「日本わらべ歌全集2下」(柳原書店)は「岩手のわらべ歌」でした。
岩手で思い浮ぶのは、花巻東高校・大谷翔平。花巻農学校・宮沢賢治。
とりあえず、パラパラとめくっていたら、四行の短い手まり歌。
その歌はわからなくても、その説明でもってやっと納得します。
池の中から ( 手まり歌 )
池の中から 鮒コとっつかめえで
味噌コつけつけ 焼いて焦がし
棚(たんな)にあげだけゃ 猫にとられて
でがくさんぼん 南無三宝(なむさんぼう)
( 稗貫郡大迫町 )
「 海から遠い内陸部では、重要な動物性タンパク質は川魚にたよった。
この地方で≪ べんけい ≫と呼ぶワラを束ねたものに、
くし焼きした魚をたくさん刺して保存した。
べんけいとは西磐井郡平泉町で討死した源義経の家臣、
武蔵坊弁慶のこと。主義経自刃の時間かせぎのため、
押し寄せた泰衝勢とすさまじい戦いを演じ、
身に数十本の矢を射立てられながらも倒れず、
立ち往生したと伝えられる。
魚のくし焼きを刺したのが彼の立ち往生さながら
であるというわけである。
この歌は丁寧に味をつけて焼いた魚を
ねこにとられた悔しさ、おかしさを歌にしている。
子供の目で大人の失敗をからかっているような
ユーモラスな響きがある。
最後の『 南無三宝 』はもちろん仏教用語のそれではなく
『 しまった 』というほどの感じで使われている。
四音だけの陰旋法だが、明るいリズム感をもっている。 」
(p47~48)
自然の歌という箇所には、雪がありました。
上見れば ( 雪 )
上見れば 虫コ
中(なか)見れば 綿(わた)コ
下見れば 雪コ
(二戸郡安代町田山)
「 ・・・雪の降る状況を、これほど単純化して
幻想的・詩的にとらえた例は、他にないだろう。
のんのんと降り続く雪を見上げたら、
羽虫が舞うように見えた。
地面近くを舞うところは綿のようだし、
降り積んだところは雪そのものだ――と、・・・
虫コ、綿コ、雪コと重ねた音のひびきも、
方言としての接尾語というだけでなく、
この歌のもつ情感を強調し、
同時に子供らしく、かわいらしい効果をあげている。 」
( p136~137 )
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