和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

切磋琢磨するに足る。

2021-12-10 | 道しるべ
切磋琢磨(せっさたくま)が童子問にあるというので、
谷沢永一著「日本人の論語 『童子問』を読む」下をひらいてみる。
うん。はじめてひらく(p86)。
そこに

「おのれと議論同じきを悦んで、
 おのれが意見と異なる者を楽しまざるは、学者の通患なり。

 学問は切磋琢磨を尊ぶ。おのれが意見と異なる者に接触し、
 おのれを捨てて心を平らかにし、切劘講磨(せつびこうま)
 するにしくはなし。」

じつは、平川祐弘氏の自伝を読んでいたら、
そこに、切磋琢磨という言葉があったのでした。
それで、つい辞書をひいたのでした。
古くさい四文字熟語を知りたくなったのでした。

これに関連しそうな箇所を引用。

「助手分際(ぶんざい)でこうしたことを平気で書く私は
『大助手』と呼ばれてしまった。・・
一旦学内で『大助手』と呼ばれるともう出世できない、とは
佐伯彰一氏のうがった観察で、氏は英語の非常勤講師として
毎週・・外国語談話室に寄ると、フランス語の若い教師達が
いつも平川の悪口を言っている。大学院担当という肩書も
癇(かん)にさわるらしい。

学問はあるようだがああ悪口を言われては平川は東大に
残れまいと思った、というのである。

外国に長くいた私は、人より遅れ学部卒業後11年で助手になった。
後輩が常勤講師や助教授になっている。学期試験の時、
そうした人の試験の補助監督を毎学期7回ずつさせられた。
 ・・・・・・・・
しかし、大学院助手として私は精励恪勤(せいれいかくきん)した。
60歳の定年までこのままでも構わない、と決めたのは勤めて1年経った
ある夕方のことで、すると気が落ち着いた・・・・」
(p356・月刊Hanada2020年6月号連載㉓)

さてっと、連載を読みすすむと、平川氏は大学教授となっております。
2022年1月号には、その平川教授の学生指導が語られておりました。

「私の学生指導は、
『学会で発表しないか』とか
『外国語で発表しないか』とか、
『旅費は出るから外国のシンポジウムに参加しないか』と、
学生の力に応じて、声をかける。

『機会は前髪で摑め。後ろは禿げているぞ』。
publish of perish(書物を出すか学者を辞めるか)の
原則に忠実な私は、同僚にも学生にもそれで臨んだ。
業績による推輓(すいばん)である。

歴代の主任が学生の出来のいい発表論文を次々と
有力書店に推薦できたのは、主任が学者としても
著述家としても出版社に信用があったからだろう。
人文系の論文はコマーシャル・ベースでも読まれることが大切だ。
・・・教師も学生も切磋琢磨が大切だ。・・・」(p354)

勿論、私は普通の『コマーシャル・ベース』で読んでる一人。
それにしても、ここに出てくる『切磋琢磨』という四文字は、
なんだか別物で磨きがかかって輝いてみえるから不思議です。

どんな意味なのか、最初に引いた辞書
「新潮現代国語辞典」の『切磋琢磨』のところには、
こうあったのでした。

① 石や玉などを切りみがくように知徳や学芸を磨きあげて
  人間を練ること。『切磋琢磨して学問をする[ヘボン]』

② 仲間同士が互いに励ましあい競いあいながら
  共に向上を図ること。
 『書上幾多の益友あり、以て切磋琢磨するに足る[二家族]』


ああ、この最後なんていいですね。
『書上幾多の益友あり・・・』
うん。わたしなら、こうあらためるだろうなあ。

『ブログ上幾多の益友あり、以って切磋琢磨するに足る』





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