山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

御坂黒岳からの夕景 平成21年8月17日

2009年08月24日 | 御坂・毛無・天子山系
 平成21年8月17日 天候晴れ

 ようやく青空が見えるようになってきた今日この頃の天候。しかし、日中の気温が高いため、夕方から夜になると雲が広がってなかなか富士山や星空が見えない。この日も日中は青空が広がり、夏の熱い陽が照りつける陽気だったが、夕立や雷は無さそうな予報だった。久々の夜景狙いで、芦川の新道峠から黒岳にかけて歩いてみた。といっても、ここはゆっくり歩いても黒岳山頂まで1時間半もあれば到着してしまう楽々コースだが、河口湖を眼下に見ながら富士山を眺めるこの稜線は御坂山塊有数の絶景地であり、カメラマンのメッカとなっている。

    新道峠に咲くレンゲショウマ。 この季節、御坂山塊にはこの花がたくさん咲く。


    新道峠から見る富士山 お気に入りの場所。

 午後2時を少しまわった頃に新道峠駐車場に到着。林道沿いにはヒヨドリバナがたくさん咲き、アサギマダラやクジャクチョウ、ヒョウモンチョウなどが舞い、蜜を吸っている。御坂山塊の山の良さを改めて感じさせてくれる。夕暮れにはまだ早いので30分ほどあたりをブラブラして午後2時45分に駐車場を出発した。それでもまだ早いので、今回は新道峠の稜線から派生している撮影スポットへの横道を端から全て立ち寄ってみた。やはり私の好みでは黒岳側に15分ほど登った岩の上がいちばん良い。先日ローカル番組のUTYニュースの星に山の写真の事で5分間ほど出演させてもらったのだが、その際に山の写真を撮影しているロケとインタビューを行なったところがここである。カメラマンの中でも有名な撮影スポットである。

    アザミと富士山  ツツジだけでなく花も豊富で、撮影素材はたくさんある。


    コウリンカ  一輪だけ見つけた。なんとか富士山を背景に入れて撮影。

 時間をつぶしながらゆっくりと歩いたのだが、4時半には黒岳山頂に到着した。日の入りにはまだ2時間もある。富士山は見えているが、相変わらずヴェールがかかったような霞んだ富士山だ。さて、星は出てくれるのか?じっと待っているのも苦痛なので、こんなこともあろうかと持っていったツエルトとマットを出してひとまず寝て待つ。午後6時過ぎ、携帯電話のiモードで三つ峠からの富士山の様子を見てみると、雲に巻かれた真っ白な映像だ。こちらは富士山が見えている。と思っていたらその5分後、あっという間に雲が湧き始め、眼下の河口湖は雲におおわれた。間もなく黒岳の展望台も雲に巻かれ、富士山は見えなくなってしまった。じっと待っていると、時折山頂の部分だけ雲間から姿を現す。日は西に沈んでしまったが、東の空に木星が昇っているのが見えたので、ここはじっと辛抱して待つ。

    黒岳山頂からの富士山  霞のかかった富士山が立つ。


    雲の上の富士  夕陽が沈む頃、あっという間に雲が湧き始める。


    夕暮れの富士  30分ほど待つと、雲が切れて河口湖の夜景が見え始め、富士山が姿を現した。

 午後7時過ぎ、眼下の河口湖の明りが見えるようになってきた。少し遅れて霞の向うに富士山の山頂に続く山小屋の明りが見え始めた。流れる雲の間から姿を出したり消えたりを繰り返しているが、時として雲の上にぽっかりと頭を出すこともあった。天の川とさそり座がみえてはいるものの、霞んでいて鮮明ではなく、それよりも河口湖の明りが明るすぎて星空を写しこめるような状況ではない。雲海が町明りをおおって減光してくれるような、よほどの好条件で無ければこの場所で満天の星空を撮影するのは難しそうだ。

    夏霞に浮かぶ夕景富士  富士山がいちばん良く見えた一時。


    星空撮影にカメラ設定を変えて撮影したが、河口湖の明かりが眩しすぎて星はほとんど輝かない。富士山の上ではさそり座が尾を巻いている。


    頭上に輝く夏の大三角形。こちらは写すことができる。

 8時過ぎまで粘ったが、その後は完全に霧に囲まれて視界は得られず、8時半に撤収。下りの稜線はずっと霧の中だったが、ここはルートがはっきりしているので心配なし。45分で無事に駐車場に到着した。
 久しぶりの夜の撮影だったが、残念ながら期待していた星空にはならなかった。しかし、河口湖の夜景と雲の上に頭を出した富士山はなかなかの絶景だった。今後年をとってからも幾度も通うことになるであろう、お気に入りの山域である。
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唐沢鉱泉から天狗岳周遊 平成21年8月9日

