映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「二郎は鮨の夢を見る」 小野二郎

2014-05-15 22:08:59 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「二郎は鮨の夢を見る」 
すごいドキュメンタリーである。
銀座の名店すきやばし次郎を撮った映画の存在は知っていたが、こんなレベルまで達しているとは思わなかった。
1度ならず2度見てしまった。いやもっと見てみたいと思わせるすばらしい作品だ。

東京・銀座の地下にあるたった10席ほどの鮨店・すきやばし次郎の店主・小野二郎。88歳の今でも職と技に対するこだわりを持つ彼が握る鮨は、「ミシュランガイド東京」で7年連続で最高の三つ星の評価を受け、フランス料理最高シェフのジョエル・ロブションや、ハリウッドセレブなど、世界中の食通たちをうならせてきた。

そんな彼の作り上げていく鮨の味に驚嘆し、職人としての技や生き様に魅了された、アメリカ人監督のデヴィッド・ゲルブ。あのメトロポリタンオペラの総帥、ピーター・ゲルブ氏の息子でもある彼は、来日中に「すきやばし次郎」の鮨と出会い、その芸術性に感動して映画制作を決意。約3ヵ月にわたり東京、静岡と密着取材を敢行した。
(作品情報より)

おまかせ握り3万円也の銀座ならではの店、オバマ大統領が来日で寄ったことで一段と有名になっている。
何せ88歳にして現役ということ自体が凄すぎる。ここにきて予約の取りにくさが異常になっているらしい。

でもこの映画はその小野二郎さんだけを映し出しているわけではない。
実質本店店長の長男、六本木店の店長の二男の目に見えない葛藤を映しだすだけでなく、築地市場や下ごしらえをする職人たちにもカメラを向ける。それがいい。

1.築地のセリ
長男が自転車に乗って築地魚市場に向かう。まぐろ、えびそれぞれに最高の食材を次郎に提供する仲買人から仕入れる。そしてセリの場面が映し出される。かつてこんなに緊迫感のある映像で場内を映しだしたことってあるだろうか?少なくとも自分は見たことがない。何を言っているのかわからないセリ用語を発する築地のお兄さんの粋の良さはさすがである。

2.若い衆の手際の良さ
4人いる若い衆が分担して手際よく、下ごしらえをして焼き物などをつくっている。仕入れてきた活きの良い食材を捌いていく姿に驚く。アナゴにしろ単純にご飯にのっけて出すわけではない。若い衆がきっちりとした包丁さばきでつくったものを最終的に二郎さんが絶妙の手さばきでお客に出す。こういう助手たちの仕事ぶりにも感動した。
単なる個人プレイではなく、チームプレイだということに気づいた。


3.美しい握り
映像で美しい握りを映しだす。しなやかな二郎さんの手からお客の前に出されるその手つきも美しい。
人間国宝と言ってもいい二郎さんの姿を映し出すこの映像はずっと語り継がれるだろう。

4.水谷のおやじ
銀座の「水谷」と言えば、泣く子も黙る有名頑固おやじだ。その彼が以前次郎に修行していたとは知らなかった。水谷のオヤジが映画の中でインタビューを受けている。これがなかなかいい感じだ。さすがミシュラン三ッ星の銀座の老舗である。

5.昭和48年発行の「新東京うまい店」(柴田書店)
亡き父が所有していた40年前のグルメ本だ。團伊久磨や三井家の人をはじめとしてそうそうたるメンバーが共同で書いている。まさに口の肥えた人ばかりだ。そこに次郎のことが書いてある。(以下引用)
「久兵衛」「なか田」「与志乃」の三軒が銀座の、すなわち東京のうまい寿司屋の御三家というのが定評である。すぐそれに続く店が何軒かあるが、この「次郎」もその一つである。元来「与志乃」の数寄屋橋支店だったのが独立したのだから、御三家並みなのに不思議はない。
この店の気持ちのいいのは、清潔で明るく、若いモンの動作に一つのリズムがあり、気合いが漲っていることで、これは主人小野二郎君の人柄なのであろう。

そのルーツは知らなかった。昭和40年に独立と伝えられているから、昭和48年当時ではまだまだ開店してから歴も少ないはずだ。それでも評価が高い。今どき「君」付けで呼ぶ人はいないと思うけど。。。
「味は一流で、値段が二流のところが気に入っているんだ」と言って小野君を苦笑いさせている
さすがにこれは今は違うよね。
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映画「ブルージャスミン」 ウディアレン

2014-05-15 05:14:34 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
ウディアレン監督の新作映画「ブルージャスミン」を映画館でみた。
ウディアレンの新作は必ず映画館に向かう。今回はケイトブランシェットのアカデミー主演女優賞受賞でハクがついた。
前作「ローマでアモーレ」、前々作「ミッドナイトインパリ」ほど面白い映画ではない。ケイトの「いやな女ぶり」を楽しむという感じかな?

