映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

春夏秋冬そして春  キム・ギドク

2009-08-27 06:37:20 | 映画(自分好みベスト100)
これはたいへんな傑作に出くわしてしまった。山奥の池の中にある寺院を舞台にして、一人の僧侶の人生を描いていく作品。中国の山水画をみるような美しい光景の中で、一年間春夏秋冬じっくりと撮影されている。韓国映画のどぎつい部分も少なく、枯れ切った世界を短い時間に簡潔にまとめて描く。ここしばらく日本でこの作品レベルに達した作品はないと思う。

山奥の中の池に仏教の寺院が浮かんでいる。そこには一人の僧侶とマルコメ味噌のような坊主頭の子供が二人で生活している。子供は自然の中で自由気ままに動物や魚たちと遊んでいる。時おり残虐な行為を動物たちに処して、僧侶から罰を受けたりしているが、二人は絶対的な信頼感で結ばれている。やがて子供が青年に成長したとき、その寺院に心を痛めた一人の女性が来て、一緒に生活するようになった。精神的に病んでいたので、最初はなじめなかったが、若い同士青年僧と女性が心を通じ合うようになるが。。。。。

四部プラスアルファで構成されている。それぞれの季節に見せる池のまわりの表情が美しい。セットである寺院が非常になじんでいる。美術の美しさと撮影の巧妙さが抜群である。中年の僧侶と青年の僧侶の対比が根底に流れる中で、一人の心の病んだ女性を巧みに登場させるストーリーの流れがいい。詳しくは書けないが、第3部の秋のやり取りはいかにも韓国映画らしいやり取りだ。逆に韓国らしい暴力的、激情的なところが一部入るから映画が引き締まるのかもしれない。第4部の中国武侠映画的要素も冬の景色の中で美しく見える。

バックの風景が似ているせいかベトナム映画の「夏至」や「青いパパイアの香り」の女性映画のしっとりとした匂いもさせる。しかし、男性中心で荒らしい姿も前面に出すので自分には強く受け入れられたのかもしれない。個人的にはいままでの韓国映画のベストワンかもしれない。(「殺人の記憶」と迷うけど。。。。)
コメント (2)
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