2009年08月12日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成21年8月9日 天候曇り

 朝6時、空を見上げると一面の曇り空、今日もすっきりした天気にはならなそうだ。三つ峠の富士山ライブカメラを見てみると、雲の上に富士山が顔を出してはいるものの、今にも雲に巻かれそうな状態だ。さて、どこに行くか?とりあえず準備して7時に車で自宅を出発。御坂山塊雪頭ヶ岳のマツムシソウがそろそろ見頃だと思うので、富士山を入れて写真を・・・と思っていたのだが、再度三つ峠ライブカメラを見るともう富士山は雲隠れだ。ならばまだ行ったことのない北八ヶ岳、天狗岳に行ってみることにしよう。八ヶ岳の地図を広げてルート確認し、唐沢鉱泉から右回りに西天狗、東天狗、中山峠、黒百合ヒュッテを周遊するコースを選ぶ。

    登山口の唐沢鉱泉.山小屋ではなくてホテルですね.

 中央高速を南諏訪インターで下りて、カーナビに従って唐沢鉱泉に到着したのは9時。準備して9時20分に出発。鉱泉の前の川にかかる橋を渡って登山道に入る。ツガ林の中につけられたジグザグの道を登るが、雨が降った後で道はぬかるんでいた。50分ほどで稜線の分岐に到着し、左に曲がって西天狗岳を目指す。この先、傾斜が徐々にきつくなり、1時間ほど歩いて最後の急登を登りつくと、南側の展望が大きく開けて第一展望台に到着する。一瞬だけ中央アルプス方面の山並が見えたが、すぐに雲に巻かれて眺望は得られなくなってしまった。

    尾根の分岐


    第一展望台.雲に巻かれて視界なし.


    初めて出会ったリンネソウ.名前の由来は植物学の祖,リンネの名にちなんでいる.

 尾根沿いの道を進んでゆくと、登山道の脇に見慣れない小さなピンク色の花がちらほらと咲いている。スミレの仲間か?と思ったが葉っぱが違う。初めて出会うリンネ草だった。山と渓谷社の図鑑では群生している写真が載っているが、実際にはまばらにちらほらと咲くようだ。背の低い小さな花なので、這いつくばって写真を撮っている私を見ると、通りかかる登山者はきっと変なおじさんに見えるのだろう。そんなことはお構いなし、見たことがない花に出会えることはうれしいものだ。

    第二展望台.


    雲の切れ間から垣間見た主峰赤岳.

 さらに進んでゆくと、第二展望台に到着。ここで一時雲が切れ、向かう先には西天狗岳の急登、南側には主峰赤岳の姿を見ることができた。一旦下って西天狗の根元の樹林帯を過ぎると、いよいよ西天狗岳への登りが始まる。編笠山や蓼科山などに似た大きな岩の積み重なった急登をペンキマークに導かれて登る。きつい登りだが高度はぐんぐん稼げる。そして、予定時間よりだいぶ遅れて12時半、西天狗岳に到着した。

    コルから見上げる西天狗岳.「そびえ立つ」といった感じだ.


    西天狗岳への登り.八ヶ岳の他の山にもれず,ここも岩礫の急登り.


    西天狗岳山頂.雲に巻かれて眺望なし.


    西・東天狗のコルから見上げる東天狗岳.

 西天狗岳では7~8人のグループが食事休憩中だったので、そのまま通過する。西と東天狗岳のコルは花の咲く気持ちの良い場所なのだが、硫黄岳から赤岳方面を見るともう雲に巻かれてしまっていて、姿を見ることはできなかった。草地にはミヤマアキノキリンソウやヤマハハコ、咲き始めたヒメシャジンなどを見ることができた。このあたりを1時間ほどブラブラして、東天狗には午後2時少し前に到着。こちらの山頂も10名ほどの団体客で賑っていたので、立ち寄っただけで下山開始する。

    ミヤマアキノキリンソウと雲のかかる硫黄岳


    咲き始めたヒメシャジンと東天狗岳.


    東天狗岳山頂.

