平成24年1月8-9日
1月7日から9日の3連休は明るい月が夕方東の空から昇って来る。月明かりが明るすぎて星の撮影には向かないが、月光に照らされた山々を撮るには好条件である。好天となった3連休、富士山と月はおそらく朝霧高原あたりから狙っている人たちがたくさんいるはず。ならば富士山は避けて別の山・・・パソコンで良さそうな場所を探すと、八ヶ岳西岳からだとちょうど権現岳と赤岳の間から月が昇って来る。7日の1日目は車のタイヤを換えたり、久しぶりの冬山なので装備を点検したりでお昼を過ぎてしまい、8日の出発となった。計算が間違っていなければ、日没と同じ頃にほぼ満月に近い14夜の月が昇って来るはずだ。
8日は寒い朝だったが、風が無くて穏やかな天気となった。中央道を小淵沢で降り、八ヶ岳高原スキー場を過ぎてその先の別荘地から林道に入ろうとしたのだが、そこは鎖が張られていて入れない。高原スキー場に戻って、そこの駐車場に車を止めさせてもらう。直後に私の横に止まった車から降りてきたのは、当院の看護師さんでびっくり。子供を連れてそり遊びに来たところだった。冬山に行く時は(といっても西岳は雪が積もっているだけの危険の少ない山だが)いつも職員に「遭難しないで」と言われるのだが、今回も同じ言葉で励まされて(?)西岳むけて出発する。
八ヶ岳高原スキー場奥にある登山道入り口
不動清水 凍っているが水は流れている。
10時半富士見高原スキー場を出発。スキー場のいちばん奥に登山道入り口があり、看板が立っている。40分ほどで不動清水の水場に到着し、小休憩する。水場は凍りついているが、細い水は流れていた。この先、緩やかな登りがしばらく続き、林道を3度横切る。しだいに傾斜がきつくなり、山頂近くの登りは結構な急斜面となる。雪は10cmほどだったが、凍りついてはおらず、アイゼン装着せずに登る。
山頂に近付くにつれて傾斜がきつくなる。
山頂近くの岩地から見る編笠山と富士山
午後3時、樹林帯が切れて眺望の良い岩地に出た。編笠山と富士山が並んで立っているのが見える。ここで三脚を取り出して30分ほど時間を費やす。高度計は2,200mくらいを示していたので、山頂までまだ30分くらいはかかるだろうと予想して、気合を入れなおして登ると、急斜面を登りついてぽんと山頂に飛び出した。高度計が100m以上も低く表示されていたのだ。3時40分、西岳到着。天気は良好、風も無く穏やかだが、気温は氷点下9℃を示していた。
西岳山頂からの眺望。権現岳、編笠山、富士山が並んで見える。
権現岳と十四夜の月
夕暮れ迫る赤岳(左)と権現岳(右) その間から月が昇る
夕暮れに昇る月と権現岳
Earth Shadowと十四夜の月
既に先客4人組のパーティーがテント設営して休んでいた。私は見晴らしの良い山頂中央にテント設営させてもらう。午後4時過ぎ、日没近くなると、予想よりも早く月が昇り始めた。位置は計算通り、赤岳と権現岳の間から昇って来た。しかし、西岳山頂は裏側の木が若干邪魔になって、山並が隠れてしまうのが残念だった。もう一つ、木の枝に付けられた登山道を示す赤テープがどうしても邪魔になってしまい、これは雪をかぶせて隠した。権現岳の左肩に昇った14夜の月はしだいに夕暮れの空に輝き、さらに夕闇の中に包み込まれて輝きを増していった。反対側の南アルプスから中央アルプスの夕暮れも素晴らしく、寒いのも忘れて夢中でシャッターを切っていた。
夕暮れの南アルプスと中央アルプス
編笠山と南アルプスの夕空
夕暮れに輝く一番星、金星
月光に浮かぶ南アルプス
十四夜の月と冬の大三角形
西岳山頂に設営したテントと権現岳
7時半、すっかり暗くなってからテントに入り、一旦寝る。次に目を覚ましたのは12時半、空高く月が昇っている。テント内の温度を計ると、プロトレックの温度計は-10℃までしか計れないらしく、振り切って点が表示されていた。あてにならないアルコール温度計を見ると・・・-18℃あたりを指していたが、そこまで冷えてはいないだろう。テントの外に出ると、甲府盆地の明かりは雲に覆われて隠れていた。空を月明かりに照らされた筋雲が流れて行く。カノープスを見ようと思っていたのだが、若干起きた時間が遅かった。北側の空には北斗七星が昇っていた。30分ほど撮影してまた寝る。
月光の編笠山と甲府盆地の灯り
北斗七星と権現岳 春の大曲線はおとめ座のスピカがまだ昇っていなかった。
空を流れる筋雲と編笠山・権現岳
月光照らす南アルプスの空
肩の辺りが寒くて朝4時半に目が覚める。外を見ると空は雲に覆われて星は見えなくなっていた。またシュラフに潜り込むが、2枚持っていったシュラフにシュラフカバーを掛けた3枚装備でもまだ寒かった。ウトウトして6時半に起きると、隣りの4人組はもう出発するところだった。編笠山を経て下山するらしい。私も予定では編笠山まで行くはずだったが、完全に雲に覆われてしまっている。こちらの西岳に雲がかかるのも時間の問題だ。編笠山はあきらめて下山することにした。
朝の編笠山 すっかり雲に覆われてしまっていた。
朝食をとり、テント撤収、8時10分、下山開始した。下りはスリップが心配だったがアイスバーンにはなっておらず、アイゼン装着せずに下りることができた。念のため持って行ったピッケルは一度も出番が無かった。10時半、無事に駐車場に到着。
昨シーズンは頚椎症のためにほとんど行けなかった冬山だが、18kgの荷物を背負って1,000mくらいの高度差ならば今年はなんとか大丈夫そうだ。出来る限り、入山したいと思っている。