和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

しまった。南無三宝。

2024-11-03 | 詩歌
「日本わらべ歌全集2下」(柳原書店)は「岩手のわらべ歌」でした。
岩手で思い浮ぶのは、花巻東高校・大谷翔平。花巻農学校・宮沢賢治。

とりあえず、パラパラとめくっていたら、四行の短い手まり歌。
その歌はわからなくても、その説明でもってやっと納得します。


           池の中から    ( 手まり歌 )


       池の中から 鮒コとっつかめえで
       味噌コつけつけ 焼いて焦がし
       棚(たんな)にあげだけゃ 猫にとられて
       でがくさんぼん 南無三宝(なむさんぼう)

                 ( 稗貫郡大迫町 )

「 海から遠い内陸部では、重要な動物性タンパク質は川魚にたよった。
  この地方で≪ べんけい ≫と呼ぶワラを束ねたものに、
  くし焼きした魚をたくさん刺して保存した。

  べんけいとは西磐井郡平泉町で討死した源義経の家臣、
  武蔵坊弁慶のこと。主義経自刃の時間かせぎのため、
  押し寄せた泰衝勢とすさまじい戦いを演じ、
  身に数十本の矢を射立てられながらも倒れず、
  立ち往生したと伝えられる。
  魚のくし焼きを刺したのが彼の立ち往生さながら
  であるというわけである。

  この歌は丁寧に味をつけて焼いた魚を
  ねこにとられた悔しさ、おかしさを歌にしている。
  子供の目で大人の失敗をからかっているような
  ユーモラスな響きがある。

  最後の『 南無三宝 』はもちろん仏教用語のそれではなく
  『 しまった 』というほどの感じで使われている。
  四音だけの陰旋法だが、明るいリズム感をもっている。  」
                         (p47~48)


自然の歌という箇所には、雪がありました。

          上見れば  ( 雪 )

      上見れば      虫コ
      中(なか)見れば  綿(わた)コ
      下見れば      雪コ
                   (二戸郡安代町田山)

「 ・・・雪の降る状況を、これほど単純化して
  幻想的・詩的にとらえた例は、他にないだろう。
  のんのんと降り続く雪を見上げたら、
  羽虫が舞うように見えた。
  地面近くを舞うところは綿のようだし、
  降り積んだところは雪そのものだ――と、・・・

  虫コ、綿コ、雪コと重ねた音のひびきも、
  方言としての接尾語というだけでなく、
  この歌のもつ情感を強調し、
  同時に子供らしく、かわいらしい効果をあげている。 」
                    ( p136~137 )

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