和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

本をバラす、入刀記念日。

2023-11-09 | 思いつき
津野海太郎著「百歳までの読書術」(本の雑誌社)に

「六十代までは硬軟を問わず、本はベッドや電車、
 もしくは歩きながら路上で読むのがふつうだった。」(p40)

とあります。私に思いあたるのは、電車や、たとえば病院の待合室での
読書はごく普通だったのですが、ベッドは腕が疲れるし、
何しろ、すぐに寝てしまう睡眠導入剤みたいにしておりました。

「持ち歩きに不便な重い本はバラして読んだ。」(p40)

本はバラせば断然読みやすくなる。
それはそうでしょうが、今まで本をバラす習慣は、私には皆無で、
最近になって、古本が安いのと、画集などはバラした方が面白い。
その味を段々と知ってきたのでした(笑)。

それでも、単行本をバラすところまではいっていませんでした。
読んでると、新書がバラバラになってしまうことはありました。
でも、自分から本をバラす。

ということで、今回、松田哲夫著「縁もたけなわ」をバラす。
ケーキ入刀じゃなくって、本の内側のどにカッターを入れる。
またこれが、よい本なのに、売れなかったのか初版なのです。
はい。古本でも安いので、本としてまた買えばいいし気が楽。
各章の各段で、南伸坊さんの顔イラスト拝見がバラせば一望。

それはそれとして、バラしていたら秋野不矩さんの箇所がでてくる。
秋野不矩著『画文集 バウルの歌』は持っていて嬉しくなった本でした。
それについて書かれた箇所がある。

はい。本の入刀記念。目にはいった、この箇所を引用しておくことに。

「この『画文集 バウルの歌』は、路上観察学会メンバーが協力して作った。
 プロフィール写真の撮影を赤瀬川原平さん、装丁を南伸坊さんが担当した。

 藤森照信さんは、『週刊朝日』に思いのこもった書評を書いてくれた。
 ちょうどそのころ、藤森さんは建築家としての作品を作り始めていた。

 そして、藤森建築のたたずまいと不矩さんの絵とは、共通点があると思っていた。
 ちょうど、故郷の天竜に美術館を作る話があったので、路上の仲間たちは、
 半ば冗談で『藤森建築で美術館を』と話していた。不矩さんは、藤森さんの
 処女作『神長官守矢資料館』を見ていて、その造形力に深く感心し、
『この人に頼みたい』と宣言した。・・・・・・
 そして、98年に『秋野不矩美術館』は完成披露された。

 ところで『画文集 バウルの歌』の見本ができた時、
 それを担いで京都に向かった。不矩さんに手渡すと
『本になるなんて、夢のよう』と顔をほころばせた。そして、

 その夜、不矩さんは枕元にこの本を置いて寝たが、
 嬉しくてほとんど眠れなかったという。・・・・
 不矩さんにはこういう初々しさもあるんだと知って、なんだか楽しくなった。
 不矩さんは、99年、文化勲章を受章し、01年、亡くなった。
 享年93歳だった。  」(p216)


コメント (2)
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