和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

そうこうしているうちに。

2016-12-24 | 道しるべ
板坂元著「発想の智恵表現の智恵」は
新書サイズで、一日一言のような構成。
ご自身の著作から、一行か二行の言葉が、
ご自身の手で選ばれ、解説しています。

今回、読み返していたら、
草仮名の箇所が印象に残りました。

その「草仮名」が出てくる二か所を引用。

「・・学者も同じことで、他人の意見を平気で
自分のもののように誇示したがる手合いがいる。
いつかある女性に『のである』『わけである』の
構文について説明したら、ものの三十分もしないうちに
別のところで『私は、こう考えている』と、
まるで自説のようにひけらかしていた。
この女性は、草仮名も読めないくせに、
読んだような顔をして論文を書いている・・
ゴマスリも達者で、大きな面をしてのさばっている。
江戸言葉でいうと『下衆』の一語に尽きる。」(p179)


はい。ハウツウ本ばかり読んでいた私なので、
さしあたり、「この女性」の後追いしていたようなもの。
そう思う、この頃(笑)。

さてっと、もう一箇所引用。

「私は江戸文学を専攻していたので、
卒論を書くに当たって、まず草仮名を読むことから始めた。
・・・
平均的日本人なら三週間前後で一応の基礎ができるはずだ。
方法は簡単だ。まず、草仮名の表を手に入れる。
これを手掛かりに、江戸時代の板本を読む。・・・
・・・・芭蕉の短冊写真だとか、読みやすいもので
鑑賞にたえるものを取り上げて集中していくことだ。
俳句なり書画なり、何でもよいから字を読むこと以外の
目的を立てて、字を読む練習をしなければ、
上達は途中で止まってしまう。・・・・
実用を離れては上達はしにくい。
草仮名読みも同じことだろう。」(p134~135)


ところで、p164~165に
徒然草からの引用がありましたので、
ついでに、引用。

「『徒然草』の中に、
お坊さんになろうと決心した人の話が出てくる(188段)。
この人は『お坊さんになったら、ほうぼうに招かれるようになる。
そのとき馬に乗れなかったら不便だ』と、まず乗馬の練習をした。
つぎに『法事に招かれたとき、仕事のあとで酒宴に出なければならない。
そのとき歌くらい歌えなくては』と歌の練習に励んだ。
が、そうこうしているうちに年をとってしまい、
仏教の勉強をする時間がなくなってしまった。」
コメント
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