 中山峠を目指して下りて行くが、こちらの尾根道は大きな岩礫が延々と続く道で歩きにくい。中山峠の手前で見晴らしの良い広場があったので、ここで休憩して遅い食事をとる。天気は曇り空だが、なんとか持ってくれそうだ。中山峠に行くと、峠と言いつつも眺望は悪く、4方向に道が分かれる分岐点になっていた。ここから整備された木道を5分ほど歩くと黒百合ヒュッテに到着する。時間は3時、地図上の時間ではここから唐沢鉱泉まで約1時間40分だ。小休憩を入れて道を進むが、この先の道も延々と続く岩礫の道、しかも雨が降った後で岩が濡れていて滑りやすい。ところどころにある土の道はぬかるんでいて靴が泥だらけになってしまう。スリップに注意しながら慎重に下りて行くが、それでも3~4度横すべりしたが、そのたびに持っていたストックに助けられて転倒せずに済んだ。渋の湯の分岐点まで約1時間10分、そこから唐沢鉱泉まで約1時間かかり、午後5時10分、ようやく唐沢鉱泉に到着した。

    尾根に残っていたハクサンシャクナゲ.後に見えるのは西天狗岳.


    尾根は岩礫の岩ゴツゴツ道が続く.


    中山峠.ここは北八ヶ岳の交差点.


    黒百合ヒュッテとテント場.気持ちの良い広場です.

 容易に行けると思っていた天狗岳なのだが、意外と手ごわかった。特に黒百合ヒュッテ側の岩礫帯の道は濡れているとかなり歩きにくい。可能ならば雪の積もった冬の季節に登ってみたいのだが、簡単には登らせてくれなそうだ。

    唐沢鉱泉の源泉.硫黄の匂いがプーンとする.時間があれば入りたかったのだが,下山が遅すぎた.
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日蝕を求めて足和田山へ 平成21年7月20日&22日

2009年08月04日 | 御坂・毛無・天子山系
 日蝕を求めて足和田山へ 平成21年7月20日&22日

7月20日 天候晴れのち曇り
 白馬岳で雨と風に見舞われた連休2日間だったが、3日目(20日)の甲府は朝から青空が広がっていた。2日後の日蝕は既に休みをとってあるのだが、まだどこで見るかは決まっていない。富士山の上で太陽が欠けてゆく写真を撮りたいので、富士山の北側ということになる。いくつか候補地は挙げているのだが、まだ決定しておらず、候補地のひとつ、足和田山に下見に行くことにした。

    文化洞トンネル駐車場から見上げる太陽.ほとんど頭上に近い位置.


    10分で分岐に到着.足和田山方面へ.

 紅葉台まで車で乗り付けてしまうと、遊歩道のように広いなだらかな尾根道を1時間半ほどゆったりと歩けば山頂の五湖台に到着してしまう足和田山だが、西湖側から登ると急斜面の登山道となる。今回は文化洞トンネル(西湖と河口湖の間のトンネル)から歩いてみた。文化洞トンネル河口湖側の駐車スペースに車を止め、歩き始める。時間は午前10時半、もう太陽はかなり高い位置にあり、上に仰がないと17mmレンズの画角内に入ってこない。果たして、富士山を入れてこの太陽を画角内に納めることができるのか?その位置関係も本日確認したい。10分ほどで毛無山・十二ヶ岳方面と足和田山方面の分岐に到着し、左に曲がって足和田山を目指す。こぶを1つ越えたコルのところで右から来る西湖側の道と合流する。その先は徐々に傾斜を増し、岩の混じった場所も出現し、ロープが付けられたところもある。そして12時20分、足和田山山頂(五湖台)に到着した。

    途中の登山道.岩の混じる急斜面.


    足和田山山頂(五湖台)に到着.空は雲でおおわれてしまっている.

 朝は見えていた富士山はこの時間にはすっかり雲隠れし、太陽も隠れてしまった。3年前の極寒の冬に訪れた時は間近に富士山を見た記憶があるが、その時に比べると植林したヒノキがずいぶんと背が高くなった気がする。展望台に登って昼食をとりながら画角を見るが、展望台の上からだと屋根が邪魔して太陽まで入れることは難しそうだ。太陽の位置は若干西側にずれてしまうが、三湖台のほうが無難そうだ。

    足和田山から見る富士山方面.下部の木がだいぶ伸びた気がする.


    展望台からだと上の屋根が邪魔になって太陽が隠れてしまう.

 下山は別ルート、紅葉台側に15分ほど歩いたところで西湖湖畔に下りる道がある。看板を確認してそちらの道を下山するが、岩の混じるところは無いものの、こちらも急斜面で、ロープのつけられた場所もあった。中腹にはヤマブドウのつるが絡み合う、薄暗い原始林のような場所があって、整備された紅葉台側の道とはちょっと違う雰囲気の足和田山を楽しむことができた。下部の左手に草付のような緑の広場が見えたので、登山道を逸れて立ち寄ってみると、西湖を見下ろせる、砂防提の上部だった。バンガローの横を通って、西湖湖畔に到着、そこには案内板が立っていた。西湖側から登ると足和田山も存分に登山の気分が味わえる。

    整備の行き届いた三湖台・紅葉台側のルート


    西湖への下降点を示す看板


    こちらも急斜面.ロープが張られた場所もある.


