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すばらしい!
こんなにすばらしい映像美の映画をこれまで見ていなかったことを悔いたくらいだ。
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映画「インドシナ」は92年のカトリーヌドヌーブ主演作品だ。1930年代のベトナムを舞台にフランス人女性とベトナム人の養女をクローズアップする。母子2人が同時に愛したフランス軍人との三角関係を描いた作品だ。現地ロケの映像が実に美しい。こんなに越南エリアを美しく写した映像はおそらくないのではないだろうか?世界遺産の名勝ハロン湾を最も美しく写した映像はトランアンユン監督「夏至」かと思っていたが、この映像を見てあっと驚かされた。
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1930年代仏領インドシナが舞台だ。この地で生まれた主人公のフランス人女性ことカトリーヌ・ドヌーヴはゴム園を経営していた。ドヌーブは航空事故で孤児となった安南皇室の娘カミーユを引き取った。養女となったカミーユことリン・ダン・ファンはドヌーブを母として順調に育った。そんな時ドヌーブはフランス人将校ことヴァンサン・ペレーズと知り合う。絵画オークションで落札の権利を譲ってくれと将校が頼み、ドヌーブは断った。それがきっかけでその後2人には強烈な恋が生まれた。だが2人には恋の成就を阻むものがあった。
そんな時、皇帝が暗殺された。社会主義勢力が国の独立を願い決起したのだ。高校生のリンは町での発砲事件に巻き込まれた。それを救ったのが偶然通りかかった母の恋人だったフランス人将校だ。リンは自分を助けた彼に純愛を覚えた。娘は将校を館でのパーティに招く。事情を知らないカミーユの目前で、元恋人2人は口論し、にぎやかだったパーティーは混乱するのであるが。。。。
成瀬巳喜男監督の不朽の名作「浮雲」の主人公2人はもともと「仏印」で知り合った設定になっている。映画の「仏印」というセリフで初めてその言葉を知った。物心がついてすぐにベトナム戦争が連日テレビの話題を独占していたころに育った自分には意外感があったものだ。
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その仏印ことベトナムを舞台に丹念にロケハンティグをしっかりやっている。これでもかというくらいベトナムの美しい映像が連続して出てくる。コロニアル文化を示すような街の建物や富豪の自宅の建物の建築様式は、中のインテリアを含めて今まで見たことのない素晴らしさだ。籐のソファが基調のアジアンテイストのインテリアが好きな人にとっては格好の教科書のようなものであろう。
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それに加えてハロン湾の美しい光景を見事に映像とマッチングさせている。水墨画を見るがごとくの独特の奇岩が並ぶハロン湾は美しい。その中を帆船が横切る。30年代の匂いをさせる。他にもみずみずしい自然の光景が続く。将校が当局に見つかってしまうシーンを描いた滝(ダラットの滝?)も日本三大名瀑の一つ「袋田の滝」のようで印象に残った。ベトナム観光ダイジェストのようだ。
アジアが舞台なのに妙にカトリーヌドヌーブが妙にスクリーンになじんでいる。ゴージャスなイメージが強いからであろう。この映画撮影当時48歳、恋を演じるには限界の年齢だ。ゴム園の経営者という設定はしっくりする。個人的には「ダンサーインザダーク」が嫌いなので、ここでのドヌーブが一層良く見える。
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映画を見ていて養女のアジア人女性に見おぼえがあった。あれ?!と思って、以前ここでも取り上げた「真夜中のピアニスト」のピアノ教師役のアジア人女性であることに気がついた。清楚な雰囲気を持つ彼女の存在が映像にしっくりいっている。恋に落ちるフランス人将校もいい。アジアと西欧人の組み合わせがいい。色合いの取り合わせがいいような感じを持つ。食べ合わせのいい食事をしているような気分だ。
あと感心したのはエキストラをふんだんに使っていることだ。アジア的リアル感を醸し出す。この映画ができた92年はちょうど19年前、ベトナムが発展基調になりつつあるころだ。物価も安く、賃金も安い中で安価で現地人を起用できたのであろう。ゴム園のクーリーの労働、べトコンの前哨とも言うべきゲリラ兵士たち、奴隷売買される人たち、これらすべてを表現するだけのエキストラが用意できたのも時代背景であろう。今作ろうと思ってもフランス映画資本では資金的に無理だったかもしれない。ベトナム人の表情も今の方がはるかに豊かな表情になっているので違和感を覚えたのかもしれない。ベストな時期につくられた映画だ。
ただちょっと長すぎたかもしれない。編集も中途半端になっている印象もある。
それでもこんなに目を楽しまさせてもらって感激である。
(参考作品)
こんなにすばらしい映像美の映画をこれまで見ていなかったことを悔いたくらいだ。
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映画「インドシナ」は92年のカトリーヌドヌーブ主演作品だ。1930年代のベトナムを舞台にフランス人女性とベトナム人の養女をクローズアップする。母子2人が同時に愛したフランス軍人との三角関係を描いた作品だ。現地ロケの映像が実に美しい。こんなに越南エリアを美しく写した映像はおそらくないのではないだろうか?世界遺産の名勝ハロン湾を最も美しく写した映像はトランアンユン監督「夏至」かと思っていたが、この映像を見てあっと驚かされた。
