庄野潤三の兄が庄野英二。
今まで、庄野英二氏の本を読んだことがなかったので、
この際、古本で買ってみようと思いました。
庄野潤三著「文学交友録」(新潮文庫)の最後に登場するのが、
英二氏なのですが、そこで、紹介されている本の題名だけでも、
庄野英二著「ロッテルダムの灯」の中の「母のこと」
庄野英二著「こどものデッキ」の中の「朝風のはなし」
庄野英二著「星の牧場」
と3冊が取り上げられ紹介されているのでした。
私は地方に住んでおります。はじめての著者の本は
どんななのか、あてずっぽうに、想像するほかないのですが、
地方にいると、利点があります。
住んでいない家があったり、空きスペースがある。
本は置けるので、まあ、冊数は余り気にならない。
さて、庄野英二の本を買おうと、
日本の古本屋を検索していると、
3冊をバラバラに買う合計よりも、
「庄野英二全集」11巻をまとめて買う方がお得感がある。
今回注文したのは、
東京神保町の田村書店。
庄野英二全集揃11巻(凾入り、月報揃)。
これが、3000円+送料1367年=4367円
( 一冊だと、397円となります )。
読めればいいので、単行本へのこだわりはありません。
凾入りで、各冊のページもきれいでした。
ということで、また全集を古本で買ってしまったのでした。
まず、まっさきに読んでみたかったのは、
庄野英二の『 母のこと 』でした。
それは、庄野英二全集9巻にありました。
全集で8ページほどの文でした。
はい。実際に読めてよかった。
ちなみに、全集第九巻の巻末に
前川康男氏の「庄野英二覚え書」が載っており。
そのはじまりに、佐藤春夫の手紙が引用されておりました。
はい。全集を買ってよかった(笑)。
その佐藤春夫の手紙を引用しておきます。
『 呈、御無沙汰に打過ぎました。
『 ロッテルダムの灯 』をありがたう。
あれを拝受した頃は、何かと忙殺されて
読む暇がありませんでした。
昨夜ふとしたはづみに手もとに置いてあった。
あれを読みはじめ、今朝また昨夜のつづきを読み、
現在三分の二ほど読んで、大へん感心しました。
それで手紙を書く気になったのです。
僕は手紙ぎらいでめったに手紙を書きませんが
今日ばかりは書かないでゐられないで書くのです。
僕は詩人です。お世辞は云ひません。
僕は大兄をなつかしい人がらの人と
永く敬愛して来ましたが、昨夜から今日にかけて
その認識を新にするとともに大兄の
気取りのない温雅な文才を羨ましいと思ひました。
『 母のこと 』や『 松花江 』などは、
そっくり教科書に採用すべき品位のある名文です。
僕は詩人です。ほんとうをいふ職業です。
お世辞は一言半句もありません 不一 』 (p390)
このあとに、前川康男氏は、
昭和49年6月に出版された講談社文庫『ロッテルダムの灯』の
河盛好蔵氏の『解説』からも引用をつづけておられます。
最後に、そちらも引用して終ります。
「 河盛好蔵氏は、『解説』で、この書簡に続けて、
次のように記しています。
『 ――本書の読者もまたこの手紙を読んで、
詩人の讃辞に心からの同感を覚えたにちがいない。
≪ 気取りのない温雅な文才 ≫という佐藤さんの評は、
庄野氏の作品の魅力を的確に伝えた言葉であるが、
私はその上に、
汲めども尽きぬ豊かなファンテジーと、
目の覚めるような鮮かな色彩感覚とをつけ加えたい。 』(p391)
はい。とりあえずは、古本全集購入の余得のお裾分け。
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