    原始林を思わせるヤマブドウの蔓がからむ林


    西湖湖畔到着.案内の看板あり.

7月22日 天候曇り時々小雨
 天気予報がはずれてくれることを祈っていたが、こんな時ははずれてくれないもので、朝から曇り空だ。だが、昼ごろには天候が一時回復するかもしれない予報なので、期待を持って、一瞬でも良いから欠けた太陽を見るため、足和田山紅葉台に向かう。精進湖線を走っていると、中腹は完全に霧の中だったが、精進湖に到着すると視界が開けてきた。時折青空が覗く時もあったが、富士山は完全に雲の中、太陽も全く見えない。9時に紅葉台に到着し、三脚2台とカメラ2台を担いで三湖台に移動、といっても徒歩で20分とかからない。三湖台も予想通り、完全に霧の中だった。時折眼下の西湖と毛無山から十二ヶ岳に続く竜の背の尾根が見えるくらいだ。携帯で天気予報を見ると、朝同様、昼には晴れのマークが出ている。期待はきわめて薄いが、これは寝て待つしかない。

    紅葉台の駐車場.ガスの中.


    三湖台.ここもガスできわめて視界が悪い.セットしたカメラが空しく空を見上げる.


    こんな時は寝て待つしかない

 11時ごろから空が暗くなってきたが、これは日蝕で暗いのか、それとも雲が厚くなって暗いのか判別できない程度の暗さだった。そのうち、小学生の声が聞え始め、50~60人ほどの団体さんが三湖台にやって来た。日蝕の観察に来たのだろうが、残念ながら完全に厚い霧の中で、全く太陽は姿を現してくれなかった。小学生たちは小休憩して早々に戻っていったが、置き去りにしていったテーブルの上のゴミを私が回収してくるはめになってしまった。

    小学生たちが登って来た.太陽は見えないが空は薄暗くなった.


    御坂峠の中腹で富士山が見え始めた.

 日蝕は不発に終わったが、携帯電話のiモードで沖縄方面の様子を見てみると、石垣島では太陽が見えているが肝心のトカラ列島ではダメだったようだ。山梨県は全域ダメだっただろうと思っていたのだが、のちに南アルプス林道工事の関係者に聞いた話だと、両俣小屋手前のところからは雲間から三日月形に欠けた太陽が見えていたという。ひょっとしたら、富士山山頂あたりでも見えたのかもしれない。御坂峠の道を車で登って行くと、中腹から富士山が見え始めた。もっと早い時間に姿を現してくれれば、と残念な1日に終わってしまった。
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あの蝶はいるのか?大仙丈沢調査  平成21年7月25日

2009年08月03日 | 南アルプス
 平成21年7月25日 天候曇り時々雨

 鹿の食害でお花畑が壊滅的な状況にある仙丈ヶ岳。そしてかつては南アルプスでは大仙丈沢特産種だったタカネキマダラセセリ(北アルプスにもいる)は乱獲によって数が激減し、絶滅の危機に瀕している。あるいは、もう絶滅しているかも・・・。以前から調査に行こうと話があがっていたのだが、なかなか機会に恵まれなかったのだが、ようやく今回、花と虫の師匠、虫林花山(ハンドルネーム)師匠とともに大仙丈沢に入ることができた。
 芦安駐車場4時45分待ち合わせしたが、途中で携帯電話を自宅に置き忘れてきたことに気付く。取りに行く時間はないのでそのまま駐車場に行くと、虫林師匠は既に到着して待っていた。5時10分の朝一番のバスがあるのだが、今回はバスではなく、両俣小屋に行く林道工事関係者を偶然知っていたので、大仙丈沢入り口まで乗せていっていただくことにした。おかげで6時過ぎにはもう大仙丈沢入り口に到着することができた。

    堰堤の脇を通り抜けて大仙丈沢に入る

 さて、人の入ることが少ないこの沢はいったいどういう状態になっているのだろうか。ワクワクしながら堰堤の横を通り抜けて沢に入る。10分ほど歩いて対岸に徒渉するのだが、連日の雨で水かさが増しており、沢の中を渡るのはかなり難しそうだ。ちょうど良い具合に大きな木が橋のように川をまたいで倒れていたので、その上を歩いて対岸に渡った。落ちたらまず骨折は免れないだろうという高さ、かつ、どこまで流されるかわからない危険な丸太渡りだ。対岸は緩い傾斜の草付と石のゴロゴロした河原が上部に向かって延びている。ところどころ道らしきものもあり、歩くにはほとんど支障がない。草の中に濃いピンク色が鮮やかなハクサンフウロがちらほら咲いている。途中で小雨が降ってきたので林の中に逃げ込み、雨宿りするが、その林の中には明らかな道がついていた。しかし、その道も途中のガレた沢のところで崩れ、その先はやがて消失してしまっていた。あとは適当に歩きやすい場所を歩く。

    対岸に渡る.大仙丈沢下部の風景.荒れた沢のように見える.


