていた六条御息所の車は、葵の上の車により後方に押しやられてしまう。で、見物どころか何も見えない状態に。

かげをのみみたらし川のつれなきに身の憂きほどぞいとど知る(270頁) 屈辱を味わった六条御息所は次第に病人のようになってしまう。

葵の上は物の怪にとりつかれ、苦しんでいる。光君はそれが六条御息所の生霊であることを知る。葵の上は男の子を出産後に急逝する。

物の怪の出現は光君の良心の呵責によるものか、それとも六条御息所の怨念によるものか・・・。

光君は喪に服していたが、久ぶりに紫の上のもとに帰り、初めて夫婦の契りを結ぶ。

「源氏物語」は連作短編集。1帖、1帖と読み進める。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