映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

2024年キネマ旬報ベスト10を見て(外国映画)

2025-02-09 08:48:36 | 映画 ベスト
キネマ旬報ベスト10が発表された。
外国映画では10作のうち9作は観ていた。好き嫌いもあって感想を書いていない作品もある。
「オッペンハイマー」は順当で、完成度の高い「瞳をとじて」も当然の選出だ。
題名の下線は記事になります。

1 オッペンハイマー 
貫禄の1位である。アカデミー賞最優秀作品賞にも選ばれているし、クリストファーノーラン監督のここでの手腕で1位になること自体に不自然さは無い。問題はこれを半年以上日本で公開させなかった日本映画界にある。原爆開発を賞賛するのではなく水爆をもうやめようと言うオッペンハイマーの気持ちが強い映画だ。それなのにマスコミから揚げ足をとって追求されるのではないかと恐れていたのであろう。むしろ日本の映画会社に腹が立つ。この映画が好きかと言われるとそこまではない。結局第二次世界大戦すぐ後の冷戦に至る赤狩りに関する映画だった。


2 瞳をとじて 
傑作だと思う。ビクトルエリセ監督久々の作品でも脚本,ビジュアルいずれも重厚感があり、昨年見た映画の中で完成度が1番高い。貫禄の「オッペンハイマー」に1位を譲るとして、この場所で座るのは当然と感じる。「映画の中の映画」の手法を用いて、真実と虚実を混在させる。小津安二郎監督得意の切り返しショットを切り返すたびごとに都度俳優の表情を遠近や方向を変えたショットで映し出していく。濱口竜介も指摘していたカメラワークの巧みさも最上級の腕前だ。

先日何気なく雑誌「スクリーン」を立ち読みした。同じように年間ベストテンを発表していた。それぞれの記者がベストテンを選んでいるのを改めて見たら,この「瞳をとじて」を選んでいる選者が1人しかいなかった。驚いた。見ていないのかな?レベルが低いなとと感じる。


3 関心領域 
ナチスのユダヤ人強制収容所を扱った映画は多い。悲惨な境遇を映し出す映画だ。「シンドラーのリスト」が代表作であろう。この映画ではその収容所の隣に隣接する収容所の所長の自宅が舞台だ。当然、収容所内の悲惨の姿は映さない。でも,不穏な音がずっと鳴り響いている。塀の向こうで煙も上がっている。収容所の所長の夫人がこの地にもう少しいたいと言っている。結局のところ、彼女は中で何が行われているのかを知らない。何かを感じる人も多いのかもしれないが,個人的には普通に見える。


4 哀れなるものたち 
これも傑作である。エマ・ストーンの熱演は当然のごとくアカデミー賞主演女優賞を受賞となる最高レベルである。難易度の高い役をよくぞこなした。痴女になり切るエマ・ストーンは当然裸になると同時に娼婦の役など怪しい役もこなしまくる。美術、ヴィジュアルは凝っていて、セット中心の美術,的確な編集,ゴージャスな衣装などヨルゴスランティモス監督の手腕がすごい。映画としてのレベルが高い。ケインズの美人投票的観点で作品を選ぶなら当然ピックアップする作品である。自分が本当に好きかと言われると、昨年はアメリカ映画の娯楽的なものを見たい気分が強かったので、この映画を選んでいない。


5 ファーストカウ 
この映画を観たのが2023年12月なので、このリストに入っているとは意外である。12月末の会う時期に線が引かれているのかもしれない。ここまで評価される映画なのかと感じる。沈滞ムードが好きなネクラな選出者が多いのであろうか?基本的には盗みの映画だ。人の牧場に侵入して牛の乳をとりドーナツにして売る話なんだよなあ。あと、この時代に中国人がこの片田舎の場所にいるのか不自然と感じていた。時代考証がほんとにこれでいいのかなと感じたりツッコミだらけだったのでうーんと思ってしまう。


6 ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ 
自分が好きな映画の1つに選んでいる。同時にキネマ旬報で当然10番以内に入ると思っていた作品であった。周囲の評判も良い。もともと嫌味っぽい教師だった男が生徒をかばって正義感を発揮する。いい奴に変身する。アメリカ版人情物映画と言っていいだろう。ユーモアあふれるアレクサンダーペイン監督のうまさが光る。「サイドウェイ」からのコンビであるポール・ジアマッティとの相性もいい。脇役の使い方も上手だ。ボストンの街を細かく映し出すと同時に雪の中の校舎の描写は美しく快適な時間を過ごせた。


7 シビルウォーアメリカ最後の日 
周囲の評価は高いが、個人的には面白くなかった。感想もアップしていない。題名その他から想像すると、V FXを使ったホワイトハウス周辺での戦闘映画かと想像していたがまったく違った。キルスティン・ダンスト演じるカメラマンをフィーチャーして,国内の内戦で荒廃しきったアメリカ国土を移動する話である。ゲリラ的な銃撃戦こそあれど題名と映画の内容に強いギャップがあった。スパイダーマンのキルスティングダンスとも中年になり演じる題目が変わってきた。


8 夜の外側_イタリアを震撼させた55日間 
上映時間の長さに尻込みして見ていません。マルコベロッキオの前作は良かったしそれなりのレベルなんでしょうが。


9 落下の解剖学 
アカデミー賞でも脚本賞を受賞して、前評判の高いフランス映画だった。ドイツ人に英語のセリフを話させる。スリリングなミステリーでよくできている作品だ。一面の銀世界の中に立つ山荘で亡くなった夫が事故死なのか、他殺なのかと言う事実を追っていく。法廷モノでもある。証人が証言する途中で、裁判長の指名がなくても、被告人、弁護人、検察官がフリートークのように割り込んで発言する。日本と裁判事情が違って意外に思った。映画の途中で自殺、妻による殺人と優位が常に変わっていくので結末が読みづらい。主演女優ザンドラ・ヒュラー「関心領域」にも妻役で出演していた。


10 フライミートトゥザムーン 
この選出は意外だった。前年はいかにもアメリカ資本らしい娯楽性あふれる作品が多かった。自分の好きな映画には「チャレンジャーズ」などいくつもピックアップしたら、残念ながらキネマ旬報ベストテンには入っていない。その中でフライミートゥーザムーンが入ってくるのは意外だった。スカーレット・ヨハンソンは長い間自分が追いかけている好きな女優であるが,題材的に好きになれないのかもしれない。


ベスト10に入ると思っていた「ありふれた教室」はベスト10入ると思ったがもれたのは意外に思えた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2024年キネマ旬報ベスト10を... | トップ | 映画「ファーストキス」松た... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画 ベスト」カテゴリの最新記事