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1930年代仏領インドシナが舞台だ。この地で生まれた主人公のフランス人女性ことカトリーヌ・ドヌーヴはゴム園を経営していた。ドヌーブは航空事故で孤児となった安南皇室の娘カミーユを引き取った。養女となったカミーユことリン・ダン・ファンはドヌーブを母として順調に育った。そんな時ドヌーブはフランス人将校ことヴァンサン・ペレーズと知り合う。絵画オークションで落札の権利を譲ってくれと将校が頼み、ドヌーブは断った。それがきっかけでその後2人には強烈な恋が生まれた。だが2人には恋の成就を阻むものがあった。
そんな時、皇帝が暗殺された。社会主義勢力が国の独立を願い決起したのだ。高校生のリンは町での発砲事件に巻き込まれた。それを救ったのが偶然通りかかった母の恋人だったフランス人将校だ。リンは自分を助けた彼に純愛を覚えた。娘は将校を館でのパーティに招く。事情を知らないカミーユの目前で、元恋人2人は口論し、にぎやかだったパーティーは混乱するのであるが。。。。
成瀬巳喜男監督の不朽の名作「浮雲」の主人公2人はもともと「仏印」で知り合った設定になっている。映画の「仏印」というセリフで初めてその言葉を知った。物心がついてすぐにベトナム戦争が連日テレビの話題を独占していたころに育った自分には意外感があったものだ。
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その仏印ことベトナムを舞台に丹念にロケハンティグをしっかりやっている。これでもかというくらいベトナムの美しい映像が連続して出てくる。コロニアル文化を示すような街の建物や富豪の自宅の建物の建築様式は、中のインテリアを含めて今まで見たことのない素晴らしさだ。籐のソファが基調のアジアンテイストのインテリアが好きな人にとっては格好の教科書のようなものであろう。
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それに加えてハロン湾の美しい光景を見事に映像とマッチングさせている。水墨画を見るがごとくの独特の奇岩が並ぶハロン湾は美しい。その中を帆船が横切る。30年代の匂いをさせる。他にもみずみずしい自然の光景が続く。将校が当局に見つかってしまうシーンを描いた滝(ダラットの滝?)も日本三大名瀑の一つ「袋田の滝」のようで印象に残った。ベトナム観光ダイジェストのようだ。
アジアが舞台なのに妙にカトリーヌドヌーブが妙にスクリーンになじんでいる。ゴージャスなイメージが強いからであろう。この映画撮影当時48歳、恋を演じるには限界の年齢だ。ゴム園の経営者という設定はしっくりする。個人的には「ダンサーインザダーク」が嫌いなので、ここでのドヌーブが一層良く見える。
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映画を見ていて養女のアジア人女性に見おぼえがあった。あれ?!と思って、以前ここでも取り上げた「真夜中のピアニスト」のピアノ教師役のアジア人女性であることに気がついた。清楚な雰囲気を持つ彼女の存在が映像にしっくりいっている。恋に落ちるフランス人将校もいい。アジアと西欧人の組み合わせがいい。色合いの取り合わせがいいような感じを持つ。食べ合わせのいい食事をしているような気分だ。
あと感心したのはエキストラをふんだんに使っていることだ。アジア的リアル感を醸し出す。この映画ができた92年はちょうど19年前、ベトナムが発展基調になりつつあるころだ。物価も安く、賃金も安い中で安価で現地人を起用できたのであろう。ゴム園のクーリーの労働、べトコンの前哨とも言うべきゲリラ兵士たち、奴隷売買される人たち、これらすべてを表現するだけのエキストラが用意できたのも時代背景であろう。今作ろうと思ってもフランス映画資本では資金的に無理だったかもしれない。ベトナム人の表情も今の方がはるかに豊かな表情になっているので違和感を覚えたのかもしれない。ベストな時期につくられた映画だ。
ただちょっと長すぎたかもしれない。編集も中途半端になっている印象もある。
それでもこんなに目を楽しまさせてもらって感激である。
(参考作品)
![]() | インドシナ |
ベトナムの美しい映像を堪能する | |
![]() | 夏至 |
ベトナム三姉妹の危ない恋 | |
![]() | 真夜中のピアニスト |
リン・ダン・ファンがピアニストを演じる | |
あちこちサーフィンしているうち(←この言い方、もう古いですね(笑)こちらへたどり着きました。
ドヌーブが大好きです。
そしてインドシナは本当にすばらしい映画です。
レンタルショップで借りてはじめて観たのはもう数年も前のことで、
以来計3回借りて観ています。
ベトナムに興味を持ったのもこの映画に出会ったからと言えるほど。
ベトナム戦争を知る世代なので、フランスの植民地だった頃の映像というのも驚きでした。
インドシナの大地と風を感じます。
ハロン湾の名もはじめて知りました。
ベトナムへ旅をしたいと思いつつなかなか実現しません。
が、実現しそうでしない夢を持っているのもいいのかな…などと思ってみたり。
ありがとうございました。これからもちょくちょく楽しませて頂きます。
この映画はベトナム観光案内というべき色彩もあり、本当に楽しめました。
しかもきれいなところばかりでなく、フランス植民地としてのベトナム人とフランス人の葛藤も描かれているし、ドヌーブのベトナム人の娘への微妙な愛情の描き方もいいと思いました。
僕もベトナム行っていません。
ぜひ一度行きたいものです。