和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ピアノの上のお供え。

2024-12-26 | 道しるべ
庄野潤三著「野菜讃歌」(講談社・1998年) の最後には、
日本経済新聞に掲載された「私の履歴書」がありました。

庄野潤三氏の家のことが、気になります。
たとえば、仏壇はあるのだろうか? とかね。
「 大きなかめ 」はあることがわかりました。

『 私の書斎に大きなかめが置いてある。古備前の水がめ・・ 』
                ( p239 「野菜讃歌」 )

『 ・・ピアノの近くに置いてある。水がめなのに、
  不思議にピアノのそばにあるのがよく似合う。
  家の中にあっても、ちっとも気にならない。
  ときどき、掌でさすってみる。  』( p241 同上 )

さて、『私の履歴書』から抜き出しているのですが、
履歴書の最後から引用しておきます。

『 書斎のピアノの上に父と母の写真を置いてある。
  毎朝、朝食の間に妻はお茶をいれて、
  この写真の前へ持って行く。それが私たちの一日の始り。 』
                       ( p251 )

どうやら、庄野家には、仏壇がないらしい。

『 父母の命日、二人の兄の命日にかきまぜを作って、
  ピアノの上にお供えし、二人で手を合せる。お盆やお彼岸にも作る。

  ・・長男と・・次男に知らせて、取りに来させる。
  会社が休みの日で、次男が車に子供を乗せて来ると、
  先ずピアノの前に並んで手を合せてくれる。
  私も妻もうしろで手を合せる。 』 ( p252 )


この『私の履歴書』の最後は、
大坂へお墓参りに行った際に、
『 ・・帝塚山の兄の家へ行って、お仏壇に手を合せる。・・ 』(p253)

という箇所がありました。
うん。やはり、東京の庄野家には仏壇はないようなのです。

ちなみに、お墓については、長女の夏子さんの文にありました。

『 ・・父と母はよく訪ねてきてくれて、
  サンドイッチや昼寝を楽しんでいました。
  ある時、近くのお寺に案内しました。
  深い山の中に静かに建つ、曹洞宗の立派なお寺です。
  明るい墓地は小鳥のさえずりが聞こえ、
  お正月は大人も子供もお参りに来て
  『 おめでとう 』の声があふれます。

  先祖を大切にする父は、とても気に入り、
  ここにお墓を作りました。
  南足柄市にある、玉峯山長泉院です。
  私にお墓のお守りを託したのだと思います。・・  』
        ( p78 「 庄野潤三の本 山の上の家 」 )





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