欧州に行くことが多かったウディがアメリカにリターン、しかもサンフランシスコで撮影する。ヒッチコックの「めまい」など坂道の多いサンフランシスコは映画と相性がいい。

ジャスミン(ケイト・ブランシェット)がニューヨークからサンフランシスコに向う飛行機内の映像からスタートする。
金融系の実業家ハル(アレック・ボールドウィン)が詐欺罪でつかまり、セレブな生活を送っていたジャスミンは財産没収される。結局サンフランシスコにいる血の繋がっていない妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)を頼っていくところだ。ジンジャーも夫と別れ2人の子供と暮らしている。働いたことのないジャスミンはインテリアデザイナーを目指しパソコン教室に通いながら歯科医の受付のバイトをしていた。
しかし、セレブ生活が抜けきれない。精神安定剤とウォッカを手放せないジャスミンは情緒不安定だった。そんなある時、パソコン教室の仲間からパーティにこないかと誘われる。ジャスミンはパーティで国務省に勤めるドワイト(ピーター・サースガード)と親しくなる。妻と死別したドワイトに惹かれたジャスミンは子供はいないとかいくつかのウソをついてしまう。求婚されつき合いは進展するのであるが。。。

ざっとストーリーを追うとこんなところだが、セレブ時代の回想場面を自然な流れで挿入する。ニューヨーク時代とサンフランシスコの話が交差するそのリズムがいい感じだ。映画が始まってしばらくして「欲望という名の電車」のオマージュだな?ということに気づく。実にいやな女だ。

そもそも予想外の収入があったジンジャー夫妻に投資を勧めたのはジャスミン夫妻である。投資の失敗がもとでジンジャー夫妻は離婚してジンジャーはサンフランシスコで息子2人と暮らしているという構図だ。迷惑をかけた妹のところへ転がり込むという姉もずうずうしいを通り越している。しかも、自分の過去の栄光を引きづって妄想にふけっている。「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンのようにも見える。ましてや国務省のエリートに出会ってもウソつき放題だ。でもこんな人って日本人にもいるかもしれない。

1.サンフランシスコ
ロスアンジェルスと比較すると、映画の舞台になるケースは少ない。しかし、この街の地形は映画との相性がいい。ヒッチコック「めまい」も「鳥」の舞台もサンフランシスコだ。クリントイーストウッドの「ダーティハリー」のキャラハン刑事はサンフランシスコ警察である。スティーブ・マックイーンが全速力でサンフランシスコの坂道を運転する「ブリット」も地形の特性をうまく生かした映像だ。
自分は1回サンフランシスコに行ったことがあるが、何度も行ったような錯覚を受けることがある。今あげた4つの作品を見れば、古い映画だけどこの町のことがよくわかる。あとはオーソンウェルズの「上海から来た女」チャイナタウンに逃げ込むシーンが出てくる「ブルージャスミン」でも一部チャイナタウンが映されるが、ここまでおさえてショーンペンの「ミルク」を見れば完ぺきだろう。

2.サリーホーキンス(ここからネタばれあり)
社会の底辺というわけではないが、一般的アメリカの労働者階級の女性を演じる。アカデミー賞の助演女優賞の候補になったのがうなづける巧さを発揮している。
セレブのジャスミンはイヤな女だが、サリー演じるジンジャーは男に頼って生きているよくいるずるい女だ。離婚した夫に金のことで愛想を尽かしたと思ったら、すぐさまシスコで修理工と仲良くなる。でもパーティでサウンドクリエーターと知り合ったら、すぐパカパカやりまくる。その男が所帯持ちだとわかると、一旦は捨てた修理工に逆戻りだ。こういう女は多いよね。ウディはジャスミンだけでなく一般階級のジンジャーのずるさも見逃していない。

3.ケイトブランシェット
シャネルの服がよく似合う。イヤな女を演じているけど、容姿だけをみているとこの映画のケイトはきれいだ。彼女の映画の感想はかなりアップしてきたが、演技としては「ハンナ」「あるスキャンダルの覚書」がいい感じだと自分は思う。「ハンナ」の悪役ぶりを見て、こういう路線に進むのかと思ったらイヤな女を演じてしまった。どれもこれもうまいけどね。

4.内田樹「映画の構造分析」
この映画をみて、内田樹の本を真っ先に連想した。彼はこう書く「ハリウッド映画がその全史を通じて強烈な女性嫌悪にドライブされているということについては深い確信を有している。これほど激しく女性を嫌い、呪い、その排除と死を願っている性文化を私は他に知らない。」なるほど
ここでジャスミンとジンジャーの2人を使って、イヤな女というのをウディは描いている。2人の女に愛想を尽かしたウディの苦笑いが見えるようだ。

最後のオチには笑えた。すべての転落の始まりは自分がまねいていたのだ。
こういう女っているよね。
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