    テント設営に敵地な草付の広場がある.前を歩くのは虫林師匠.


    Snow bridge

 2時間ほど歩いたところに二重橋のスノーブリッジが形成されていた。立ってくぐれるほどの大きなブリッジだが、下は川が勢い良く流れていて、くぐるのは止めた。そのスノーブリッジを越えたあたりから、目を見張るようなお花畑が広がっていた。まずはタカネコウリンカ群落。甲斐駒ケ岳に登る途中で数株咲いているのを見た他はあまりお目にかかったことはなかったのだが、ここはいったい何なのか。雑草が生える如く、足元は咲き始めたタカネコウリンカの大群落が広がる。踏んで進まなければ登って行けないのが申し訳ない。さらに菜の花畑にでもいるかのような錯覚に陥るヤマガラシ大群落。一面が黄色いお花畑だ。沢筋が細くなり、傾斜がきつくなってきたところで右手の草付に取り付いて登って行くと、今度は山の斜面一面に広がるマルバタケブキ大群落だ。こんな凄い群落は見たことがない。花はまだ咲き始めたばかりだったが、これが一面に咲いたときはいったいどんな凄い景色になるのだろう。鹿の食害でバイケイソウとトリカブトしか残っていないのではと、全く期待していなかったこの大仙丈沢に、これほどの花・花・花の群落があるとは、感激・感動した。

    タカネコウリンカ群落.雑草の如くたくさん咲く.踏むのが申し訳ない.


    タカネコウリンカの花


    マルバタケブキ大群落.カメラに収まったのは群落の半分ほど.こんな大群落見たことがない.


    ヤマガラシの群落.菜の花畑に迷い込んだようだ.


    マルバタケブキ群落2.花が咲き始めている場所もあった.


    タカネコウリンカ群落2.この花も咲き始めている場所があった.圧倒される花の量だ.

 まだ森林限界は超えていないので、おそらくは標高2500mあたりの場所ではないかと推定される。ここで時間は午後11時。食事をとってそろそろ下山にとりかかるのだが、次第に雨足が強くなりはじめ、カッパを着る。下山して行くと、途中で土砂降りになってしまい、沢の水の勢いがどんどん強くなって行くのが見える。これはまずい。丸太橋はおそらく雨に濡れてツルツル、渡り返すのは危険だろう。かといって下部で沢は渡れない、ならば・・・対岸に道があるかどうかわからないのだが、スノーブリッジを越えた少し下で、まだ水量の少ないあたりで対岸に渡る策をとる。膝まで水は来ないが、靴はずぶ濡れで徒渉に成功した。対岸は幸運にも林の中に道があったのだが、ところどころで崩落しており、そういう場所は上を巻いて通過した。そのうち道は全く無くなってしまい、谷の横の急斜面をスリップに注意して木や岩につかまりながら慎重に通過する。そして右手から流れ落ちて来る支脈の沢を数本乗り越して、ようやく丸太橋のかかる場所までたどり着いた。
 こんな状況の中でも虫林師匠は虫や草花の観察をおこたらない。カミキリムシやカメムシ、さらにタカネキマダラセセリの食草がこちら側の斜面のほうが圧倒的に多いことをチェックしていた。さすがは虫屋さんだ。私は斜面で2度ほどスリップして右肘にあざを造っていたが、虫林師匠は私よりも遥かに多くスリップしていた・・・しかし、無傷(だと思う)。

    ベニヒカゲ.これも高山蝶のひとつ.この日に出会った蝶はこの一頭だけだった.


    虫林花林師匠とスノー・ブリッジの前で記念撮影.この後の下山が大変でした.

 天候不良だったために残念ながらお目当ての蝶を見ることはできなかったのだが、食草が残っていること、そして花がたくさん咲いていること、その花の中にはミヤマハタザオという私があこがれる蝶の食草が混じっていることを確認してきた。来年はテント泊で、天気の良い日にじっくりと蝶が飛んでくるのを待ってみたい。

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